ミステリ読書録

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山口雅也/「新・垂里冴子のお見合いと推理」/講談社刊

山口雅也さんの「新・垂里冴子のお見合いと推理」。

三十路を過ぎた垂里家の長女・冴子は毎日小説家を目指して執筆活動に勤しんでいる。家族は、
冴子がお見合いする度に事件に巻き込まれ、縁談が破談になることを憂いて、なんとか彼女
のお見合いを成功させようと家族会議を開いていた。家族会議の場で、家族は前回のお見合いの
騒動を回想し始めた。様々な人間とお見合いを繰り返してきた冴子だったが、その時の相手は
なんと・・・!!その騒動と顛末やいかに。待望のシリーズ第三弾!


むふふ。久しぶりにこのシリーズの新作が読めると知り、本当に楽しみにしていました。大好きな
垂里冴子シリーズです。何年ぶりかしら。いやぁ、期待を裏切らない面白さで一気読みでした。
楽しかった~!お見合いが破談になろうがどこ吹く風の、のほほんとした冴子さんはもちろん、
明るいトラブルメーカーの妹・空美ちゃんや冴子姉さん命の弟・京一君、ただただ冴子さんの
結婚問題に頭を悩ます両親・一路さんと好江夫妻、みんな相変わらず。冴子さんそっちのけで、
冴子さんの見合い会議で真剣に議論し合う家族のシーンが楽しい、楽しい。特に勝手な妄想炸裂
で突っ走る空美ちゃんが大好きです(笑)。今回、京一君の出番が少なかったのがちょっと
寂しかったです。冴子さん命の京一君は結構好きなキャラなので。

本書には二作の中編が収録されています。冴子さんのお見合い相手がついに人間以外に!?
というトンデモない展開の第一部『見合い相手は水も滴る○×△?』『日本殺人事件』
東京茶夢との夢のコラボレーションお見合い企画を描いた第二部『神は寝ている猿』
どちらもミステリとしてもなかなか読ませる展開で、のほほんとした作風ながら、きっちり本格
ミステリになっているところはさすが山口さん。といっても、それほど仰天の謎解きがあるという
訳でもなく、真相は割とオーソドックスですし、ダイイングメッセージの解読も少々強引に感じる
ところはありましたが、キャラや会話の面白さだけでも十分楽しめました。
第一部の犯人に関しては、私も○○○○大好き人間として、全く許しがたく、殺意さえ覚えました。
しかし、お見合い相手が○○○○とは・・・(手違いではありますが^^;)。冴子さんのお見合い
もついにここまで来たか・・・と思いましたけどね^^;
第二部の読み所はやっぱり他シリーズキャラの東京茶夢との共演でしょう。これもまさかまさかの
お見合い相手でしたねぇ。山口さんのサービス精神ににやりです。といっても、東京茶夢のキャラ
自体はそんなに覚えてなかったのですが・・・(おい)。最初茶夢は日本に来て自信喪失に陥り、
鬱病気味になっているという設定なので、最初は少し元気がありません。でも、冴子さんたちと
事件に関わって行くうちに、だんだん探偵活動への意欲を取り戻して行くので、彼女との出会いは
彼にとってもいい刺激になったのではないかな。結構お似合いだと思ったんだけど、ラストはやっぱり
お約束通りの展開でした・・・(苦笑)。
タイトルの『神は寝ている猿』の意味は「ああ、なるほど~!」って思いました。こういう言葉
遊び的な謎は大好きです。

でも、冴子さんには申し訳ないけど、彼女のお見合いが成功しないうちはこのシリーズも続いて
行くのだろうから、まだまだ垂里家女子に対するお見合いの呪いが続くことを願います。どうも、
なんとなくこのまま結婚しないで作家の道へ進みそうな気がひしひしとしていますけれど・・・(苦笑)。
冴子さんの小説は読んでみたいけど、登場人物同士の衒学論なんか延々と読まされるのはちょっと
苦痛かも・・・彼女がデビュー出来る日も来るんでしょうかねぇ。
まだまだ読みたいこのシリーズ。そのうちキッド・ピストルズとのお見合い話なんかも出て来たりして!?
(ないか^^;)