ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高田崇史/「カンナ 吉野の暗闘」/講談社ノベルス刊

高田崇史さんの「カンナ 吉野の暗闘」。

伊賀の出賀茂神社の社殿を持ち出し失踪した諒司が、奈良の吉野にいるという情報を得た神社の
跡取り息子、鴨志田甲斐は、前回の旅でも同行した貴湖や竜之介と供に諒司を追って吉野へ向かう
ことに。しかし、吉野山で道に迷った上、貴湖が思わぬ事故に遭ってしまう。そこを通りがかった
民宿の一人息子・光昭に助けられるが、彼は黄金伝説を追いかけ、ある殺人事件の犯人に疑われて
いた。修験道の開祖・役小角の謎に迫るシリーズ第三弾。


カンナシリーズ第三弾。巷ではすでに第四弾が発売されているようですが、うちの図書館では
まだ入荷してくれない様子。少々遅れを取っております。まぁ、気長に待てばいいかって感じ。
というのも、シリーズが進むごとになんとなく内容がどんどん薄くなっている気がひしひしと
しているから。読みやすさという点では一作目から変わらないのですが、一作目は歴史の解釈
部分でもっと感心出来ていたと思うけれど、本書ではその部分がかなり弱い。もともとミステリー
部分には期待していませんが(おい)、歴史の謎の部分でもキレがいまいちだと読みどころが
なくなってしまうような・・・。今回またしても諒司は姿を見せないし、社伝がどうなったかも
謎のまま。一作目から引っ張っている聡美と甲斐の縁談話も全く進展を見せず、今回も二人は
出会えていない。内容的に見て、ここまで引っ張る話かなぁと思わずにはいられません。
だんだん、高田さんが何を狙ってこのシリーズを書き始めたのか見えなくなってきたような・・・^^;
役小角の謎に関しても、そんなに感心出来るものでもなかったしなぁ。吉野山に桜が植えられる
ことになった理由はなるほど、と思いましたけど。

この間奈良に行った時、吉野に行けなかったのはすごく残念だったんですよね。二泊三日の
旅行に組み込むのは到底無理だったのですけれど。いつか、桜満開の時に吉野に行ってみたいなぁ。
吉野に行ったことがあればもっと楽しめたかも。

ただ、今回忍者犬のほうろくが大活躍だったので、ほうろくファンとしてはそれだけでも満足
だったり。こんな賢いわんこが欲しいなぁ。

面白いな、と思ったのは、少し前に読んだ万城目学さんの『鹿男あをによし』に出て来た

『青丹よし 奈良の都は咲く花の 匂うがごとく 今盛りなり』 

の句の解釈。『鹿男~』では、青色と丹色が色鮮やかで都の眺めは素晴らしいって意味
だと書いてあったのですが、本書では、吉野の山では砂鉄(青)や水銀(丹)が取れたことから、
奈良には水銀も砂鉄もあって、本当に良い都だなぁというような意味だと書かれています。
万城目解釈が一般的で、高田解釈はそこに隠された裏の解釈ってことなんでしょうね。
解釈次第で随分変わるものだなぁと思いました。光昭に解説されて、へ~って感じでした。
ちゃんと読みとると言葉に隠された真の意味が見えて来る。歴史もなかなか奥が深いですね。
貴湖ちゃんいわく、『歴史は覚えるのではなく考えるもの』ですからね・・・(今回もまた出てきた!)。
甲斐同様、学術書を丸のみにし、考えることを全くしようとしない人間としては、今回も耳が
痛くなったのでした^^;