ミステリ読書録

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J.K.ローリング/「ハリー・ポッターと謎のプリンス 上・下」/静山社刊

J.K.ローリング「ハリー・ポッターと謎のプリンス 上・下」。

ヴォルデモートの復活により、7月だというのに国中に冷たい霧が立ち込めていた。魔法省では、
コーネリウス・ファッジの後を受けてルーファス・スクリムジョールが魔法大臣に就任した。
そんな中、ダーズリー家にいるハリーを訪ねてダンブルドアがやってきた。ダンブルドア
ハリーを連れ出し、「姿現し」の魔法を使ってある村に連れて来た。ダンブルドアの目的は、
旧友、ホラス・スラグホーンにホグワーツの教師に就いてくれるよう説得することだった。
ハリーの助けで説得に成功したダンブルドアは上機嫌だった。そして、新学期が始まった。ハリーは
クイディッチのチームでキャプテンに就任した。そんな中、ハリーはマルフォイが不穏な行動
をしていることに気付く。不審を抱いたハリーはマルフォイの行動を見張り始めるのだが――
世界的ベストセラー、シリーズ第6作。


映画を観に行く前になんとしてでも読んでおこうと思い、夏休みを機に一気に読みました。友人
から借りたのは多分もう三年くらい前だと思うんですけど・・・ご、ごめんよ、Mちゃん・・・。
しかし、読み始めたらやっぱり面白くて、ぐいぐい引き込まれました。これだけ面白いんだから、
世界的にベストセラーになるのも頷けます。ハリーが一作ごとにだんだん性格が悪くなって行く
のが気になっていたのですが、今回も彼の言動には眉を顰めたくなる部分がちょこちょこありま
した。でも、それは言いかえればより大人になって、感情の機微が出て来たということであり、
人物像に深みが出て来たとも言えるのかもしれません。あとがきで翻訳者の松岡さんも言及して
らっしゃいますが、一巻の頃のハリーと比べると、驚くほど成長していることが伺えます。過酷
な運命を余議なくされ、16歳にしてはハードな経験を積まされたことで、同年代の少年少女よりも
ちょっぴり大人びているのかも。ただ、そうはいっても恋愛面では16歳の少年らしい姿もちらほら。
前作ではチョウ・チャンとの恋がうやむやな感じで終わってしまいかなり不満だったのですが、
本書ではまた新たな恋に落ちることになります。いやいや、まさか、あの人物に恋するとはねぇ
・・・!!!思わぬ伏兵にかなり驚きました。確かに思い返すと全く唐突でもなかったのですが、
ハリーの方は全く意識してなかったですしねぇ・・・。しかし、以前からハーマイオニーが恋愛対象
にならないというのが不思議でしょうがないのですけども。あんなに一緒にいるのにねぇ。でも、
あくまでも彼女が『友人』であるからこそ、このシリーズの核の一つである『ゆるぎない友情』が
描きやすいのかもしれません。とはいえ、本書ではハリー、ロン、ハーマイオニーの三人の関係
も微妙に崩れてしまうことになるのですが。ロンとハーマイオニーはまたしてもあることが
きっかけで仲たがいしてしまい、ハリーは二人の板挟みでしばらくの間辛い立場に立たされます。
男女三人の関係というのは、やっぱりどうしても恋愛が入ると難しくなるものですねぇ。やっぱり、
三人にはずっと仲良くしてて欲しいから、三人が気まずい状態でいるのを読むのは読者としては
ちょっと辛かったです。

でも、何よりも辛かったのはクライマックスの数十ページ。もう、ページをめくるのが辛いの
なんのって。だんだん暗い方に物語が進んで行くというのは聞いていたけれど、こんな結末が
待っているなんて。前作のあの人のことでも相当ショックを受け、しばらく立ち直れなかったのに、
今回もまた・・・。ずっと本当は、違うんじゃないの?まだ望みはあるんじゃないの?って思いながら
読んでたんですけど・・・あうう(涙)。まだ最終巻があるから完全にその望みは捨てたわけじゃ
ないけど、多分ダメなんだろうな・・・。本書でよりハリーへの愛情を感じたし、親しみを感じる
存在になっていただけに・・・ショックです。最終巻に向けて、最高の盛り上がりになっている
ことは間違いないところなのでしょうが。それにしても、運命はハリーにあまりにも冷たすぎる。
彼ばかりがなぜこうも過酷な運命を迎えなければならないのか。最終巻では、救いがあることを
ただただ願うだけです。読み終えて一番思ったのは「スネイプ、許せん~~~~!!!」ですね。
マルフォイにもムカついたけど、彼はちょっと同情させられるところもありましたから。

終盤読むまで、タイトルになっている「謎のプリンス」の陰が薄いなぁと思っていたのですが・・・
こう来たか!と思いました。緩急つけた物語自体もそうですが、きちんとオチがあるところが巧い
なぁと感心させられます。ヴォルデモートとの戦いを軸にしながら、友情、恋愛、クイディッチ
の試合での栄光や挫折など、いろんな要素が複雑に絡み合い、ハリーを成長させて行く。やっぱり、
読み物としては抜群に面白い。世界中に愛される作品であるのも頷けますね。

最終巻では、ヴォルとの直接対決になるのかな。分霊箱を探して旅立つハリーにどんな運命が
待ち受けているのか、読みどころがたくさんありそうで、楽しみです。手元にはあるので、今度は
なるべく間を空けずに読みたいです(でも、あんまり早く読んじゃうと、映画観る時に忘れちゃう
かなぁ・・・)。
ギリギリ、映画を観るまでに間に合って良かったぁ。映画も近く観る予定。