ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

辻村深月/「ふちなしのかがみ」/角川書店刊

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辻村深月さんの「ふちなしのかがみ」。

夏休みの自由研究で、学校に伝わる「若草南小学校の花子さん」を取り上げたさゆり。みんなから
陰で「お化け」と呼ばれていることは知っている。みんなの悪口には慣れたし、花子さんなんて
怖くない。本当に怖いのは――。さゆりが一人で階段を掃除していると、見慣れない女の子が
現れ、さゆりに話しかけて来た。切り揃えられたおかっぱ頭、白いブラウスに赤いスカート。
この子は一体誰?そして、7月、夏休み直前の日曜日、さゆりの死体が渓谷で見つかった。
家には『学校に行ってきます』という書置きが残されていた。さゆりはなぜ死んだのか――?
(「踊り場の花子」)『野生時代』に掲載された5つの短編を収録。著者初のホラー短編集。


辻村さんの新刊は初のホラー短編集。学校の怪談や、こっくりさん、合わせ鏡のおまじない
など、小学生の頃に流行ったり噂になった題材が使われていて、当時のことを思い出しながら
読みました。収録作中、抜群に良かったのは表題作。まずまず面白く読めたのは『踊り場の
花子』『八月の天変地異』。それ以外の二つはオチにピンと来ず、何が書きたいのかよく
わからなかった。ただ、表題作も辻村さんらしいミステリ的なオチがあったから良かったと
思えたけれど、ホラーとしてどうだったかと言われると首をかしげてしまう。どれも、ホラー
としての怖さはさほど感じられなかったので・・・(私の感性がマヒしてるだけ!?^^;)。
学校に伝わる七不思議や都市伝説というテーマは大好きなのですが、使い古された題材である分、
よっぽどひねりが効いてないとどこかで読んだような作品という印象になってしまうと思う。
残念ながら本書に収録された作品もその印象が覆されるものではなかったです。私がホラー
というジャンル自体がそんなに好みでないせいかもしれませんが、いつもの辻村作品ほど熱意
を持って読めなかったです。個人的な意見としては、辻村さんにホラーはあんまり合わないんじゃ
ないかと思いました(デビュー作の『冷たい校舎~』なんかはホラー要素あったけど^^;)。
文章は相変わらず巧くてリーダビリティは抜群なので、これの前に読んでたモリミーよりは
遥かに読みやすかったんだけど・・・。うーむ。



以下、各作品の感想。

『踊り場の花子』
チサ子が相川をじわりじわりと追い詰めて行くところはなかなか読みごたえがありました。
冒頭のさゆりと少女のシーンがどう繋がって行くのかと思ったら・・・なるほど。ただ、
オチがほぼ予測出来てしまったので、もうひとひねり欲しかったですね。

『ブランコをこぐ足』
これは全くピンと来なかったです。読み終えて、だから?って思ってしまった。ハイジの
歌の引用もあまり効果的とは思えなかったし。オチの着地点がはっきりしないのも好み
ではなかったです。

『おとうさん、したいがあるよ』
これは一番ダメでした。狙って書いてるのはわかるんだけど、読んでる間登場人物たちの
ズレた感覚がどうにも気持ち悪くて居心地が悪くて、ムカムカイライラしました。当然
それも伏線のうちなんですが、死体があることに慣れきっている家族が厭で厭で仕方なかった。
この間読んだ京極さんの『厭な小説』に収録できそうって思いました(苦笑)。そして、
オチが全くピンと来なかったんです。読み終えて前に戻ってぱらぱら復習してみたんだけど、
やっぱりわからず、もやもや・・・。なんとなくこうかなっていうのはあるんだけど・・・。

『ふちなしのかがみ』
先述したように、これは抜群に出来が良かった。完全にミスリードさせられました。まさか、
こういう仕掛けがあるとは・・・!午前0時に合わせ鏡をすると何かが起きる、という都市伝説、
私の子供の頃にもありました。私が聞いたのはこれに出て来るのとはちょっと違いましたけど。
ところで、このタイトルの『ふちなしのかがみ』って何なんでしょう。縁なしの鏡?淵なしの鏡?
なぜこのタイトルなのかが最後までよくわかりませんでした。読みとり不足かな・・・。

『八月の天変地異』
少年のひと夏の友情を描いたみずみずしい一作ということで、作品としては悪くない。悪くないん
だけど、オチが全部予想がついちゃって、まんまその通りだったのでちょっとがっかり。辻村さん
のことだからもうひとひねりあるだろうと期待して読んでいただけに、ラストで肩すかしを食らった
感じで拍子抜けでした。ただ、これを最後に持ってきたことで、一冊通しての読後感はぐっと良く
なったように思いました。





この作品の中で、私が一番怖いと思ったのは表紙かも・・・(^^;)。一見、メルヘンタッチで
可愛らしくて素敵な表紙なんですよ。でも、中央に書いてあるものって何なんだろう?って
わからずにいたのですが(イソギンチャクみたいな海底生物にも見えるし^^;)、裏表紙を見ると・・・
ギャー!!○○だったのかーーー!!っていう驚きがありました。このカバーの仕掛けに
一番驚いたかもしれないよ・・・。
気になる方は書店で確認してみて下さい。あ、画像載せたらみんなピンと来るかな?