ミステリ読書録

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似鳥鶏/「さよならの次にくる < 卒業式編 >」/創元推理文庫刊

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似鳥鶏さんの「さよならの次にくる < 卒業式編 >」。

某市立高校に通う葉山は、小学校時代の初恋の人・渡会千尋と再会する機会を得た。彼女とは、
小学校の卒業式の日に必死で書いたラブレターをある事情から渡すことが出来ず、それきりに
なっていた。親友の三野の計らいで彼女の通う愛心学園吹奏楽部のコンサートの手伝いに駆り
出されたものの、なかなか彼女との再会は果たせずにいた。そんな中、葉山の先輩・東が嘘つき
で女たらしであるという旨の怪文書吹奏楽部の部室に貼られ、部内は騒然となる。犯人捜しが
行われる中、自分が犯人だと名乗り出たのは葉山の初恋の人・度会その人だった。しかし、彼女
は正義感から犯人を庇っているのだ。初恋の人のピンチを救うべく、葉山は立ちあがった――
『理由あって冬に出る』に続く、シリーズ第二弾。


前作理由あって冬に出るは個人的にはなかなか気に入った青春学園ミステリだったのだけど、
まさか続編が出るとは思わなかったので、また葉山君や伊神さんに会えてとても嬉しいです。
前作は全体的にミステリとしてはそれほどいいとは思えなかったのだけど、結末のほろ苦さや、
キャラが良かったので、かなり気に入った作品でした。印象的には今回もほぼ同じ。ミステリとしては
やっぱり弱くて小粒な印象ですが、主人公の葉山君のコミカルな語り口と、彼と周りの人物との
会話が楽しくて、それだけでも十分面白く読めました。今回は葉山君が初恋の人の為に奮闘する
お話。葉山君が初恋の君との再会にドキドキする割に、なかなかその再会シーンが果たされず、
やきもきしました。しかも、本人と再会する前に彼女の無実の証明という厄介事を背負い込んで、
彼女の与り知らぬところで探偵活動をする羽目になってるし。どこまでお人よしなんだ、葉山!
と何度ツッコミを入れそうになったことか。そして、彼女の為に頑張って頑張って謎解きをして、
挙句全部美味しいところを伊神さんに持ってかれて、ほんとに、哀れになりました。しかし、
葉山君はなぜ柳瀬さんを恋愛対象にしないのだろうか。彼女の葉山君に対する態度は、一見
冗談ぽく見せてるけど、かなり本気だと思うんだけどなぁ。バレンタインチョコの件なんか、
どう考えても愛情の向け方が間違っている気がしないでもないですけど(笑)。でも、それに
つきあってあげる葉山君はやっぱりいいヤツだ。実は小学校時代モテていたという意外な事実
にも納得できるな。でも、その割にバレンタインチョコをもらったことがなかったっていうのが
よくわからないけど。っていうか、母と妹にさえもらえなかったって・・・^^;

途中意味深に挟まれる『断章』部分については、全く最後まで触れられないままなので、これは
続きの< 新学期編 >に持ち越しのようです(<卒業式編><新学期編>で前後編になっている模様)。
伊神さんが卒業してしまったので、次でどうやって彼を登場させるのか、気になります。
それにしても、伊神さんの中学時代にはビックリ・・・そんな荒れた過去があったとは!今の
キャラからは想像もできません。彼がなぜ変わったのかもきちんと明らかにしてほしいですね。

本書は四つの短編が収められた連作形式になっています。一話目のトリックに関してはどうも
無理があるように感じて首を傾げてしまいました。体重50キロの小学生に実現可能なんで
しょうか。そこに至る経緯にもちょっと疑問を覚えましたし。あと、三話目の仕掛けには、
最初は騙されてましたが、割と使い古された手法なので途中で気がついてしまいました。
上手く書かれているとは思うんですけどね。

ところで、前作で気になっていた表紙の女の子が誰かという疑問ですが、すんなり柳瀬さん
だと考えていいみたいですね。今回も、眼鏡をかけているという表記はなかったと思うの
ですが・・・。ちなみに、もしや伊神さんが女では・・・という深読み説も、あっさり今回早々に
否定されました。伊神さんの名前も明かされたし、はっきり男という表記が出てきますしね
(まぁ、前作でも『彼』を使っていたので、それはさすがにないだろうとは思っていたのですが^^;)。

いろんな部分がまだ消化不良なままなので、なるべく早く後編も読みたいと思います。

・・・と、すでに次が出てるつもりで記事を書いていたのですが、調べたところ、続編の発売は
8月末だそうです。すみません^^;