ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

内田康夫/「ぼくが探偵だった夏」/講談社刊

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内田康夫さんの「ぼくが探偵だった夏」。

朝から不運続きの夏の日、ぼくのクラスに軽井沢から本島衣理という女生徒が転校してきた。
ぼくの隣の席になったものの、初対面の印象は最悪。もともと女が苦手なぼくには憂鬱な毎日
が始まった。でも、幸いなことに、次の週から夏休みが始まり、ほっと一息。ぼくの家は、毎年
夏休みに入るとすぐ軽井沢の別荘に行き、ひと夏を過ごす。軽井沢にはぼくと同い年の峰男君
という友達がいる。今年も一緒に遊んでいると、突然峰男君が「可愛い子を紹介する」と言って
きた。そこで紹介されたのは、なんと転校生の本島だった!父親の仕事の都合で東京に転校した
本島は、夏の間軽井沢で喫茶店を営む父親の実家に戻ってきていたのだった。三人で本島の
祖父が経営している喫茶店で話をしているうちに、最近軽井沢で行方不明になった女性の話題
になり、三人で女性がいなくなったと言われている『妖精の森』に行ってみることに。すると、
森の中にひっそりと建っている怪しげな『緑の館』の庭で不審な動きをしている男の姿が。
何か棺のようなものを埋めているようなのだが――浅見シリーズ、ジュブナイルで登場。
講談社ミステリーランドシリーズ。


なかなか借りれなかった菊地さんとは反対に、いちはやく地元図書館に大量に入荷し、あっという
間に回ってきた内田さんのミステリーランド。一体この差はなんなんだ・・・^^;
菊地さん同様、内田作品を読むのも多分十ウン年ぶり。浅見シリーズは二十代の頃一時期熱狂的
にはまって、一気に20~30冊くらい読んだのですが、あまりの冊数の多さに追い切れなく
なって途中挫折。多分浅見シリーズを読もうと思ったきっかけは映画で『天河伝説殺人事件』が
話題になったからだったと思うのですが。中森明菜の主題歌好きだったなぁ・・・(遠い目)。
おぼっちゃんな光彦氏のキャラが結構好きで、テレビのドラマシリーズ(二時間もの)も結構観て
ました。ちなみに私は浅見さん役は榎木孝明さんがお気に入りでした。

おっと、脱線^^;
そんな訳でひさーしぶりに読んだ浅見シリーズでしたが、内容的にはこのレーベルとしては非常に
薄味でちょっと読み応えがなかったなぁという感じ。そもそも、どんな事件が起きているのか
終盤になるまでわからないし、ストーリーにいまいちメリハリがない。光彦たちが夜、大人たちの
目を盗んで何度も『緑の館』に忍び込む場面も、どうもいまひとつ緊迫感に欠けていて、冒険の
どきどき感みたいなものが感じられなかった。『ジュヴナイルだから』ってことにしても、
もう少し危険な目に遭う展開があっても良かったんじゃないのかな。館に忍び込んで悪い人間に
見つかってあわや、という場面でも、あっさり都合よく助けられちゃうし。まぁ、浅見シリーズ
自体が軽めのミステリなのだから(私は初期作品しか読んでないから、重厚な作品もあるのかも
しれないけれど^^;)、ジュヴナイルになったらこれ位で当然なのかもしれませんが。

ラストもちょっと拍子抜けだったし、全体的にストーリー展開には読み応えはなかったかな。ただ、
浅見シリーズを読んだことがある人間ならば嬉しい要素がちょこちょこ挟まれているところは
良かったです。少年時代の浅見光彦に出会えたことはもちろん、お馴染みの竹村警部と浅見
光彦との出会いが読めたのも嬉しかったし、ルポライター内田康夫氏(ぷぷ)と出会った
光彦少年が、自分もそんな大人になりたいとルポライターを目指すきっかけとなるエピソード
が読めたのも良かった。シリーズゼロという位置づけの作品として、ファンには嬉しい一冊
になっているのではないかな。それにしても、若かりし頃の竹村警部ってかっこよかったのです
ねぇ。光彦少年たちのピンチに颯爽と現れるところは、どこぞの特撮もののヒーローかと思い
ましたよ(笑)。ノンシリーズのミステリだったら、一番怪しい行動をしている人物として
変に勘繰っていたかもしれませんけどね(苦笑)。

一番好きだったシーンは光彦が夜中に抜け出してホタルの群れを発見するところ。幻想的な
夏の夜の情景が浮かんできて美しい場面でした。私の田舎でも子供の頃は普通に隣の田んぼに
いたのに、いつしか見れなくなっていて哀しかった。実際、ホタルが暗闇で輝くのを生で見るのって、
結構感動的ですよ。最近の子はめったに見たことないのかなぁ。でも、今考えると虫なんだよね、
ホタルって・・・(当たり前^^;)。今だったら見るのはいいけど、触れないかも・・・(虫嫌い^^;;)。