ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

誉田哲也/「武士道エイティーン」/文藝春秋刊

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誉田哲也さんの「武士道エイティーン」。

それぞれの高校で剣道の稽古に励む香織と早苗。香織は最近後輩の美緒となぜかぎくしゃくして
しまうことに悩み、早苗は稽古中に靭帯を痛めて稽古に支障をきたしていた。インターハイが終わる
まで連絡をするな、と香織から言われていた早苗は、怪我のことを香織に伝えられずにいた。
インターハイで再び対戦することを楽しみに稽古に励んでいた早苗だったが、個人戦の出場は
絶望的で、気落ちしていた。しかし、監督の吉野が、団体戦で香織と当たれるよう、早苗
を大将に据えると言いだした。吉野も二人の対戦が観たいというのだ。そして、ついに運命の日が
やってきた――18歳の少女剣士たちの活躍を描く傑作青春エンターテイメント、第三弾。


武士道うんちゃらシリーズ(笑)、第三弾です。いいね、いいねー、青春だねー!!ってばんばん
肩をたたきたくなっちゃうような、清々しい青春小説です。巷では一応これが完結編と言われている
ようです。ま、確かに今回でダブルヒロインである香織と早苗供に高校を卒業してしまったので、
一区切り、という感じはするのですが、これで終わりなんて絶対勿体ない!ラストの二人の会話
を読んでしまったら、これはもう、ナインティーンも書くしかないでしょ!って思っちゃいました。
前二作も十分面白かったけれど、三作目であるにも関わらずマンネリの印象を与えず、前二作を
超える爽やかさと面白さを演出できる筆力が素晴らしいです。今回は香織と早苗視点とは別に、
今まで出て来た脇役キャラを主役に据えたサイドストーリーも合間に挟まれています。この
サイドストーリーがまた非常に良くできていて、これだけ集めても一冊本が出せるんではって
位、内容が濃い。サイドストーリー同士がリンクしている所もあり、構成的にも優れていると
思いました。それぞれ、意外に重い過去を抱えていて、このサイドストーリーを読んだことで
シリーズ自体により深みが増したように思いました。特に、酒浸りで情けない印象の吉野
先生の過去にはびっくり!なんなんですか、このかっこ良さは。もう、180度印象が変わっちゃ
いました。なぜあんなに彼がお酒を毎日飲むのかの理由もわかります。そっかぁ。なるほどねぇ。
にやにや。みたいな(笑)。でも、きっとこれが純愛なんだろうなって、嬉しくなりました。
桐谷道場の暗い過去にも驚いたなぁ。隆明兄が奇声を発した場面を読んだ時は、これからどんな
横溝風本格ミステリになるのかと思いましたよ^^;隆明兄さん渋かったなー。かっこいい(ラブ)。
緑子と巧が別れた原因も読めて良かったです。もう、完全に少女マンガな展開でしたが^^;
巧と河合さんって、その後付き合うことになるんだっけ?この話を読んでる限り、河合さんには
全く好感持てなかったなぁ・・・。緑子とああいう別れ方をした後、河合さんと付き合うとしたら、
巧にはがっかりかも。
美緒がなぜ香織から離れて行ったかも気になっていたので、美緒視点の章を読んですっきり
しました。彼女は彼女でいろいろ考えるところがあったんですね。彼女に対する見方も少し
変わりました。香織との関係が復活するといいな。

前作で香織と別れて福岡南高校で自らの剣道を探すことを選択した早苗は、相変わらず自分の
求める剣道とは違う福岡南の剣道に反発心を覚えながらも、認められる部分もあることに気づき、
徐々に部に馴染んで行きます。もともと素直な性格だから、順応性は抜群ですしね。彼女はどこに
行ってもそれなりに周りに可愛がられて上手くやっていきそうです。一方香織は後輩の美緒との
関係に悩んで、ちょっぴりへこむ日々。多分、以前の香織だったら誰に何を思われようと勝手に
しろ!って感じだったと思うのですが、早苗と出会ったことで、他人に気を遣うことができる
までに成長したのでしょう。後輩を指導する姿も(相変わらず鬼だけど(笑))凛々しくて、
いい先輩になったなぁって感慨深いものが・・・(なぜか父母目線)。父親に進路を相談する
なんてことも、以前の香織と父の関係だったら絶対なかったと思うので、その成長っぷりに
目を瞠りました。それに、その時の会話がいちいち可笑しかった。父も、せっかく娘が頼って
来てるんだから、もっと親身になってやれよ~とツッコミを入れたくなりました^^;

別々の道を選んでも、香織と早苗の関係はきっと一生変わらないのでしょうね。どんなに離れた
場所にいても、魂で繋がっている二人。出会うべくして出会った二人という感じがします。
親友に近いけど、そんなにべたべたしていない。けれどもどこか心の中でお互いをよりどころに
していて、依存し合っているような所もある。いつまでも、この二人には反発しながらも、お互いを
認めて高め合うような、唯一無二の友情を築いて行って欲しいです。

いやぁ、面白かった。武士道に邁進する少女剣士たちがリアルに清々しく描かれていて、最高に
面白いエンターテイメントな青春小説に仕上がっています。映画化もされるようだし、たくさんの
人に読んで欲しいシリーズですね。
ちなみに表紙は前作の記事での予想が当たってグリーンでした。書棚に三作並べたらカラフルで
綺麗そうだ^^