ミステリ読書録

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鯨統一郎/「哲学探偵」/カッパ・ノベルス刊

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鯨統一郎さんの「哲学探偵」。

警視庁の中で難事件を扱う特捜班に所属する高島警視と久保刑事。コンビを組む二人が関わる
事件は、一筋縄では解決できないものばかり。そんな二人はひょんなことから競馬場で一人の
奇妙な男と出会う。男は、高島と久保の話を聞いただけで、不可解な事件の謎を解いてしまう。
しかも、哲学短歌を詠じながら――鯨ワールド炸裂の連作ミステリー。


うーん。良くも悪くも鯨ワールド全開って感じです。端的に言うと、哲学+短歌+競馬で成り
立っている作品。って書いても、わけわからないですね。そして、この三つの要素が見事なまでに
噛み合ってません。さすが、鯨さん。この三つの要素の意味のなさを笑い飛ばすのか、
憤るのかはその人次第でしょう(まぁ、鯨ファン以外の人は大抵後者でしょうけど^^;;)。
ツッコミ所満載すぎて、一体どこをツッコんだらいいのかわかりません。そもそも、一体
どんな偶然が重なれば毎回あの広い競馬場で特定の人と再会できるんでしょうか。それに
謎の哲学短歌男が毎回の如くに大穴を当てるのもあり得ないリアリティのなさ。でも、
そんな細かい部分に拘っていたら鯨作品は読めません。このくだらなさ、意味のなさこそが
鯨作品の醍醐味というものでしょう・・・た、多分・・・^^;;←自信なさげ
ミステリ部分も当然の如くに大部分がこじつけの強引な推理が多い。でも、中には素直に
哲学短歌男の推理に感心して納得させられてしまったものもありました。

登場する競馬場の一つは非常に馴染みのある場所なので、親近感が湧きました。なぜか哲学
の知識と供に競馬の知識も学べました(別に、どっちも学びたくなかったけど)。哲学好きは
そんなにいないでしょうけど、競馬好きの方には結構楽しめるのではないでしょうか。

高島のキャラがいちいち嫌味っぽくて読んでてムカっとしました。ただ、その分久保刑事が
穏やかな性格で、高島をフォローしていた所は良かったです(本人はフォローされている
なんて全く気付いていませんが)。哲学短歌男は、何だかよくわからない。適当なようでいて
刑事二人の話をきちんと聞いて真相を推理できるんだから、相当頭は良いのでしょうが。
でも、毎回競馬で当てたお金で豪遊しているのはどうかと思いました^^;豪遊するにしても
限度があるでしょ!とツッコミたくなりました・・・。

まぁ、要素要素はさっぱり噛み合ってませんが、その噛み合わなさっぷりを笑い飛ばす作品
でしょう。でも、鯨ファンなら楽しめるだろうけど、鯨作品の初心者には間違ってもお薦め
できません。あと、バカミスにあまり免疫がない方も止めておいた方が無難かと。


この作品で一番私が傑作だと思った、カバー折り返しの著者のことば。


『いつかきっと来る。鯨の時代が・・・』


私もきてほしい。