ミステリ読書録

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倉坂鬼一郎/「三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人」/講談社ノベルス刊

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倉坂鬼一郎さんの「三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人」。

東亜学芸大学のファインアート研究会に所属している大学生たちが一人、また一人と行方不明
になって行く。彼らは一様にある招待状を受け取って、ある館に赴いているのだが。到着すると
館の主人が出迎え、ウェルカムドリンクを振る舞われた後『奥の部屋』で寛ぐ。そして、その
場所で凄惨な死を迎える――殺人の実行者はすべて新進気鋭の青年画家、鳥海翔。不可解な
連続殺人の真相とは――?



く、くくく・・・・くだらねーーーー。


・・・ぐはー。いやぁ、なんともはや、よくぞやってくれました、って感じです。
これはもう、何を書いてもネタバレになっちゃいそうなので、読んだ人にしかわかって
もらえないと思うんですけど、この真相にはほんとに脱力させられつつ、大笑い。
もうね、ここまでしてくれれば、憤りを通り越して、感動ですよ。生真面目にここまで
バカやってくれるとね、嬉しくなっちゃいますね。

ミステリYA!シリーズのブランクを読んで、もう二度と読むまい、と決意していた
倉坂作品でしたが、あちこちで「究極のバカミスと称されている本書の噂を耳にしたら、
バカミス好きとしては読まずに過ごせないじゃないですか。という訳で、恐る恐る借りて
みた次第。結果として、まさに究極のバカミス、だと思いました、私も。読んでる途中、
ちょこちょこ違和感は覚えていたのだけど、まさかここまであからさまに伏線が張られている
とは・・・。蓋を開けてみると、なんで気付かなかったんだ、自分、って思うくらい、執拗に
偏執的なまでの伏線が張られているんですけどね・・・。

まぁ、人によっては間違いなく壁本になるだろう真相ですけどね・・・。私はこういう
バカは大好きですよ。ここまで突き抜けてくれちゃうと、もう何も言うことございません。
特に、ウェルカムドリンクのネーミングと中身にはやられました。絶対何かあるな、とは
思ってましたけどね。ぷぷぷ。

あとはやっぱり上林が死んだ際に残したダイイングメッセージらしきものの真相ですね。
嫌な予感がしてましたけどねぇ。ぶはは。ひー。あほだー。

151ページからの『もう一つの謎解き』からが真骨頂。ここから、作者が作品に仕掛けた
タネ明かしが始まるのですが、最初に明かされる部分(二の丸)に関しては全く気付けなかった
ので、二つ目(本丸)のネタばらしの前に前に戻ってしばし熟読、黙考。ビンゴ!でした。
三つ目、最後の謎に関しても同様。気付いた瞬間、うわっ。こわーーー!って思いました^^;
これを仕掛ける為に、作者が偏執的なまでに精力を注いだことが伺えます。よくやるよ・・・。

内容はほんとに、三崎の黒鳥館と白鳥館で連続して密室殺人が起きるという、タイトル
そのまんまの作品です。いかにも、本格ミステリ的な要素が全部入ってますね。ええ。
途中に挟まってるお約束の館内見取り図を見て、鋭い人は仕掛けに気付く可能性もあるかも。
私は思っていたのと大幅に違っていたので違和感を覚えつつ、さっぱり気付いてなかったですけど。
まぁ、その前に、本文をよーく読んでいればヒントは目の前にいくらでもぶら下がってますけどね。

一言メッセージでも書きましたが、今年ナンバーワンのバカミスなのは間違いありません。
脱力したい方は是非お手に取ってみて頂きたいです。じっくり読むと作者の仕掛けに
気付けるかもしれません。
あ、でも壁本になっても苦情は受け付けませんよ。
読むかどうかはあくまでも自己責任でお願いします(笑)。

作中で触れられている『四神金赤館銀青館不可能殺人』も俄然気になってきたなぁ・・・。