伊坂幸太郎さんの「SOSの猿」。
家電量販店の店員・遠藤二郎は、子供の頃に憧れの存在だった『辺見のお姉さん』に22年ぶりに
再会し、彼女の息子と会って欲しいと頼まれる。彼女の息子は高校を卒業してすぐひきこもりに
なってしまったという。人づてに、二郎が副業でカウンセリングまがいのことをしていると聞いた
せいだ。しかし、実際はカウンセリングではなく、悪魔祓いだった。二郎はイタリアにいた時、
悪魔祓いをする神父と行動を共にしていたことがあり、その経験を生かして帰国してから何度か
本業の傍ら、頼まれて悪魔祓いの仕事を受けていた。辺見のお姉さんたっての頼みを断れない
二郎は、彼女の息子に会いに行くことに。一方、物事の因果関係を追求せずにはいられない論理的で
生真面目なサラリーマン・五十嵐真は、会社から一瞬にして300億の損失を出した株の誤発注事件
の調査を任され、一つ一つの原因を遡って探り始めた。交錯する二つの出来事の因果関係とは――。
再会し、彼女の息子と会って欲しいと頼まれる。彼女の息子は高校を卒業してすぐひきこもりに
なってしまったという。人づてに、二郎が副業でカウンセリングまがいのことをしていると聞いた
せいだ。しかし、実際はカウンセリングではなく、悪魔祓いだった。二郎はイタリアにいた時、
悪魔祓いをする神父と行動を共にしていたことがあり、その経験を生かして帰国してから何度か
本業の傍ら、頼まれて悪魔祓いの仕事を受けていた。辺見のお姉さんたっての頼みを断れない
二郎は、彼女の息子に会いに行くことに。一方、物事の因果関係を追求せずにはいられない論理的で
生真面目なサラリーマン・五十嵐真は、会社から一瞬にして300億の損失を出した株の誤発注事件
の調査を任され、一つ一つの原因を遡って探り始めた。交錯する二つの出来事の因果関係とは――。
伊坂さん新刊です。前作『あるキング』は、個人的にはかなり不満の残る作品だった為、同じ流れの
作品だったら嫌だなぁと思いながら読み始めました。実は、読売に連載されていた時ちょこちょこ
読んではいたのですが、細切れに読んでもさっぱり内容が把握出来ず、途中で読むのを止めて
しまいました。そんな経緯もあって、ちょっと斜に構えつつの読書となりました。正直、中盤
辺りまではあまりにも荒唐無稽過ぎる設定に引いてしまい、やっぱり伊坂さんは私の好みから
はずれて来てるのかも、と嫌な予感が過ぎりました。どう考えても西遊記の設定が浮いていて
作品にはまっているように思えなかったのです。それに、悪魔祓いの設定も、今時?って
思ったし。一つ一つのパーツがなんだかちぐはぐで、違和感ばかりを覚えるストーリーについて
いけないものがあるというか。
作品だったら嫌だなぁと思いながら読み始めました。実は、読売に連載されていた時ちょこちょこ
読んではいたのですが、細切れに読んでもさっぱり内容が把握出来ず、途中で読むのを止めて
しまいました。そんな経緯もあって、ちょっと斜に構えつつの読書となりました。正直、中盤
辺りまではあまりにも荒唐無稽過ぎる設定に引いてしまい、やっぱり伊坂さんは私の好みから
はずれて来てるのかも、と嫌な予感が過ぎりました。どう考えても西遊記の設定が浮いていて
作品にはまっているように思えなかったのです。それに、悪魔祓いの設定も、今時?って
思ったし。一つ一つのパーツがなんだかちぐはぐで、違和感ばかりを覚えるストーリーについて
いけないものがあるというか。
でも、終盤を読んで、そうした違和感は意図して作られたものであり、私はまんまと作者の奸計
にはまっていたことがわかりました。まぁ、全部が全部すっきりした訳でもないのですが、ほぼ
腑に落ちないと思っていた所は解消されたので、満足。なるほど、こうして一冊の本に纏まって
みると、作者がやりたいことがはっきり見えてきますね。そして、これは細切れに読んじゃダメな
本だなぁと改めてしみじみ思いました。だって、ある回には悪魔祓いとかエクソシストとかが
出て来たと思ったら、次に読んだ時は株式の損失がどうとかって話になってるんだもの。しかも、
その合間に西遊記とか孫悟空とかの話まで入るんですから。二つの視点から語られる、それぞれの
話には一見全く何の繋がりも見入だせないので、そりゃー、何が何だかですよ。でも、これが
終盤にちゃんと繋がるところはお見事。『猿の話』パートは、語り手の偉そうな態度とか話し方
とか、第三者に向ける呼びかけなんかにも、いちいちイラっときていたりしたので(^^;)、
その語り手の真相を知って、「なるほど!」と思いました。それに、荒唐無稽すぎると思っていた
西遊記関係の要素にもちゃんと因果関係があったので、すっきりしました。こういう構成の巧さ、
伏線の回収の妙はさすがですね。
途中、あるシーンで孫悟空が出て来て、登場人物にとって、ある『不都合な事象』を解消して
しまうくだりを読んだ時は「さすがにご都合主義すぎるだろ!」と読んでいて思いっきり
ツッコミを入れていたのですが、その部分も最後まで読んで納得。孫悟空は作者のご都合主義の
為の要素なのかと思っていたので、反省しきり、でした。
にはまっていたことがわかりました。まぁ、全部が全部すっきりした訳でもないのですが、ほぼ
腑に落ちないと思っていた所は解消されたので、満足。なるほど、こうして一冊の本に纏まって
みると、作者がやりたいことがはっきり見えてきますね。そして、これは細切れに読んじゃダメな
本だなぁと改めてしみじみ思いました。だって、ある回には悪魔祓いとかエクソシストとかが
出て来たと思ったら、次に読んだ時は株式の損失がどうとかって話になってるんだもの。しかも、
その合間に西遊記とか孫悟空とかの話まで入るんですから。二つの視点から語られる、それぞれの
話には一見全く何の繋がりも見入だせないので、そりゃー、何が何だかですよ。でも、これが
終盤にちゃんと繋がるところはお見事。『猿の話』パートは、語り手の偉そうな態度とか話し方
とか、第三者に向ける呼びかけなんかにも、いちいちイラっときていたりしたので(^^;)、
その語り手の真相を知って、「なるほど!」と思いました。それに、荒唐無稽すぎると思っていた
西遊記関係の要素にもちゃんと因果関係があったので、すっきりしました。こういう構成の巧さ、
伏線の回収の妙はさすがですね。
途中、あるシーンで孫悟空が出て来て、登場人物にとって、ある『不都合な事象』を解消して
しまうくだりを読んだ時は「さすがにご都合主義すぎるだろ!」と読んでいて思いっきり
ツッコミを入れていたのですが、その部分も最後まで読んで納得。孫悟空は作者のご都合主義の
為の要素なのかと思っていたので、反省しきり、でした。
『あるキング』の時は作者が一体何が書きたかったのか最後まで読み取れなかったのですが、
本書では遠まわしではあるけれど、伝えたいこが伝わってきたような気がしました(本当に
そうかはわからないけど)。誰かを助けたいという想いが、誰かを救う。誰かのSOSを嫌でも
感じ取ってしまう二郎。そして、それを見過ごせないだけに、彼の性格はきっとたくさんの
損をしているし、結局救えないことで自分の無力さを思い知らされて嫌な思いもしていると
思う。でも、彼のような人間がいる世の中だったら、ちょっと捨てたもんじゃないなって思う。
現実的には助けられなくても、誰かの為に何かしてあげようって思う気持ちが、誰かを救うことも
あるんじゃないかな。私は、二郎のキャラクター、とても好きでした。
本書では遠まわしではあるけれど、伝えたいこが伝わってきたような気がしました(本当に
そうかはわからないけど)。誰かを助けたいという想いが、誰かを救う。誰かのSOSを嫌でも
感じ取ってしまう二郎。そして、それを見過ごせないだけに、彼の性格はきっとたくさんの
損をしているし、結局救えないことで自分の無力さを思い知らされて嫌な思いもしていると
思う。でも、彼のような人間がいる世の中だったら、ちょっと捨てたもんじゃないなって思う。
現実的には助けられなくても、誰かの為に何かしてあげようって思う気持ちが、誰かを救うことも
あるんじゃないかな。私は、二郎のキャラクター、とても好きでした。
あと、辺見のおばさんと二郎のおばさんの漫才コンビにはとても心が和みました。この二人の
存在は、この作品の一服の清涼剤のように思えました。60過ぎて漫才に真剣に取り組むおばさん
コンビ。いいなぁ、いいなぁ。なんて素敵な生き方!!ラストで、辺見のお姉さんの気持ちを
変えた辺見のおばさんの言葉もすごく好き。私も、自分の母親には自分の愉しみを見つけて
幸せに明るく生きてて欲しい。そう思えることも、親孝行のひとつじゃないかな?
存在は、この作品の一服の清涼剤のように思えました。60過ぎて漫才に真剣に取り組むおばさん
コンビ。いいなぁ、いいなぁ。なんて素敵な生き方!!ラストで、辺見のお姉さんの気持ちを
変えた辺見のおばさんの言葉もすごく好き。私も、自分の母親には自分の愉しみを見つけて
幸せに明るく生きてて欲しい。そう思えることも、親孝行のひとつじゃないかな?
コンビニ店長と雁子さんのキャラも良かったですね。コンビニ前で夜中に合唱練習。ある意味、
ものすごい近所迷惑のような・・・周りに民家とかないのかな(苦笑)。
ものすごい近所迷惑のような・・・周りに民家とかないのかな(苦笑)。
一点、腑に落ちない部分があったのだけど、それはラストで二郎自身が感じている疑問でも
あったので、伊坂さんが敢えてそう書いたとわかって無理矢理納得。そんなことあるもんかね?
とも思うけど、説明できない不思議なことが、世の中にはあるもんだってことで。
あったので、伊坂さんが敢えてそう書いたとわかって無理矢理納得。そんなことあるもんかね?
とも思うけど、説明できない不思議なことが、世の中にはあるもんだってことで。
最後の疑問点。未読の方はご注意を。
眞人が株式損失を予言することができたのはなぜ?そんなに都合良く半年先の株式の
誤発注を予想できるものかなぁ。その点はやっぱり論理的に説明して欲しかったです。
虫の知らせみたいな曖昧なぼかし方だとちょっともやもや・・・。
誤発注を予想できるものかなぁ。その点はやっぱり論理的に説明して欲しかったです。
虫の知らせみたいな曖昧なぼかし方だとちょっともやもや・・・。
少し回りくどいけど、伊坂さんらしい構成の巧さで唸らされました。新聞連載の時にはこういう
話だとは想像も出来ませんでした(苦笑)。
どうも、世間の評価はそれほど・・・みたいですが、私はすごく面白かったです。良かった、
ファンやめないで(笑)。
話だとは想像も出来ませんでした(苦笑)。
どうも、世間の評価はそれほど・・・みたいですが、私はすごく面白かったです。良かった、
ファンやめないで(笑)。