ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

詠坂雄二/「電氣人間の虞 」/光文社刊

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詠坂雄二さんの「電氣人間の虞」。

語ると現れる。人の思考を読む。導体を流れ抜ける。旧軍により作られる。電気で綺麗に人を
殺す――遠海市内で秘かに囁かれる都市伝説の一つ、『電気人間』。民俗学専攻の大学生・
赤鳥美晴は、単位取得の為の課題で電気人間をテーマに取り上げることに決め、調査に乗り出す。
しかし、調べを始めた赤鳥の身に悲劇が――電気人間に関わる人物が次々と不審の死を遂げる。
電気人間は実在するのか――?



2010年度本格ミステリベスト13位。
2010年版このミステリーがすごい!20位。



※以下、これからこの作品を読まれる方はご遠慮頂くことをお勧め致します。

かなりな黒べる記事となっております。一部ネタバレもしております。あしからず。





















何なんですか、コレ。こんな作品、商業ベースに乗せていいんですか。あまりに、読者を
馬鹿にしてませんか。っていうか、この作品を各種ランキング本で推した人は一体どこを
評価してるんですか。私には全くの駄作にしか思えなかったのですが。あまりに、酷い。
ミステリとしても成り立っていない上、ラスト二行のあのオチ。結局、作者が目指して
いたのはミステリではなくSFファンタジーってことですか。ふざけんな!って本投げたく
なりました。くだらないとか、そういうのを超越して、読者を馬鹿にしてるとしか思えない。
衝撃のオチってのは確かでしょうけど、私には全く受け入れ難い終わり方でした。

何より、三人の死の真相に脱力ですよ。その直前の詠坂の推理はなかなか面白いと思った
のに、結局そんな真相?って拍子抜け。それに、犯人がその人物(?)だとして、竹峰老人
の死の真相は結局どうなる?そこだけ詠坂の推理が合っていたとでも?とにかく、ミステリ
としての真相の処理があまりにも杜撰で、読んでてぶちキレそうになりました。今まで読んできた
時間は何だったんだよ、と思いました。







以下、完全なるネタバレ。未読の方はご注意を。











そもそも、最初に引っかかったのは、地下壕の鍵の件。竹峰家から鍵をくすねた日積が地下壕の
扉を開けて中で死んだ後、扉は小学生コンビが開けるまで閉ざされたままだった筈。ということは、
鍵も竹峰家には返されておらず、日積が持ったままってことですよね。それなのに、日積の
死体を発見した小学生コンビの片割れである剣崎が竹峰老人から鍵を盗めたのはなぜ?そうなると、
地下壕の鍵は二本ないとおかしい。でも、そんな表記は出てきていない。スペアがあったなら
あったときちんと書くべきだと思うのですが。でも、その時点でまさかラストでああいう展開に
なるとは思わなかったので、そこにも何かのからくりが隠されてるんだろうと思って読んだ訳
だったのですが・・・。結局、作者はその辺りも適当に書いてたってことだったんでしょうか。
ミステリ的な整合性なんか、あの結末ならなくても良い訳だし。ミステリとして読みたい人は、
詠坂の説を信じてればいいってことなのか。

キャラ造形もなんだか中途半端な感じだったし。取り敢えず好感の持てる人物は一人も出て
来ませんでした。一番嫌だったのは日積かなぁ。こいつ、キモッ!と思いました・・・。
文章は、ちょっと京極さんを意識してるのかな、と思えたのですが。私の気のせいですか。

すべての章が誰かが語る「電気人間」の言葉で始まる仕掛けは面白かったですが、それも別に
何の伏線でもなかった訳で(いや、よく考えるとそれが一番大きな伏線と言えなくもないけど・・・。
でもなぁ・・・)。
何だかなぁ、もう。都市伝説ものは好きなので、途中までは結構面白く読んでたのに・・・。

なんかもう、とにかく読み終えて怒りが込み上げてきました。ほんとに、あのオチはないよ。
たとえ、その二行に繋がる作品が書かれたとしても、全く読む気になれないですね。
私の読書時間を返せーーー。ぜえはあ。





















これから読まれる方は、あのラストをどう捉えるんでしょうか。ランキング本であれだけ
評価した人がいるってことは、衝撃作として一票を投じたってことなんですかね。