ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

桜庭一樹/「推定少女」/角川文庫刊

桜庭一樹さんの「推定少女」。

ある晩、義父に怪我を負わせて家を飛び出した巣籠カナ。逃亡者となり、田舎町で唯一の繁華街の
路地裏に迷い込んで巨大な棺桶のようなダストシュートに身を隠そうと蓋を開けると、そこには
雪のように真っ白でカチンコチンに凍りついた長い髪の美しい少女の真っ白な裸体が横たわって
いた。そして、少女の手には黒い銃が握られていた。カナは少女に乞われて『白雪』という名前を
つける。白雪はダストシュートで気を失う以前の記憶を失っていた。理由ありの二人は、夜の
田舎町で逃亡を続け、東京の秋葉原を目指し始めた――。幻の未公開エンディング二作も同時収録。


単行本は読み切ってしまったので、ラノベもちょこちょこと読み進めて行こうと思っている桜庭
さん。本書はファミ通文庫で出版されたものをボツになった別バージョンのエンディング二編を
加えて、角川文庫から再出版されたもの。

内容はいかにもラノベ。いきなり冒頭で義父に危害を加えて追われものになった主人公が、
へんてこりんな美少女・白雪と秋葉原で出会った少年・千晴と共に逃亡劇を繰り広げる、
というもの。なんとも荒唐無稽な設定で、三十路を超えた人間にはちとついて行くのが
しんどかった。いや、面白かったですけど、結局謎の美少女白雪の正体はいまひとつ
わからないままだし、カナが慕っていた電脳戦士の兄ちゃんは突然いなくなってどこ行ったか
わからずフェードアウトだし、いろんなものが曖昧なまま話が終わっちゃうので、なんだか
「だから、何?」って言いたくなるような、後に何も残らない話って感じだった。まぁ、少女たち
が逃亡と出会いを経て成長して行く物語、なんでしょう。その辺が良くも悪くもラノベなんだろう
と思うけれども。キャラ造形なんかはいかにも桜庭さんらしくて、ラノベらしいキャラ読み小説
になっていると思います。特に白雪の美少女なのにとぼけた味のあるキャラは良かったですね。
結局、彼女は宇宙人だったのか、綾小路なにがしの幽霊だったのか、はたまた。中途半端に
SFやらファンタジー要素が入るので、ラストは何が何だか収集つかなくなっちゃった感があって、
そういう意味でも三つのエンディングはどれを取っても浮いているように感じてしまいました。
個人的には、ここまでぐっちゃぐちゃになったんだったら、もう最初のバッドエンドで良かった
んじゃないのかな、と思ったんですけどね。千晴とのハッピーエンドという二つ目が作品と
しては一番読後感が良いのかもしれないけど、どうも、カナと千晴が恋愛関係になるようには
私には感じられないんだよなぁ。私の希望としては、電脳戦士のお兄ちゃんが戻って来て、カナと
くっついて欲しかったりして。純粋な心を持ったお兄ちゃんのキャラが結構好きだったので
(どうも、キャラ設定が砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないに出て来た主人公の兄と被ってる
印象がありましたが^^;)。
どのエンディングがいいかは、その人の好みでしょうね。三つ提示されると、かえって
蛇足に感じて、私としてはこの際どれでもいいから、一つにしぼって欲しかったと思いました
けどね(出版社と作者に喧嘩を売ってる訳ではないよ^^;)。


どうも、桜庭さんのラノベ作品は私の感性にいまいち響いて来ない気がする。やっぱり、
こういう作品は二十代までに読むべきなのかなぁ。そう思うとちょっぴりヘコむ。
勢いのある作品なのは確かだと思います。でも、男性が読んでも面白いんでしょうか、コレ。
良くも悪くもラノベ。良くも悪くもガールズ小説。最初から最後までそんな印象でした。
積読棚には『ブルースカイ』も控えてるんだけど、それもそんな感じなのかな。うーん。