ミステリ読書録

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エラリイ・クイーン/「Yの悲劇」/ハヤカワ文庫刊

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エラリイ・クイーン「Yの悲劇」。

「気ちがいハッター家」と世間から噂された有名な富豪家の主人、ヨーク・ハッターがニューヨーク
の港で死体になって発見された。遺体のポケットからは耐水性のインクで書かれた遺書らしきもの
が入っていた。その事件の後、ハッターの屋敷でハッター夫妻の長男の子供が毒物の入った飲み物
を誤飲する出来事が起きる。素早い処置で一命は取りとめたが、直後に今度はハッター未亡人が
マンドリンで額を叩かれ殺害された。ハッター屋敷で起きた二つの事件はどちらも、現場の状況
から、ハッター未亡人の前夫との娘・ルイザを狙ったものであるように思われるのだが――
名探偵ドルリイ・レーンが挑む究極の完全犯罪の恐るべき真相とは――。


「えっ、今更!?」な本です。すみません、不朽の名作古典ミステリってことでこの書庫に
入れましたけど、初読です(恥)。先日の綾辻さんの記事で本書を未読と書いたところ、beckさん
から「今すぐ!今すぐ読むのだ!!愚か者!!」(勝手に一部脚色。beckさんはこんな失礼な
発言してません。すみません^^;)とのありがたい叱咤激励(?)のお言葉を受けまして、
これはもう、何が何でもすぐに即行直ちに読まねば!と焦って重い腰を上げ、ようやく積読棚から
日の目をみることになりました。
beckさん、おかげさまで読む気になれました。ありがとうございました^^

さすがに名作。散りばめられた伏線が綺麗に最後に回収されるレーンの推理過程はお見事。
それに行き着くまでの流れとしては若干回りくどさを感じたものの、細かい齟齬も見落とさず
一見奇妙に思えるレーンの行動にもすべて意味があったことがわかってすっきりしました。

ただ。す、すみません。事前に得ていたあるヒントと、途中で明かされたある要素から、



犯人、わかっちゃいました・・・。



ってな訳で、細かい伏線の見落としはいっぱいあったのですが、レーンの真相の論理は自分の
思っていた推理を確認するものに近かったです。薬棚のくだりは全く気づいてなかったのですが、
ルイザが触った犯人の顔の『感触』のこととか。多分、そうじゃないかな~と思ってたら
その通りでした。でも、マンドリンを凶器に選んだ理由には全く考えが及んでいなかったので
(そりゃ、※○○オンチの私には気付くのは無理ってもんです)、「そうだったのかー!」と
目からウロコの思いでした。なんでマンドリン?っていう疑問が見事に解明されてます。まぁ、
細かい部分がみんなある事実で片付けられちゃってるところはなんだかなーと思わなくも
なかったのですが。まぁ、個人的にはこういう犯人と動機って好みではないのですが(ゆきあや
さん、お見事です)、本格ミステリとしては十分面白く読めました。

翻訳の文章は相変わらず読むのが苦手で、なかなか上手く集中できない部分とかもあったのですが、
思った程は読みにくさも感じずに、登場人物もさほど混乱せずに読みきれました(もちろん、
何度かカバー折り返しの人物紹介は参照したけど^^;)。
こういう翻訳作品でもう一つわかりにくいなぁといつも思うのが、登場人物の身長とか体重。
海外ものだから仕方ないとは思うんだけど、フィートとかポンドで書かれてもどれ位かっていう
のがピンと来ない。できれば()書きでも脚注でもいいから、日本式のcmとかkgとかも載せて
欲しいなぁ。だって、この作品でもそれが結構重要なポイントだったので・・・。











以下、若干ネタバレ気味です。未読の方(そんなにいないかもしれないけどさ)は
ご注意下さい。












気になったのはやっぱり犯人がなぜ最後ああいう状況に陥ったか、ですね。それって、やっぱり、
レーンが細工したってことなのかな・・・。そう考えると、ちょっとやりすぎなんじゃないかと
思ってしまう。彼にそこまでの権利なんかないと思うんだけど・・・。犯人に『猶予を与えた』
ってところも、どうなのかなって思ってしまいました。犯人がやったことはいくら○○でも
正当に罰されるべきだし、個人の意見で酌量されるものではないと思うんです。それをやって
いいのは、裁判官だけなのではないかと思うし。レーンがもっと早く警察に犯人のことを伝えて
いれば、最悪の事態は避けられたのではないかと思うのですが。もちろん、そのことで一番後悔
しているのは本人だということもわかっているのだけれど。だから、○○が犯人の作品って
好きじゃないんですよねぇ・・・。後味が絶対悪いんだもの。
あと、ヨーク・ハッターの自殺はやっぱり、妻とハッター家自体に嫌気がさして耐えられなくなって
っていう、そのまんまだったってことなんですかね。彼の死も何かからくりがあるのかなーと
思っていたので、その辺りはちょっと拍子抜けしたところもありました。

ちなみに↑のネタバレ前の※の『○○』の中は『英語』オンチです。




















まぁ、でも、ようやく長年の課題と思っていたこの作品を読むことが出来て感無量です。
ミステリ好きとかいいつつ、こういう古典の絶対押さえておかなきゃいけない作品を
ほとんど読み逃してしまっているので、反省、反省。やっぱり、名作は名作たる所以が
あるなぁとしみじみ思いました。次の古典は何にしようかな。レーン四部作はやっぱり
読んでおかなくちゃダメかな。また皆様の情報とお薦めに従ってちょこちょこ海外作品にも
手を付けたいと思っております。ハイ(今年の抱負!を胸に・・・)。