ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鯨統一郎/「タイムスリップ忠臣蔵」/講談社ノベルス刊

鯨統一郎さんの「タイムスリップ忠臣蔵」。

22世紀、イヌが世界を席巻、人間は『DOG』と呼ばれるイヌ組織の支配下に置かれていた。
その原因となったのは、江戸時代、徳川綱吉によって発布された『生類憐れみの令』。犬を崇める
この法令を推進した吉良上野介が、忠臣蔵の討ち入りが失敗し、仇討ちによって殺されなかった為、
正史が歪められてしまったのだ。『DOG』に対抗する人間の有志たちが集まった『HIT』のメンバー
たちは、赤穂浪士たちに吉良を討たせる為に立ち上がり、タイムスリップで過去へと旅立った
――シリーズ第六弾。


タイムスリップシリーズ最新刊。といっても、出てからもう大分経ってしまっていますが^^;
なぜかマニアックなファンが多いらしく、なかなか予約が回って来なかったです。

うーん。今回も設定だけはよくもまぁ、こんなこと思いつくよなぁというトンデモないもの
でしたが、正直、シリーズの中では一番面白くなかった。今回、お馴染みメンバーのうららや
七海や薔薇ノ介本人たちが出て来ないことが一番の原因かも。今回活躍するのは彼女たちと
そっくり同じ名前の子孫(あるいは先祖?)たち。でも、名前は同じでも当然ながら人格は全く
違うので、いつものような軽いノリがなく、ギャグ要素も数える位しかないので、忠臣蔵
討ち入り計画をなぞっただけのような内容にいまいち乗り切れなかったです。前作ではじけ
過ぎちゃったから今回はおとなしめにしたのかなぁ。このシリーズはもう、何でもアリで
行くところまで行っちゃって欲しいくらいなんだけどな。そもそも忠臣蔵とか全く興味ないし。
好きな人が読むとまた違うのかもしれないけど、時代物がそもそも苦手な人間としては、
題材も興味ない上、いつものはじけっぷりが陰を潜めているとなったら、一体どこを読み所に
して良いのやら。
ただ、唯一吹き出したのは『ベルカは吠えないのか?』のセリフと、赤穂浪士48人(一人が
脱藩する前ね)をAko Bushiの頭文字を取ってAKB48って呼ぶところ。くだらね~と思いつつ、
笑っちゃうんだよね。こういう鯨さんのセンスが大好きさ。他にもちょこちょこは笑える要素が
あった気がするんだけど、今回記憶に残ったのはその二つくらいだったなー。やっぱり、いつも
に比べて笑いが少なかった分、物足りなかったです。

『DOG』の設定も荒唐無稽過ぎてねぇ。人間が犬の餌用に養殖されるなんて、いくらなんでも、
そりゃないでしょう、とツッコミたくなりました。カイと七海の濡れ場シーンなんかも、
想像するとかなりシュールで、気持ち悪かったです(未遂でしたが^^;)。

やっぱり、本来のうららや七海が出て来ないと盛り上がりに欠ける気がします。これを
シリーズ六作目としていいのやら。どちらかというと、シリーズのスピンオフって扱いの方が
いいような。次はもっと最高にはじけた作品(『釈迦如来』なみに)をお願いしたいです。