ミステリ読書録

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エラリイ・クイーン/「エジプト十字架の秘密」/ハヤカワ文庫刊

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エラリイ・クイーン「エジプト十字架の秘密」。

ウェスト・ヴァージニア州のアロヨという片田舎の丁字路で、小学校校長が首のない状態で
道標の柱にはりつけにされて発見された。道標の形もT、道路の交差する形もT、現場に犯人に
よって被害者の血で描かれた文字もT、そして、犯人が道標に遺体で描いた字もTであるという、
すべてにおいてTの文字が指し示されていることから、事件は<T殺人事件>と呼ばれた。
この事件に興味を惹かれた犯罪研究家のエラリイ・クイーンは、現場に急行、現場の状況に
執拗な興味を示すが、結局事件は解決を見ないまま数カ月が経過し、迷宮入りしてしまう。
しかし、事件から六ヶ月が過ぎ、ニューヨークに戻ったエラリイに大学時代の恩師から驚くべき
一報が届く。恩師の家のすぐ側で首を切られた死体が見つかったというのだ。急ぎ駆けつけた
エラリイが見たのは、トーテム柱にT字に括りつけられた首のない男の死体だった。現場の
状況はアロヨのT殺人事件と酷似していた。数百ヤードも離れた場所でなぜ――?エラリイ・
クイーンが難攻不落の連続殺人事件に挑む。


Yの悲劇の記事で多くの方にお薦めして頂いたので、積読棚から引っ張り出してきました。
いやー、苦戦しました。前半特に。翻訳の文章の読みづらさと、カタカナ名のとっつきにくさ、
いくつか起きる事件の人物関係の複雑さが相まって、なかなかストーリーが把握できず、
何度も挫折しかけてしまいました。前半読んでる時はなかなかまとまった読書の時間が
取れず、集中力が続かなかったのもいけなかったとは思うのですが・・・。一体、何度
カバー折り返しの人物紹介を参照したことでしょう・・・。結局全然覚え切れなかった^^;
読み終わって自分の中でなんとかぱらぱらと読み返して思い出しながら記事を書いてる状態です。
やっぱ外国ものとは相性が良くないんだなぁとつくづく思ってしまうなぁ。でも、秘かに今年は
ひと月に最低一冊は海外作品を読もう!と目標を立ててみたので、2月もなんとかクリア出来て
良かったです。ちょっと無謀かなぁ、私には、と思わなくもないですが^^;どこまで
続くかわからないですが(^^;)、とりあえず三月も何らかの作品には挑戦したいと思って
おります。海外ものをたくさん読まれている人にとっては「一冊かよ!」ってツッコミを
入れたくなる所だとは思いますけれど。私にとっては月一冊ってことは年間12冊!これは
私の読書人生では(大学時代の四年間を除いては)驚異的な数字なんですぅ・・・
(達成できればね←不吉)。


おっと、脱線。で、前半は非常に苦戦したのですが、今回も中盤からは不思議とすいすい
読めちゃいました。今回一番苦戦したのが一人目の犠牲者の検死審問のくだりと、二人目の
犠牲者の事件背景と人間関係。そこを過ぎた辺りから読みやすくなったって感じでした。特に、
一人目の被害者の三兄弟のうちの一人、メガラが帰って来た辺りから俄然面白くなりました。
メガラのキャラがエキセントリックで個性的だったからかな。で、三番目の犠牲者の殺人に
ガーン。予想はしていましたが、やっぱりこうなったか、という感じでした。そこから終盤
にかけてはぐいぐい読まされて、謎解きでまたしてもガツーンとやられた~って感じでした。
途中『読者への挑戦』にも「おー!」と思いつつ、あっさり次のページに移行しましたが、何か?
今回は犯人は全く予想していたのからはずれてました。あー、そっちだったかーーー!!と
思いました。くぅ。なるほど、みなさまがお薦めされるのも頷ける出来だと思いました。
チェッカーというゲームに馴染みがないので、その辺りの説明には全くピンと来なかったのが
残念ではありましたが。せめてチェスにしてくれよ・・・(ぶつぶつ)。
遺体がT字にされていた理由も、シンプルなだけに説得力がありますし、一つ一つの要素が綺麗に
解明されてすっきりしました。エラリイが犯人を断定するに至るきっかけの一つとなる、ヨード
チンキのくだりにも感心しました。そんな些細な齟齬を見落とさない推理に脱帽でした。こういう
細部にも目を配った所が、傑作だと評価されている所以なのかな、と思わされました。これも
『神は細部に宿る』っていうやつでしょうか。

推理に関しては全く不満はないのですが、動機はちょっと弱いかなぁと思いました。特にトマス
殺害に関してはかなり唐突な過去のエピソードが出てきたので、もうちょっと伏線らしきものが
あって欲しかったですね。
メガラの正体にはちょっとガッカリだったな~。面白いキャラだと思っていただけに、彼の過去
にはショックを受けました。ある人物への仕打ちも。
あと、意味深に出てきた太陽教とか裸体主義者の存在も、結局あんまり意味なかったのでちょっと
肩透かしな感じがしました。まぁ、間接的には関係があるのですが・・・。でも、一番の肩透かし
は、やっぱりタイトルかなぁ。エジプト十字架、関係ないじゃん!!ってツッコミたくなりました
(苦笑)。最初の殺人で新聞がつけた<T殺人事件>の方がよっぽどタイトルに相応しいんじゃ
ないかしら・・・。完全に国名シリーズの為のこじつけのような^^;あ、それが大事なのか(笑)。

エラリイとヤードリイ教授のトーテム柱のやりとりが面白かった。教授があくまでもトーテム棒
じゃなくてトーテム柱だといちいちエラリイに正すところに笑ってしまいました。ポールとポスト、
日本語だと棒と柱なら一目瞭然で間違えようがないですけど、英語だと微妙なニュアンスに
なるんですかねぇ(苦笑)。


まぁ、苦戦しながらも最後まで読んで良かったと思える作品でした。今回も本格ミステリ
面白さはこれでもかってくらい味わえました。ラストの謎解きを読んで全部が報われた~と
思いました。またそのうち、懲りずにチャレンジしたいと思います。