ミステリ読書録

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三浦しをん/「格闘する者に○」/草思社刊

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三浦しをんさんの「格闘する者に○」。

漫画大好きな女子大生・藤崎可南子は、漫画雑誌の編集者になるべく就職活動中。しかし、
出版業界の就職は狭き門。しょっぱなから躓きっぽなしの可南子の就職活動は前途多難。
更に上手くいかない就職活動の加えて、可南子の家庭では別の問題が勃発して――著者の
記念すべきデビュー作。


以前から気になっていた作品だったのですが、なんとなくタイトルに惹かれるものがなくて
スルーしていた作品。ラノベみたいな表紙だなぁと思いましたが、内容もかなり軽めの
ドタバタ青春ストーリーでした。しかも、これがしをんさんのデビュー作なんですね!全く
知りませんでした。
ヒロインは漫画大好きな女子大生可南子。漫画喫茶に行って5時間漫画を読みふけり、古本屋では
昔の少女漫画を発見しては大量に買いあさる。こ、これって、まんましをんさんじゃないの?
と、読んだ誰しもが思うんじゃないだろうか。彼女のエッセイを読んだことがある人なら確実に。
出版当時に読んだ人は違うだろうけど^^;可南子と彼女の弟の関係がまた、しをんさんと弟君
の関係に似てるし。家庭環境は全く違うけれど、間違いなく可南子はしをんさんご自身が投影
されたキャラだと思います。ただ、いまひとつ彼女の言動には共感できかねるものがあったの
ですが・・・特に、70を超えたお爺さんに本気で恋をしているところは全く理解不能・・・。
しかも、そのお爺さんが足フェチで、彼女の足にペディキュアを塗ったり、マッサージしたり
ってくだりは、完全にドン引き・・・。年上好きにも程があるだろう^^;そういえば、去年
読んだ星間商事株式会社社史編纂室の作中作でも中年のオッサンと若い男の子の同性愛が
出て来て、なんで相手が冴えない中年のオッサンなんだーーー!と思いっきりツッコミたく
なったのだけど、これはそれ以上にあり得ない。足フェチって要素がなければまだ二人の
関係は微笑ましいものにも思えるのだけれど・・・どうも、生理的に受け付けないものが
ありました。

可南子の就職活動に関しては、自分の就活を思い出して、懐かしい気持ちになりました。
私が就活していた年は女子の就職が超氷河期なんて言われて、本当に狭き門で厳しかったのです。
だから、早々に内定を頂いた会社にあっさり就職を決めてしまったのだけど、今思えばもう少し
いろいろ活動してみれば良かったなぁと思ったりもするのですが。まぁ、最初に就職した
会社の同期とは本当に仲良くなって、同期間の結束も固かったので、出会いという意味では
いい経験になりましたけどね。
でも、いくら『平服で』って言われても、ヒョウ柄のブーツはまずいでしょ、可南子ちゃん・・・。
エキセントリックな可南子のキャラは友達に一人いたら面白いかも。迷惑もたくさんかけられ
そうだけど^^;友達の仁木君や砂子ちゃんのキャラも個性的で良かったですね。でも、やっぱり
弟君のキャラが光っていたなぁ。高校生なのに、このカッコ良さは何だ。突然の家出にはびっくり
したけど^^;家出先でのくだりなんかは神去なあなあ日常に通ずるものがありますね。
しをんさんの作品を何作も読んだ後で読むと、この作品がいろんな意味で作者の原点であることが
わかります。ごくかるーくですが、しっかり同性愛も出てきますしね(苦笑)。

今回読んでいて一番嬉しかったのは赤石路代アルペンローゼが出て来たことだなぁ。
懐かしすぎる・・・(感涙)。可南子の漫画好きに関してはかなり共感出来るものが・・・。

読み終えてだから何だったんだ?って話って気もするけど、エキセントリックな女子大生の
就職を追ったドタバタ青春コメディとして面白く読みました。何にせよ、しをんさんのデビュー作が
読めて原点に触れられたのが良かったな。