ミステリ読書録

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メフィスト編集部編/「ミステリ魂。校歌斉唱!メフィスト学園」/講談社ノベルス刊

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メフィスト編集部編「ミステリ魂。校歌斉唱!メフィスト学園」。

事件は学園で起きている!凄腕ミステリ作家陣が放つ、謎と伏線!!
起立!ミステリの授業を始めます――学園ミステリ傑作集!(あらすじ抜粋)


というわけで続けて読んでみました。こちらは学び舎は血を招く メフィスト学園①
のシリーズ第二弾。こっちも②がついてない・・・^^;
実は前回の時はミステリ道場の方よりこちらのシリーズの方が全体的に出来が悪くてイマイチな
印象だったのですが、今回は反対にこっちのメフィスト学園シリーズの方が全体的に読み応えが
あったように思います。ただ、ラスト二作でかなりテンションが下がったのですが・・・^^;;
全く、浦賀さんはどこまで行っても浦賀さんだなぁって感想しかないです。ほんとに、ねぇ。
ウラガファンならこの作品も許容できてしまうのだろうか・・・私にはちょっと無理がありました
が・・・。メフィスト道場の倉知さんの作品を『キモミス』と評した私でしたが、本当のキモミスは
こちらでした・・・。これに比べたら、倉知さんのなんて可愛い、可愛い。こんな作品に全作品中
一番ページ数を割くそのKYっぷりは浦賀さんならでは。いや、浦賀さんだから許されるのかなぁ
(ほんとか?)。すべての作品が『学園』を舞台にしているのに、爽やかな作品がほとんどない。
これが『メフィスト学園』ならではなんでしょうね。そういえば、前回の感想でも『どの作品にも
好感の持てる学生キャラが出て来ない』と書いていましたっけ(苦笑)。でも、今回は前半の
作品には好感の持てるキャラも出て来ました(ラスト二つは最悪だったけど)。



以下、各作品の感想。


三雲岳斗『無貌の王国』
個人的には一番のヒット。やっぱり三雲さん面白い!!ちょっとダークでクールな主人公、久瀬君
がなかなか素敵キャラで気に入りました。もう一人の主人公藤宮さんとの意味深な関係も気になる
ところ。どうやら、この間出た『幻獣坐』の原型となる作品なのだそう(三雲さんのHP調べ)。
『王国』の黒幕に関しては案の定ではあったのですが、なかなかダークな展開ではらはら
しました。でも、最後は救いがあって良かった。『幻獣坐』図書館入らないんだよなぁ。
もう、この際買っちゃおうかなぁ。めちゃくちゃ気になってきた。


乾くるみ『≪せうえうか≫の秘密』
これもなかなか暗号ものとしては良く出来ていて面白かったです。ただ、はっきりいって、
乾さんの作品っていうより、高田崇史さんの作品を読んでるような気分でしたが^^;
高田さんの初期作品を彷彿とさせるような暗号ですね。歌詞を変えた逍遥歌に隠された
思いに胸が苦しくなりました。○○ない勇気。きっと、当時では心の中で思うことさえ禁忌と
されていたのでしょう。作者の祈りが通じる世の中でいて欲しいと思います。


石持浅海ディフェンディング・ゲーム』
最初戦時中のお話ってことでとっつきにくいかと身構えたのですが、意外や意外、これが
なかなか好みの作品でした。なんとなく『アイルランドの薔薇』の時の石持作品に近いような
印象というか。作風も展開もまるで違うのですが、なんとなく系統が。印南を襲った犯人の
正体も意外でしたし、全体のからくりの真相にも驚きました。タイトルも綺麗にはまっているし、
なかなか完成度の高い短編だと思いました。


浦賀和宏『三大欲求(無修正版)』
問題作。どうしたもんか、コレ・・・。1ページ目から読者(特に女性)をドン引きさせる
この才能は、ある意味天才的だと思います・・・。1ページ目のある単語のこれでもかって
くらいの連呼に、ほんとに読むのをやめようかと思いました^^;;でも、そんなのは序の口。
そこから怒涛のドン引き用語連発にドン引き妄想のオンパレードに、一体この話の終着点は
どうなってしまうのだろうと、戦々恐々・・・。先を読むのが怖くなりました^^;主人公の
自分勝手な思考回路はもはや凡人には理解不能。特にミドリを自宅に連れ込んだ以降の一連の
思考と行動と展開にはただただ唖然。同じ人間と思いたくない位嫌悪感を覚えました。ラストは
ラストで、あまりにも浦賀さんらしい『お約束』のアレが出て来て、もう、なんか笑うしか
なかったです。アンソロジーでここまで自分本位な作品を書いちゃうところが大物なのかな。
単にKY作家なだけか?←酷

 
矢野龍王『三猿ゲーム』
読書メーター見てたら、山田悠介っぽいって書いてる人が結構いたのですが、確かにそうかも
(『リアル鬼ごっこ』しか読んでないけど^^;)。歌野さんの『密室殺人ゲーム』シリーズ
なんかにも通じる不条理もの。でも、私は全く惹かれるものがなかったですが。浦賀さんとは
違った嫌悪感のある作品で、どの登場人物にも好感が持てず、読むのにイライラしました。
不条理モノが好きな人なら愉しめるのかもしれませんが・・・設定に無理がありすぎるし、
変にグロいし、好きじゃなかった。後味も最悪。もうこの人の作品は読みたいと思わないなぁ。
ラストのオチだけは、ソブケンっぽくて苦笑。そこでしたか。





ラスト二つはともかく、前半の三作は非常に楽しめました。特に三雲さんが読めただけでも
読んで良かったなー(盲目的三雲ファン)。『少女ノイズ』がようやく文庫化されましたので、
未読の方はこの機会に是非!(なぜか宣伝)。