ミステリ読書録

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山口芳宏/「100人館の殺人」/東京創元社刊

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山口芳宏さんの「100人館の殺人」。

大富豪の家で住み込みのメイドをやっている妹の結衣子から突然呼びつけられた神尾。「館で
恐ろしいことが起きる」と言われて、叔母から紹介された探偵の西園寺と共に妹の元に向かう
ことに。二人が到着した館では大掛かりなパーティの準備が進められていた。パーティが
始まり、館の主人が余興でマジックを披露している間に突然停電が起き、明かりが灯った後、
主人は何者かによって殴り殺されていた。犯人も犯行方法もわからないまま、第二の殺人
が――容疑者は館にいた100人すべて!?探偵によって驚愕の真相が明らかに――。


久しぶりに予約一番で回って来た山口さんの新刊(ってもういえないかな^^;)。どうやら
私が買わせたもよう^^;でも私の後にも予約入ってるんだからいいよね、別に(笑)。
山口さんらしいゆるいキャラ造詣にトンデモトリックで面白く読めましたが、ちょっと全体的に
ちょこちょこと腑に落ちない部分があって、不満が残りました。100人も容疑者を作った
ことで登場人物が多すぎてごちゃごちゃしたのがいけなかったのか。個人的には100人も
出す必要性は全く感じなかったというのが正直なところ。あっさり容疑者絞れちゃうし。
いくつか引っかかった場所があったのですが、表記のブレで気になったのが、シリアルキラー
『ゴースト』は老若男女誰でも殺すって設定にしておきながら、その後で子供はほとんど殺さないと
説明してみたり、そうかと思えばラストのシーンで四歳の女の子を殺した話が本人から出て来たり。
どっちかに統一してよって思いました^^;それに、本書の中で結衣子が涙を流すシーンは
度々出て来ていたのに(たとえばリ○○と会うシーンとか)、ラスト付近である人物との会話中に
泣いてしまった時に『泣くなんて何年ぶりのことだろう』と独白する表記が出て来たり。どうも、
全体的に設定にブレがあって、作者も自分で書いていて混乱していたのかな?と思えるような
誤表記が多くて、もやもやしながら読んでる感じでした。主人公神尾と詩織の関係も意味深な
書き方をしていたのに、ラストあっさりその辺りは流されているし。でも、神尾の詩織への態度
って、何気に酷いなって場面が何度もあったので、当然の結果だったのかも。登場人物が多いから、
それぞれのキャラのエピソードが作品に生かされないままなし崩しに終わってるのがなんだか
勿体ない感じがしました。探偵の道長とかも、なんでいたの?って扱いだったしなぁ。もっと
重要な役割を担っているのかと思っていたのに、かなり拍子抜けでした。山口さんって、探偵を
複数出すのが好きなんですかねぇ。大冒険のシリーズは二人いた意味があったから良かったけど、
本書に関しては完全に無駄な設定だったような気が・・・。

トリック自体もトンデモトリックなのは間違いないんだけど、さほどの驚きが得られた訳でも
ないし、スープ鍋に靴が入っていた理由ももう少しひねりがあると思ったんだけど・・・ちょっと
ガッカリでした。
うーん、全体的につめが甘いっていうか、100人の容疑者っていう設定だけが先走りしちゃった
かなぁって感じ。書き急いじゃったって感じなのかなぁ。いろんなことを詰め込み過ぎて、
収拾が巧くつけられなかったっていうか。

ラストで別のシリーズとのリンクを思わせるくだりにはニヤリとしてしまいましたけれど。
あっちのシリーズじゃなくて、私が読んでない方のシリーズみたいですが(一人は同じ人物だけど^^;)。
でも、大学生が尋ねた○○○はあっちのシリーズで初登場したキャラですよね。もう一つのシリーズ
でもまだ引っ張ってるのかーと驚きました。そっちも早く読みたいなぁ・・・上下巻がネックでね^^;;

なんか、記事を書いてみたら不満が多いな^^;微妙に黒べる記事になってるような・・・^^;
いやいや、普通に面白く読んでいたのですよ、ホントに。でも、なんだかすっきりしない作品
だったって感じでした(う、自分の記事が一番ブレがあるじゃんかー^^;←最低)。

しかし、この表紙はどうなんだろう・・・。この女の子って詩織かな。結衣子じゃないよね。
表紙見たら完全に竹本さんのアレみたいなメイド萌えミステリかと思うよねぇ。
え、間違ってない?^^;