ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

ギルバート・アデア/「閉じた本」/東京創元社刊

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ギルバート・アデア「閉じた本」(青木純子訳)。

交通事故で顔に酷い怪我を負い、眼球を失った人気作家ポールは、事故から四年の沈黙を経て、
自伝を執筆することを思い立つ。そこで新聞に口述筆記をする助手を募集した所、一人の青年が
面接に訪れる。ジョン・ライダーと名乗った青年は、ポールの面接に合格し、週末以外はポールの
家に住み込みながら仕事を始める。口述の仕事は順調に進んでいたが、ポールはふとした拍子に
ジョンに対して違和感を覚え始める。目の見えないポールは、ジョンの意図がわからず次第に
疑心暗鬼にかられて行き――会話と独白のみで綴られるサスペンスミステリー。


今年から始まった月イチ海外作品の時間がやってまいりました。なんとか5月も無事記事に出来て
良かった良かった。実は来月分はもう手元に借りてきてあります。来月はうまく行けば早々に
記事に出来るハズ・・・(た、多分^^;)。
今月の一冊は、海外作品の師匠・ゆきあやさんから教えて頂いて気になっていた作品。本当は
ゆきあやさんが読んでいた創元推理文庫バージョンが借りたかったのだけど見つからず、単行本
で借りました。でも、なかなか装幀が好みだったので、こちらでも良かったかも。文庫版の表紙も
かなり好みなのですが。
タイトルに『本』が入っているのも惹かれた理由なのですが、もう一つはすべての文が会話と
独白だけで構成されているという点。海外ものの文章にどうにも苦手意識がある私としては、
なんとも読みやすそうな設定に、これなら苦もなく読めるのではないか、と単純ながら飛びついた
次第なのでした。そして、実際これが本当に読みやすかった(そりゃそうだよね)。もちろん、
盲人の作家が、自伝を書く為に雇入れた口述筆記の助手の青年の言動に次第に疑問を感じて行く
くだりがなかなか緊迫感があって読ませてくれたというのも大きい。ただ、ミステリとしては
それほどのカタストロフがある訳でもなく、割と予想の範囲内の結末。その辺りは拍子抜けした
ところもあったのですが、巧いな、と思ったのは会話と独白のみで構成されていた理由と、独白
部分の字体の不自然さの理由。この字体、今まで見たこともないような奇妙な歪み方をした字体で
書かれているのです。なんだかちょっと気持ち悪いなぁ、と思いながら読んでいたのですが、
ちゃんと意味があったとわかり溜飲が下がりました。会話と独白のみで構成される理由は
言われてみると至極当然な理由ではあるのですが、あんまりそこに頭が行っていなかったので、
ああ、そうか~と妙に納得して感心してしまった自分がいました(最初に気付けよ^^;)。
登場人物が極端に少なく、ほとんどが会話で構成されている為、二人舞台を観ているような印象
を受ける作品でした。恩田さんっぽいというか。マヤちゃんなら一人舞台でも出来そう(笑)。




以下、ネタバレあり。未読の方はご注意願います。












ジョンの言動は明らかにいろいろとおかしなことがあるので、何か裏がありそうだなぁとは思って
いたのですが、得体の知れないジョンに対して不審と恐怖を覚えて行くポールの心理描写が巧く、
はらはらしながら読めました。ホラーとしてはそれほどの怖さはなかったのですが。ただ、
ジョンの作る料理を食べたポールが『変わった味がする』と言っていたので、そこにも何かの
仕掛けがあるのかな、と思って期待していたので、何の伏線でもなかったと知ってちょっと
ガッカリでした。ミステリで良くあるちょっとづつ毒を食事に潜ませて・・・ってやつなのかな
ーとか勘繰っていたので^^;ジョンの動機に関しては、かなり陰惨な事実が隠されていました。
こんなことされたら、そりゃトラウマになるよ。こういう犯罪は本当に許しがたい。だからと
いって、殺されていいとまでは思わないけど・・・でも、自業自得だと思ってしまうところは
ありました。そんな犯罪行為を犯しておきながら、作家として最高の栄誉を受けて華々しい人生を
送るなんて。ジョンの立場に立ってみたら、自分のその後の人生と比較すれば、恨みの対象に
なるのは当然でしょうね。こういう犯罪は本当に許しがたいし、読んでいて暗い気持ちになり
ますね・・・。海外では多そうですけども。それにしても、殺人の方法がなんとも陰気というか、
クローゼットの中で○○死ってのに目が点。ただ、テープで目張りとかしたら、絶対その痕跡が
残って殺人ってばれると思うんだけど・・・^^;その辺りはさらっと流されていたのはちょっと
気になりました。まぁ、どっちみち被害者の○○からばれちゃったんでしょうけどね。













なかなかサスペンス溢れる展開で面白かったです。こうして毎月読んでいけば海外作品にも
抵抗なくなって行く・・・といいな~~~(希望的観測)。
ゆきあやさん、ご紹介ありがとうございました^^

ちなみに来月の一冊は、ミステリ好きならばみんなが大好きなカ行の作家のAから始まる作品
(の予定)。結構読んでる人は多いのではないかと思うのですけれど(有名作)、私は未読で(恥)
以前から読んでおかなきゃと思っていた作品。
わかるかな?(選択肢が多すぎるか?^^;)