ミステリ読書録

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万城目学/「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」/ちくまプリマー新書刊

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万城目学さんの「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」。

小学一年生の元気な女の子、かのこちゃんは、半年前ふらりと家にやってきたアカトラの猫に
『マドレーヌ』と名前をつけた。マドレーヌはかのこちゃんの家で飼っている年老いた柴犬の
玄三郎と夫婦になった。猫と犬と人間が織りなす、ちょっぴり不思議で切ない物語。


ようやく回って来ました。楽しみにしていたかのこちゃん。いやいや、良かった~。これ好き!!
犬猫好きには間違いなく楽しめるであろう内容ですし、なんといっても、キャラクターがとっても
良い。特に、小学一年生のかのこちゃんのキャラが突出していると思う。難しい言葉を覚えるのが
大好きで、6歳らしい愛らしさと同時に、6歳らしからぬ鋭い慧眼を持っていて、ちょっと変わった
女の子。かのこちゃんが食いつくポイントが人とちょっとズレていて面白い着眼点を持っている
ところが好きでした。「鼻てふてふ」をやっていたすずちゃんを見初めて「友達になりたい」と思う
ってところが笑えます。二人はまさに「ふんけーの友」。すずちゃんもちょっとズレた面白さの
ある子なので、二人の会話にはついついぷぷぷ、と笑ってしまいました。茶柱ならぬ○ン柱の
くだりも笑ったなぁ。光景を想像すると・・・下品なんだけど、なるほどねぇ~と妙に納得して
しまうところが(苦笑)。子供の柔軟な発想だなぁって思う(いや、考えたのはマキメさんなん
だろうけどさ^^;)。子供目線で考えられる人なんだなぁ、マキメさんって。

マドレーヌ夫人の冒険の部分も楽しかった。マドレーヌ夫人の夢オチで終わっていたらがっかり
したところでしたが、夫人の冒険がきちんと現実に反映されていて、夢じゃなかったとわかって
嬉しくなりました。万城目さんは、ファンタジックな要素を自然に作品に盛り込むのが巧いですね。
かのこちゃんとすずちゃんの別れにマドレーヌ夫人の冒険が一役買っていたとわかるくだりも
良かったです。かのこちゃんとマドレーヌ夫人が一緒にいるシーンは作中にそんなに出て来ないの
ですが、両者の距離感とか関係はとても好きでした。
もちろん、マドレーヌ夫人と夫で柴犬の玄三郎さんの夫婦愛も素敵でした。犬と猫が夫婦って設定が
面白いですね。ゲリラ豪雨の夜に出会った運命の二匹。マドレーヌ夫人(その時は名前はついて
いなかったけれど)のために、苦手な雷雨にもめげずに自分の犬小屋を明け渡してあげる玄三郎
さんの粋な行動にシビレました。か、かっこいい・・・。そして、そんな夫の為に、人間になった
マドレーヌ夫人が起こす行動にもじーんとしちゃいました。なんか、人間の夫婦以上に強い結び付き
を感じる犬猫夫婦でした。それだけに、ラストは本当に切ない。動物もののラストって、やっぱり
こうなっちゃうんだなぁって、それやられたらどうしたって感動せずにはいられないじゃないって、
こはちょっとズルさを感じたりもするのだけど、やっぱり作者の術中にまんまとはまってうるうる
来てしまった。
すずちゃんとかのこちゃんの大人の別れのシーンも良かったな。6歳の女の子同士のお別れの
会話とは思えない『ござる』言葉の応酬に、ほのぼのしつつ、彼女たちの心中を思って切ない
気持ちになりました。ちょっぴり変わった女の子同士、とってもいいコンビだと思ったので、
もっと一緒にいて欲しかったな。二人が例えば中学生くらいになったらどんな会話をするのか、
想像するだけで笑えてくるのにな。残念。いつか、また二人が再会して友達付き合いが再開すると
いいなって思う。

鹿と話せるかのこちゃんのお父さんは、やっぱり鹿男あをによしの主人公ってことで
いいのかな。そうだと嬉しい。お母さんがイトさんだったらもっと嬉しいんだけど。それっぽい
描写はなかったから、それはさすがに考え過ぎかな^^;

とっても温かくて切なくて、可愛らしい大人の為のジュブナイルって感じでした。読み終えて、
ほわほわと温かい気持ちになりました。新書版サイズってところに驚いたけど^^;
っていうか、ちくまプリマー新書って、初めて読んだような・・・。学術書っぽい体裁ですね。
かのこちゃんのキャラとはまた会いたいなぁ。子供らしさと大人びた達観したところが同居して
いるキャラ造詣が、ちょっとちびまるこちゃんを彷彿とさせました。とっても愛らしくて、
ほのぼのしちゃいました。一緒にいたら飽きないだろうなぁ。こういう子供が欲しい(笑)。

犬好き、猫好きさんには間違いなく楽しめる一冊ではないかな。あっという間に読めちゃうので
ちょっと物足りなさはあるかもしれませんが、愛と優しさに溢れた良作でした。オススメ。