ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貫井徳郎/「明日の空」/集英社刊

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貫井徳郎さんの「明日の空」。

日本人の両親から生まれながらアメリカ育ちの栄美は、父親の仕事の都合で日本に帰国し、新たな
高校生活をスタートさせることになった。日本語が英語よりも不得意な栄美は、クラスメートたち
と話す時も、まだ戸惑うことが多かった。そんな栄美は、クラスの中心的存在であり女の子の憧れの
的・飛鳥部君に惹かれ始める。英語をきっかけにして、彼と急接近した栄美だったが、いざデートの
計画を立てると、必ずその度に不自然な邪魔が入るようになった。一体誰が二人の仲を引き裂くような
ことをしているのか。しかし、その謎は解けないまま、栄美は大学生になった。そして、栄美の前に
なぜか栄美のピンチを何度も救う不思議な男が現れる。彼の正体は一体何者なのか。そして、栄美
は衝撃の真実を知ることになる――著者十年ぶりの書き下ろし長編。



手にしてその薄さにビックリしました。他の作家ならそこまで驚かないかもしれませんが、ここ
数作の貫井作品の傾向から行くと、破格の薄さ。それもその筈、たったの170ページしか
ありません。読みやすいし、読むのが速い人なら1時間ちょいで読めちゃうんじゃないで
しょうか、コレ(私はもう少しかかりましたが^^;)。
ページ数がそんななので、内容もいつもの作品に比べたら格段に読み応えという点で劣ります。
三章立てで構成されており、一章目、二章目はそれぞれに全く独立したお話のように書かれている為、
一体この二つの章がどうやって繋がるんだろうと予測出来る人はあんまりいないのではないで
しょうか。私も、三章を読んでなるほど、そういう風に繋がっているのか!とようやく溜飲が
下がりました。この一発の仕掛けを際立たせる為に、あまりごちゃごちゃと細いエピソードを
入れずにシンプルに書かれたのかもしれません。ただ、それだけに人物造詣までもが薄く、いま
ひとつ誰に対しても感情移入できなかったのは痛い。三章の真相はもっと本来ならば感動出来る
筈なのに、何か薄っぺらい印象で、さほどの感慨も持てずに終わってしまった。確かにある人物
に関して大きく騙されていたことは確かなのですが・・・。ただ、この真相、某作家のある
作品と被っているところがあり、いまいち新鮮味が感じられなかったのが痛かった。例えば、
そのある人物の栄美とのエピソードをもう少し膨らませて書かれていたら、もう少し三章の
印象も変わって来たのではないかと思うのですが・・・。一章の登場の仕方が意味深すぎて、
その行動の意味するところがほとんど想像した通りだったので、その辺りはもう少しぼかした
書き方をして欲しかった気もします。
個人的には二章のユージとアンディの友情物語が一番好きだったかな。ユージは栄実の同級生
の誰かなのかな、とかいろいろ想像していたのですが・・・この辺りはあっさり予想を覆され
ました^^;真相を読んで、もう一度読み返してみるとなかなか意味深な書き方をしている
ことに気付くのですが。でも、若干アンフェアに感じないでもないけれど・・・。
猫の飼い主探しに奔走するユージとアンディの姿にほのぼの出来ました。その後でも続く友情
関係も良かったです。栄美パートはいまいち、栄美のキャラ造詣が中途半端なせいで感情移入
出来なかったんですよね^^;飛鳥部君に関しては、案の定なキャラだったなぁ。

貫井さんにしては全体的に重さが足りなかったかなぁって感じ。『乱反射』のあの圧倒的な
人間心理に長けた筆力が、今回は影を潜めてしまった印象で、残念でした。もちろん、青春
ミステリを狙って書かれているのだから、軽さを全面に出した作品なのもわかるんだけど。
それにしても、170ページは少なすぎじゃないだろうか。もう少し、全体的に肉付けしたら
もっと仕掛けが際立って、青春小説としてもいい作品になったんじゃないだろうか。って、素人
がエラソーにすみません^^;大好きな作家なだけに、期待が大きすぎたのか、ちょっと物足りなさ
を感じてしまいました。面白かったんだけどね。

でも、アンディの『明日は晴れだと思っている方が楽しい』という考え方は好きだったな。
きっと晴れるって思ってたら、何かいいことありそうだもんね。アンディのような黒人が言う
からこそ、重みがあるのだと思いました。前向きに考えることが、大事なんだよね(つい、何でも
ネガティブに考えがちな人間なので、反省)。
うん、今日が雨でも、明日はきっと晴れるね(予報は、曇りか雨みたいだけど^^;)。