ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

山田風太郎/「青春探偵団」/ポプラ文庫ピュアフル刊

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山田風太郎さんの「青春探偵団」。

とある町の北はずれ、城山の麓にある霧ガ城高校には、男女二つの寮がある。山の東側に男子寮の
青雲寮、西側に女子寮の孔雀寮。そこの寮生で霧ガ城高校の同級生、秋山小太郎、穴沢早助、
大久保大八、織部京子、伊賀小笹、竹ノ内半子ら6人の男女は「殺人クラブ」という探偵小説愛好会
に所属し、探偵小説の批評やトリックの新案、いじわるな先生や舎監にしっぺがえしする方法などを
日々討論している。カンニングのうまいやり方を考えたり、脱獄――夜、寮を抜け出す行為を
繰り返したりして学校生活を送っている6人は、ふいに殺人事件に巻き込まれることとなり――
(あらすじ抜粋)。


返却期限ギリギリになってなんとか読み終えて当日返却したため、手元にもう本がありません。
手元に本がない状態で感想書くのって不安なんですよね~^^;でも、仕方がないのでなんとか
覚えてる限りで書きたいと思います。
さてさて、山田風太郎さんといえば時代小説の大御所。時代ものが苦手な私が手に取ることは
この先なさそうだなぁと思っていたのですが、本書を某古本屋の文庫コーナーで見かけて作風に
ビックリしつつ面白そうだったので気になってチェックしていたところ、隣町図書館で発見。
初めて読む山田風太郎がコレでいいのかと思わなくもなかったのですが(アシモフの時と一緒^^;)、
まぁいいか、と手にとってみました。でも、私みたいな人って結構いると思うんだよね。なんせ、
ピュアフル文庫からの復刊だし。YA世代の子たちなんかが結構題名に惹かれて手に取りそうです。

でもって本書。確かに書かれた時代を考えると古臭さを感じるところも多いのですが、その
前時代がかった感じがまた懐かしい感じがして良かったですね。一昔前の熱血青春ドラマって
感じで。そのままドラマ化出来そうな感じ。登場人物も個性的で生き生きしていて良かった
ですね。<殺人クラブ>の主な登場人物は以下のような感じ(メモしておいた巻末の米澤さんに
よる紹介を抜粋)。ちなみに<殺人クラブ>とは、探偵小説愛好者たちが集まって探偵小説の
批評やら学校の先生の悪口やら、いろんな話題をわいわいと語り合うクラブのことです。

美男子にして霧ガ城高校始まって以来の麒麟児、秋山小太郎
柔道二段の大男だが、どうにも見かけ倒しで臆病な大久保大八
自他共に認めるあわて者のトラブルメーカーの穴沢早助
モデルにしたいような美人で優等生だが、いたずら者の織部京子
柔道初段、体重十六貫三百、女豪傑の竹ノ内半子
世話やきで、心配性で、おちゃっぴいの伊賀小笹

この中だとやっぱり中心的な人物の秋山くんがカッコよくて好きなキャラでしたね。頭がいいだけに
悪知恵を思いつく才能にも長けていて、かなりやんちゃな行動に出たりするのですが、最終的に
みんながピンチになる時に頼りになるのもやっぱり彼なのですね。基本的に殺人クラブ内の
男女間で色恋沙汰というのはないのだけど、ラストでちょっぴりそういう要素も出てきて
ニヤリとしました。やっぱり、この年代の青春小説には恋愛要素も入っていないとね(笑)。
肝心のミステリ部分は、正直瞠目すべきところはほとんどありません。でも、ミステリとして
よりも、高校生たちのハチャメチャでぶっ飛んだ青春小説として楽しく読めたのでそれで十分
満足。青雲寮(男子寮)の屋根裏に密かに男子メンバーたちが作った秘密の部屋(『天国荘』)の
存在がすごく羨ましかったな。自分たちだけの秘密の部屋で、誰にも邪魔されずに気の合う友人たち
と好きなことだけやって過ごせるなんて、なんて贅沢!20世紀少年の『秘密基地』なんかもそう
だけど、子供の頃って絶対そういう秘密の隠れ家みたいな場所を作って遊ぶものですよね。ただ、
ここに出て来る『天国荘』は、それより更に手が込んでいて快適な空間になっているのがすごい。
高校生がそこまでやるんかい、とツッコミたくなっちゃいました(苦笑)。寮の押入れの天井から
上がって行くってのもワクワクしました。

個人的にはミステリ色が強いものより、泥棒と殺人クラブの男子メンバーたちが鉢合わせしちゃう
『泥棒御入来』みたいなドタバタ色が強いものの方が楽しめたかも。泥棒とメンバーたちのかみ
合わない会話が面白かった。『天国荘』存続の危機を描いた『屋根裏の城主』も面白かった。
これは割とミステリの王道的な消失トリックが使われていて、書かれた当時は結構斬新なアイデア
として読まれたのではないでしょうか。今となっては使い古されて瞠目するほどのトリックとは
言えなくなってしまっていますが・・・^^;ラストの砂の城も、砂浜に死体を埋めた殺人集団と
その砂浜に陣取りをしようとする殺人クラブのメンバーとのお互いの目的のズレ具合が絶妙で、
両者の間の手に汗握る攻防が面白かったです。こういう作品は映像で観た方が面白そうだなぁ。
ドラマ化したら面白そうだけどな。破天荒な殺人クラブのメンバーたちの言動は、金城さんの
ゾンビーズをちょっぴり彷彿とさせました。やってることはめちゃくちゃなんだけど、それが
全然不快に感じないし、生き生きしてる彼らの言動に、こちらまでワクワクしました。


山田風太郎さんがこんなYA向け作品を書いていたというのは驚きましたが、とても楽しく読める
一冊でした。こういった作品が、中高生たちに向けたジュブナイルミステリーとして復刊された
ことは喜ばしいことですね。広く読まれて欲しいと思います。