ミステリ読書録

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小路幸也/「オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン」/集英社刊

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小路幸也さんの「オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン」。

家族が増えてますます賑やかになった堀田家。愛らしい二人の赤ちゃんに一族みんなが癒される
日々を過ごしていた。そんな堀田家に、元刑事の茅野が甥の靖祐を連れてやって来た。靖祐は
サークルの夏休み合宿で奇妙な本と遭遇した為、ひどく怯えているらしい。靖祐によると、99
編しかない筈の百物語の本に、100番目の怪談が存在し、その上、その物語の主人公が同じ
靖祐だったというのだ。これは一体どういうことなのか。勘一は謎を解く為、靖祐の大学のある
静岡に飛んだ――下町の老舗古本屋『東京バンドワゴン』を舞台に繰り広げられる心温まる
ハートフルストーリー。シリーズ第五弾。


バンドワゴンシリーズ最新作。蔵書が少ないせいか、回って来るのに結構時間がかかりました。
今回は新しく増えた二人の赤ちゃんのお世話で家族みんなが大忙し。勘一さんも我南人さんも
みんな愛くるしいかんなちゃんと鈴花ちゃんにメロメロなのが微笑ましいです。毎度ながら、
誰一人悪人が出て来ないし、すべてのお話があり得ないくらいの大団円。やりすぎな位の
ハッピーエンドは到底リアリティがあるとは言いがたいのですが、このシリーズならば
許せてしまうから不思議です。この優しくて温かい下町人情溢れるエピソードに、心が
洗われるというか。一服の清涼剤みたいなシリーズですね。正直、小路さんの最近の作品
はみんな似たりよったりな印象で食傷気味になっていたので、新刊が出ても食指が
動かずにいたのですが、このシリーズだけは絶対はずさないことがわかっているので、
今後も読み続けるつもりです。
巻数が進むごとに堀田家を取り巻く登場人物がどんどん増えて行くので、ちょくちょく
「これ誰だっけ?」現象が起きるのは玉に瑕ですが、冒頭に人物相関図が入っているので
有り難いです。今時こんな大家族いるんかい、とツッコミたくもなるけれど(しかもほとんど
の人物が容姿端麗で性格がいいという・・・)、人が増える毎にシリーズの世界がどんどん
広がって人の輪が大きくなって行くところがこのシリーズのいいところですから、これからも
どんどん増えて行くのでしょうね(今回結婚したカップルに子供が出来たりもしそうだね)。

今回唯一の心配事は我南人の元気のなさでしたが、予想した通りの事情が隠されていました。
どうなることかと思いましたが、その心配を超える大きな幸せと感動を与えてくれるところが
このシリーズならでは。ラストの展開にはさすがにご都合主義過ぎるだろと思ったけど、その
ハッピーを引き寄せてしまうのが我南人という人物なのだろうなと思えば納得できないことは
ない。我南人の『LOVEだねぇ』を聞くと、やっぱりこちらまで幸せな気分になるしね。
今回一番の成長株は研人でしょう。いつの間にこんなに逞しくなっていたのやら。彼は絶対に将来
いい男に成長するだろうな。メリーちゃんも今からしっかり研人のことを捕まえておかないと
苦労しそうだね。
そして今回もまた藤島さんのいい人っぷりには脱帽でした。ほんとに、ここまで出来た人間が
世の中にいるもんかね。でも、私もこのまま行くと、彼は一生独身になってしまいそうな気が
するよ・・・たまには、自分の為にわがまま言ってもいいと思うんだけどな。個人的には、
美しく成長した花陽が猛烈アタックするんじゃないかと(そして、彼もメロメロになってしまうの
じゃないかとも)思うんだけどね。どうなるんでしょうね。それはもう少し先の未来のことで
しょうけれどね。

奇をてらわない、本当にストレートな下町人情物語。LOVEいっぱいのラストに、心が温まりました
(ミステリとしては、相変わらずですが^^;)。そろそろドラマ化の話はないのかしら。
ますます賑やかになった堀田家、次に会えるのはいつでしょうか。