ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

門井慶喜/「血統(ペディグリー)」/文藝春秋刊

イメージ 1

門井慶喜さんの「血統(ペディグリー)」。

祖父、父ともに著名な日本画家で、自らも日本画を志した時島一雅は、血筋へのプレッシャーから
道をはずれ、ペットの肖像画を描く仕事で糊口をしのいでいる。ある時、純白のダルメシアン
新種犬を開発中という「自称ブリーダー」森宮利樹と知り合い、森宮の事業へ出資することにした
一雅だが、そこには大きな陥穽が待ちうけていた――(あらすじ抜粋)。


書店で平積みになっているのを見かけた時に、すごく好みそうだと楽しみにしていた門井さんの
新作(とはもう言えないかもしれませんが^^;)。
読み始めはペットの肖像画を生業にしている時島の絵画制作師としての仕事を追った連作集
なのだと思い込んでいたので、読み進めて物語がまったく違った方向に進むのでかなり戸惑い
ました。ほとんどの人が予想外の展開に面食らうんじゃないのかなぁ。新種の犬を開発した森宮
の開発方法を知って、ものすごい嫌悪感を抱いていたのだけれど、彼のしたことは、やはり神様が
許さなかったということなんでしょうね。彼の身に起きたことは天罰というと語弊があるかも
しれませんが、人道にもとることをした報いを受けたとしか思えなかったです。真っ白な
ダルメシアンは、それは綺麗だろうけれど、人工的にアルビノを創り出すなんて、やっぱり
何か間違ってる。しかもそのやり方が○○交配っていうんだから、鬼畜の沙汰としか思えない。
なんだか嫌な話だなぁと思いながら読んでいたら、物語はさらに嫌な方向へ。まさか○○病の
話になるとは・・・。主人公の身の上と犬の新種交配を絡めて『血統(遺伝)』というテーマを描き
たかったのでしょうが、どうも上手くそれが伝わって来なかった。そもそも、主人公の性格が
全く好感が持てなかったのもかなりの減点要素。父親に対しても、婚約相手に対しても、なんだか
情が全く感じられないし、彼自身の主張もイマイチ何が言いたいのか伝わって来ないし。読んでて
すごくイライラしました。特に婚約相手が妊娠した時の態度とか酷過ぎる。女性を何だと思って
いるんだ。相手のあかりの人物造形もあまりきちんと描かれていないし、内面描写なども終盤
までほとんど出てこないので、彼女がそれに対してどう思っているのかもわからないのも不満
でした。終盤の主人公とのあるシーンで、彼女がとても強い意志を持った女性だということが
わかって、やっと少し溜飲が下がったけれども。それを受けて主人公もようやく少し改心した
ところは良かったのですが、時すでに遅し・・・。どこまでも救いのないラストに、読み終えて
どんよりとしてしまいました。

ミステリーという意味では、白いダルメシアンがなぜ○○○にかかったのか、という部分が
一番核になる部分でしょうか。最後の手紙の部分まで、その真相が描かれないので、あれって
どうだったんだろうと気になっていたのですが、そこはちゃんと謎解きがあってすっきりしました。
なるほど、あの部分が伏線だったんだな、と感心できるところもありましたし。ただ、そこを
売りにする程の瞠目はないし、タイトルの『血統』の掘り下げ方も中途半端だし、人間関係の
部分もとってつけたような扱いだし、一体何を狙って書きたかったのかいまひとつ伝わって
来なかったです。最初に予想していた、絵画制作師としての仕事を追う形にした方が面白かった
んでは・・・と思っちゃうのは素人の浅はかさなのか。芸術に関する描写力はさすがなのですが、
今回もやっぱり無駄に難しい単語が頻出するところにはいちいち引っかかりました。わざわざ
難解な言葉を使わなくてもいいと思うのになぁ。こんな言葉、見たことないよって単語が常用語
のような扱いで使われるのはいかがなものか。それに、一雅の父親の名前、結局何て読むのか
わからなかったんですけど・・・最初に出て来た時にさらりと読み逃してしまったせいかも
しれませんが、せめて一章ごとに一回くらいは読めなそうな人物名にはルビをふって欲しい・・・。

『ペディグリー』って、『血統』って意味なんですね。初めて知りました。ってことは、あの
有名な『ペディグリー・チャム』は『血統・チャム(チャムって何だ?^^;)』って意味だった
んだね。知らなかったぁ。血統書つきのとかって意味になるのかなぁ。


門井さんの作品って、どうも出だしは面白いのに、終盤のたたみ方が上手くないというか、
なんでそっちの方に進んで行くの?って感じのものが多いような。設定とか着眼点は面白いと
思うので、今後も読んで行きたいとは思っているのですけれどね。
味覚で芸術作品の真贋を見極める神永シリーズの続きがまた読みたいなぁ。

ちなみに、犬好きさんが読んだら多分、相当憤る内容だと思います・・・特に森宮のやった
ことは、許しがたい冒涜だと感じるんじゃないでしょうか。犬好きさんのご感想を聞いてみたいです。