ミステリ読書録

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恩田陸/「土曜日は灰色の馬」/晶文社刊

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恩田陸さんの「土曜日は灰色の馬」。

小説家・恩田陸がお気に入りの小説・マンガ・映画などをテーマに自由奔放に語ったエッセイ集。


恩田さん久々のエッセイ集。今回は本について語っているらしいと聞いて楽しみにしていたの
ですが、残念なことに恩田さんが語っている本のほとんどが読んだことがないものばかり
だったので、ちょっと入って行きにくかったです。しかもジャンルもいまいち私が読まない
タイプの本ばっかり紹介されていたので、読みたいという気持ちになれる本もあんまり
なかったのが痛かった。ただ、恩田さんの個々の作品の読み取り方はやっぱり作家ならでは
だなぁと思えるところが多かったです。私だったら同じ本読んでも恩田さんのように深く
読み取ることは出来ないだろうなぁ、と思いました。
「『恐怖の報酬』日記」でも書かれていて面白いと思ったのが、旅に行く時に持って行く本に
ついて書かれたくだり。私も旅行に行く時は必ず本を持って行くけれど、何を持って行くか、
これが結構選ぶのが難しい。まぁ、私は恩田さんのようにいろんなジャンルの本を混ぜるって
ことはあんまりしなくて、大抵は当然の如くにミステリーなのだけれど。ただ、いろいろ
考えて何冊か持って行っても、ほとんど読めずに持って帰ってくるのが定石なのですが。
なぜか旅先になると、なかなか本が読めなくなるんですよね、私^^;旅行の興奮が邪魔
して集中出来なくなるのかな。もちろん、友人と一緒にいるから一人になれないってのも
大きいのだけど。でも、海外旅行の時の長い飛行機の中とかでもあんまり進まない。読もうと
ページを開いても、なんだか気が乗らなくて結局寝てしまうってパターン。ただ、以前一度
フランスに行った時、本書でも挙げられていた玉村豊男さんの『パリ・旅の雑学ノート』を
持って行ったら、すごく面白くて、あっという間に飛行機の中で読んでしまったことが
ありました。やっぱり、行く予定の土地に関する本を読むのが、これからの旅に対する期待感
も高められて一番良いのかも。

映画やドラマについて語られた部分も、ほとんど観ているものがなかったのであんまりピンと
来なかったのだけど、ドラマの『24』についてのエッセイはすごく恩田さんらしくて面白かった。
恩田さんはあの人気ドラマ『24』がどうしても最後まで観れないのだそう。制作側の『こう
創って、こう演出してやろう』という意図が画面から透けて見えて来てしまうそうで。確かに、
そういう制作側の『あざとさ』が見えちゃうと興冷めになっちゃう時ってありますね。私自身は
一度も観たことがないので、『24』がそうかどうかはわかりませんが。でも、一番恩田さん
らしいな、と思ったのは、『24』の中には『おはなしの神様がいない』というところ。恩田
さんの持論は、面白い作品には『おはなしの神様』が宿っているものなんだそう。なんだか
ちょっとくすりとしてしまうような子供っぽさを感じる持論なのだけれど、すごく説得力がある。
確かに、人を惹きつける物語にはそういうモノが存在するような気がする。それで、私が恩田
作品にいつも惹かれる理由がわかった気がします。不条理で訳わかんない話でも、なぜか最後
まで読ませる吸引力がある。きっと恩田さんの書く物語には『おはなしの神様』が宿っている
んでしょうね。

映画でも本でも今ひとつピンと来なかったのですが、唯一マンガについて書かれたくだりだけは
やたらにテンションが上がりました(笑)。私もとにかく小説を読むようになるまでは、マンガ
だけで生きてきたような生活してましたから(苦笑)。恩田さんとはちょっと世代がズレている
ので、知らないマンガも多かったけれど、マンガに対する拘りや情熱には実に共感出来ました。
うちは両親が共働きだったので、親が子供をかまってあげられないのに気が引けたのか、なぜか
やたらにマンガ雑誌を買い与えてくれる家だったんですね。だから恩田さんみたいに、小学生時代は
一月で最大7~8冊位のマンガ雑誌を買って読んでたこともありました。もちろんおこずかいの
大部分はマンガの単行本。姉は私以上にマンガ好きだったせいもあり、部屋はマンガで埋めつく
されてました。友達が家に遊びに来てやることといったら、ほとんどマンガ読むことだったという
・・・今のゲーム世代の小学生と同じくらい不健全(苦笑)。
でも、中学上がってからはほとんどの漫画雑誌から卒業しまして(恩田さんのように)、唯一
買い続けていたのがこれまた恩田さんと同じでLaLaでした。これだけは二十代半ばくらいまで
買い続けていたんじゃなかったかな。いつ、どういうきっかけで止めたのか忘れちゃったけど。
で、さらに共感出来たところが、なぜかぶーけや秋田書店系の雑誌は守備範囲外だったという
ところ。寄稿作家の単行本は買ってたんですけどねぇ。
なんだか、今回のエッセイを読んでいて、昔読んだマンガがすごーく読みたくなりました。
昔の少女漫画はほんとに面白いものが多かったよなぁ・・・(遠い目)。

それにしても、少女マンガに関するエッセイを書く人って、ほとんど例外なく、ガラスの仮面
に言及しますね。やっぱり、少女マンガ好きなら避けて通れない通過儀礼のような作品なんで
しょうか(苦笑)。そうした作家が若い頃から読んでいたマンガが今でも連載してるって、考えて
みるとほんとにすごいことだ。読んでた漫画家が亡くなっているとか漫画家やめちゃったって
ケースだっていくらでもあるのに。美内すずえってやっぱ偉大だなぁ。そして、情報によると
近々新刊が出るらしいではないですか!!(ホントかな?^^;←半信半疑)
ほんとに出たら、またガラかめ祭だね!


・・・なんか、今回脱線ばかりの記事ですみません・・・。
バラエティに富んだエッセイ集でした。どんなジャンルのものでもイマジネーションを広げて
作品に取り込んでしまう恩田さんは、やっぱり生粋のストーリーテラーなんだろうな、と思い
ました。
タイトルと内容が全くリンクしていないように思えますが、このタイトルがついた理由はあとがき
にちゃんと書いてあります。実に恩田さんらしいタイトルで好きだなぁ。何だかわからないけど、
魅力的で想像力を掻き立てられる。もし小説につけられたらどんな作品だったんでしょうね。
読んでみたかったな。