ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉/「謎解きはディナーのあとで」/小学館刊

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国立市の三階建てアパートの一室で25歳の女性派遣社員が絞殺された。被害者はブーツを履いた
ままうつ伏せの状態で倒れていた。事件を担当する国立署の女刑事宝生麗子は、上司の風祭警部と
共に被害者の恋人だという男の元に事情聴取に赴くが、男には確固としたアリバイがあった。
捜査は振り出しに戻り、家に帰宅した麗子は、刑事の姿から大富豪のお嬢様へと戻り、捜査の
内容を執事の影山に請われるままにふと漏らしてしまう。すると、影山から出た言葉は、
『失礼ながらお嬢様――この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃい
ますか』。令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑むユーモアミステリー。


大好きな東川さんの新刊。今回も面白かった~。相変わらずのゆるーいユーモアセンスに、
本格ミステリが加味されたいつもの作風は健在で、どのお話も楽しく読めました。冒頭の『殺人現場
では靴をお脱ぎください』だけは、以前本格ミステリ08 2008年本格短編ベスト・セレクション
で既読だったのですが、当時はまさかシリーズ化される作品とは思わなかったです。影山のキャラも
全然印象に残ってなかった^^;こうして一冊にまとまってみると、やたらにキャラの強い男って
印象なので不思議なのですが(苦笑)。お嬢様刑事と毒舌執事という主役二人のキャラと関係が
すごく面白くて、気に入りました。麗子は超大富豪のお嬢様なのに、割合感覚が普通で、意外に
常識人。基本的には高飛車なところもあるのだけど、職場では令嬢ということを隠しているから、
アホな上司の風祭に対しても分別ある態度で接してるし(心のなかのツッコミはすごいけど(笑))。
普段職場に来ていくスーツも、バーバリーの高級スーツなのに、職場の人には「丸井国分寺店で
買った吊るしのスーツです」と説明するし、アルマーニの伊達メガネはメガネスーパー
サンキュッパでした」となど嘘をつく。上司の風祭は麗子には大幅に劣るものの、有名自動車
メーカーの御曹司なのだから、麗子がいいものを着ていることに気づきそうなものだけど、自分
大好きなおバカさんだから、全然見えてないんでしょうね(苦笑)。麗子と風祭の噛みあってない
会話も楽しかったです。でも、なんといっても、執事の影山のキャラが良かった。毎回、麗子が担当
する事件の捜査内容を聞いては、「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」などと、彼女を
激怒させるようなセリフを吐きながらも、その後に鋭い推理で納得させてしまうところがなんとも素敵。
自分の雇い主のお嬢様に向かって、容赦無い毒舌を浴びせる性格の悪さも好きでした。影山の言動に
ムカつきながらも、彼の名探偵ぶりにほだされて結局強く出られず下手に出てしまう麗子もなんだか
可愛らしかったです。二人のコンビがすごく良かったなー。
ミステリとしてもきちんと納得出来るような真相になっていて、面白かったです。大財閥のお嬢様
が刑事という設定は、筒井康隆氏の富豪刑事を思い出してしまうのだけれど、執事が探偵役
というのが一風変わっていて面白かったです。そういえば、『富豪刑事』は原作の主人公が
男性だったけど、ドラマは深キョンがその役をやったんですよね。本書もドラマ化の際は是非
深キョンに・・・(ドラマ化される可能性がなさそうだけど・・・(苦笑))。と、ここまで
書いていて、そういえば、ついこの間読んだ麻耶雄嵩氏の貴族探偵でも使用人が探偵役だった
っけ、と思い出したのでした。北村薫さんのベッキーさんシリーズも、ベッキーさんは主人公
英子のお抱え運転手でしたねぇ。そうやって挙げていくと、結構似たような設定は多いかも
しれないですね。



以下、各作品の感想。

『殺人現場では靴をお脱ぎください』
既読。被害者がブーツを履いていた理由には「なるほど~!」って感じ。多分、私もそういう
状況になったらやると思います。だって、ブーツって履くの面倒だもんねぇ。編み上げブーツ
なんて特にね。

『殺しのワインはいかがでしょう』
オイルライターと100円ライターの特性を良く生かした真相で唸らされました。どの作品も
そうなのですが、麗子の話だけで真相を見抜く影山の観察眼の鋭さには脱帽です。

『綺麗な薔薇には殺意がございます』
薔薇のベッドの上に横たえられた美しい死体――ビジュアルは収録作中一番綺麗ですね。
薔薇の上に寝かされた理由は予測出来る範囲ではありましたが、死体を運んだ車椅子の真相には
膝をたたきたくなりました。推理に至る伏線もきっちり張られていて瞠目。

『花嫁は密室の中でございます』
これも完全に盲点をつかれた真相でした。こういう密室ものは他にいくらでも例があるとは
思うけれど、吉田執事のある人物への呼びかけの言葉から、ああいう真相が導き出されるとは。
なるほど、なるほどって感じでした。

『二股にはお気をつけください』
これもなるほど~の真相です。男性のちょっとしたコンプレックスが鍵になっています。ちょっと
笑っちゃうけど、今時こういうので誤魔化す男っているのかなぁ?絶対バレると思うんだけど・・・。
何にせよ、二股どころか、四股した上、あることで嘘をついていもいたのだから、罰が当たった
としか思えないですね。自業自得。



慇懃無礼な影山の言動に振り回される麗子がちょっと気の毒になりつつ、面白かったです。
なんだかんだで影山のことを信頼している麗子ですが、今後、二人が恋愛関係に発展すること
なんてあるのでしょうか。あったら面白くなりそうなんだけどな。東川さんで恋愛要素は
期待出来ないか・・・(苦笑)。でも、何にしても、もっともっと二人の活躍が読みたいので、
是非ともシリーズ化して欲しいですね。
中村佑介氏の表紙画も可愛らしくて良いですね(『夜は短し~』の方ですね^^)。影山が
かっこいいなぁ(*^^*)。
楽しく読めるユーモアミステリでした。やっぱり東川ミステリは良いなぁ!
オススメです。