ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

日日日/「私の優しくない先輩」/講談社刊

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生まれつき冗談みたいに身体の弱い私、西表耶麻子は、楽そうだと踏んで選択してしまった体育の
授業選択に失敗し、おせっかいな『先輩』と二人で体育の授業を受ける羽目に。そんな体育の授業
の時、ふとしたきっかけで先輩に私が片思いしている南愛治君に宛てて書いたたラブレターを見られて
しまう。それを見た先輩は、頼みもしないのに、私の恋を協力すると言って来て――。2005年に
碧天舎から刊行された表題作の再収録と共に、書き下ろしの続編を収録した新装版。


一番最初に刊行された当時から図書館の書架で見かけて気になっていた作品ではあったのですが、
なんとなく軽すぎそうに思えて手に取りそびれていました。最近映画化されて話題になっていた
ので、やっぱり読んでみたいなーと思っていたら、開架で新装版を発見。結果として、
書き下ろしの続編が入っているこちらの新装版を手にとってとても良かったと思いました。
表題作だけだとちょっと一冊の本としてはパンチが足りない感じだったので。それにしても、
内容100ページくらいしかない作品をわざわざ映画化したというのがビックリだなぁ。
ストーリー展開もそれほど派手な何かがある訳じゃないし。映画の出来ってどうだったんだろう。
というか、一番の驚きは、一番重要だと思われる『先輩』役をはんにゃの金田さんがやったこと
ですが・・・だって、作品読んでいる限り、金田さんとは正反対のビジュアルなんだもの^^;
金田さんの身長がどれくらいかわからないのですが、『先輩』自体は、かなりの長身でガタイが
良く、強面という設定。確かにおせっかいな感じはあってそうだけど^^;あんな色白で
なよなよした感じだとほんとに正反対って感じなんですが・・・一体どういうキャスティング
なんだ^^;
内容的にはいかにもラノベ風。文章も主人公の一人称で軽いし、展開も割合先が読めてしまう。
でも、主人公や先輩に加えて脇役の喜久子などもキャラ造形が良くて、好感が持てました。
主人公が自分の病や病弱な体質を受け入れているせいか、瀕死の状態になっても悲壮感があまり
なく、重い展開の割にさらっと読めるところが良かったです。でも、やっぱりラストはとても
切なかった。先輩とのラストシーンにぐっと来ました。ただ、こういう展開にするならば、もう
少し先輩とのシーンを増やして欲しかったなぁ。途中、喜久子とのエピソードが中心になって、
先輩のキャラが薄くなってしまった感じがあったので^^;キャラの強いひとなので、もっと
そのキャラを生かすようなエピソードがあったら、もう少し作品に深みが出た気がするんですが。

ただ、一作目を補強する形で続編の『吉乃さんはいいひとだから』が書かれたところはすごく
良かったと思う。最初、続編だとは思わずに読み始めたので、喜久子が出て来た時は嬉しかった。
こちらの方も主人公のツギハオのキャラがとても良かった。吉乃さんは最後の方までイマイチ
掴めない人物だったのだけど、ラストの展開は好きです。ツギハオの吉乃さんに対する感情も
最後まで明かされないところがニクイですね。もしかして喜久子といい感じになるのかも?とか
思ったところもあったんだけど。
喜久子のキャラは表題作の時とは随分違う感じがしましたが、それも耶麻子との一件があった
せいだとわかるので納得出来ました。続編で、耶麻子の存在がその後も先輩と喜久子の中に
強く刻まれていることがわかって、切ないけれど嬉しかったです。作品としては、こちらの
続編の方が好きだな。

さらっと読めてしまって物足りなさを感じるひとも多いだろうけど、私は結構好きな感性を
持ってる方だな、と思いました。ちなみに、作者名は日日日『あきら』さんとお読みします。
『晶』の漢字を崩したものなのかなぁ、と思っているのだけれど、どうなんでしょう。
ゆきあさんからオススメ頂いているちーちゃんは悠久の向こうも入手済みなので早く読みたい
とは思っているのですが・・・^^;

映画の出来がきになるなぁ。金田さんの『先輩』が特に(苦笑)。