ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

日日日/「ひなあられ」/講談社ノベルス刊

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日日日さんの「ひなあられ」。

血の繋がった姉の「美しさ」にうんざりする、ひとりの少女の心は限界まで達していた。どうして
お姉ちゃんだけ美しく生まれ、ちやほやされるの? 私は? 私は? 姉妹なのに、どうして
私だけこんなに違うの? そんな少女が起こした行動は……(「ひなあられ」)。表題作他、
三編収録(あらすじ抜粋)。


先日読んだ私の優しくない先輩が割合と楽しめたので、書店で講談社ノベルスの新刊が出て
いたのを見て読みたいな~と思っていたところ、隣町図書館のYAコーナーにて発見。新刊なのに
誰も借りてなかったのか^^;
で、本屋で見かけた時、可愛らしい表紙とタイトルにまず目が行ったんです。これはきっと、
『~先輩』の流れを汲んだ、爽やかな学園ものの青春小説に違いない、とワクワクしながら読み
始めたのですが・・・

だだだ、騙されたーーー!!

いやもう、とにかく一作目からとんでもなく黒い。途中からの展開は完全にバトルロワイヤルな
展開だし、オチもとことん救いがない。その後の三作も全部真っ黒な暗黒小説ばかり。これねぇ、
ほんと、表紙買いした人は騙された気分になるんじゃないのかな。こういうのが好きな人なら
いいだろうけど、まさかこの表紙からホラーな作品だとは絶対想像できないもん。どの作品に
出て来る登場人物もみんな壊れてるし。全部の作品、女子中学生が主人公なのですが、青春っぽさ
とか爽やかさだとか、そういう要素がほとんどない。私はこういうの嫌いではないので、結構
面白く読めたのですが、ただ、ホラーとしてもミステリとしても、何かもう一味足りないというか、
ちょっと中途半端な印象は否めませんでした。浦賀ほどグロくもなく、ユヤタン佐藤友哉)程
壊れてもなくって感じかなぁ。
とにかく、『~先輩』との作風の違いにビックリしました。この方って、他の作品はどんな感じ
なんだろう・・・。
まぁ、黒オチものは黒べるこの大好物なので、なかなか興味深く読んだ一冊でありました。


以下、各作品の感想。

『ばけばけ』
のっけからコレが来たので、かなり痛手を受けました^^;数ページ読んだ限りでは、幼馴染の
女子中学生同士の複雑な友情事情を描いた青春小説かと思ったんですけどねぇ・・・修学旅行に
行く為のバスに乗って寝てしまって目が覚めたらバケツ被って教室にいたって、どんなドッキリ
だよ、とツッコミたくなりましたが・・・そこからの展開がまた壮絶。気になったのはなぜ
バケツが顔からはずれなかったのか?というところ。どんなマジック使ったんだろ。オチも
とことん救いがない。っていうか、黒幕の扱い、杜撰すぎない?^^;


『ひなあられ』
美しいが故に姉から虐待を受ける少女。両親の離婚によって引き裂かれた兄妹四人による殺人劇。
終盤は何でもアリな展開に・・・。いくらなんでも、弟が○のフリして学校行くのは無理じゃない
か?姉に関しては黙認されてるところがあるとはいえ、弟は学校側から面識ないだろうし・・・。
かなり設定に無理があるのではないかと思いました^^;でもこの世界観は嫌いじゃないです。
ラストも完全に騙されてました。ひなげしとかなりあって名前は可愛いね。自分につけられたら
絶対厭だろうけど・・・(苦笑)。

『かものはし』
これ、読み途中で気がついたのだけど、アンソロジー学び舎は血を招く メフィスト学園①
で既読でした。で、その時の記事読むと、相当酷評してるんですが。今回再読してみて、驚くほど
内容を覚えておらず、またどこがそこまで悪かったんだろ?と少々首を傾げるくらい割合すんなり
読めてしまいました。たしかに文章はちょっと鼻につく感じなんですけどね。途中、何が何だか
わからない展開になるし^^;視点が分散してるのも気に入らなかったんでしょう。しかも人間と
アレとかだし・・・。自分の感想を自分で解説するのもおかしな話ですけど^^;例によって
オチは救いがありません。っていうか、この子、今までどうやって生きてきたんだ?(読んだ人
でないとわからない感想でスミマセン)

『オレオ』
今回の4作品の中ではこれが一番好きかも。ラストのミステリ的オチもなかなかだったし、ハトコ
とカタナちゃんとオレオ、三人の女子中学生のキャラが結構好きだった。他の作品はみんな人格
壊れてる子ばっかりなんで^^;この三人がまともって訳では全くないのだけど、壊れてるなりに
好感が持てたので。ちょっと切ないお話でもあるし。ハトコが○○に溺れる理由も哀れ。カタナ
ちゃんの正義漢も、痛々しいけど、健気で愛おしい。ラストはビックリな展開だったけど、オレオ
の想いに胸が切なくなりました。キリン君の正体にも驚きました。前の作品の真相と被っている
ところはちょっとアレでしたが、予想外の結末ではあったのでまぁ、いいか。とにかく、キリンの
人間性には嫌悪感しか覚えなかったです・・・。




普段ミステリとかホラーとか書かない人なのかなぁ。他の作品がどんななのかわからないのですが、
どうやら私は両極端な二作を読んでしまったようで^^;この作家さん自体の評価はこれだけでは
ちょっとまだ定めようがない感じ。文章は少々引っかかるところもあるのですが、感性自体は
嫌いではないってところは二作共通してるので、もうちょっと他の作品も読んでみたいですね。