ミステリ読書録

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東野圭吾/「白銀ジャック」/実業之日本社文庫刊

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東野圭吾さんの「白銀ジャック」。

年末、倉田が勤めるスキー場のホームページに脅迫状が届いた。そこには、スキー場のどこかに
タイマー付きの爆発物が仕掛けてあり、三日以内に三千万を払わなければ爆破スイッチを押すと
書かれてあった。索道部主任の倉田は、客の安全を優先する為警察に届けるべきだと主張するが、
上層部は納得せず、犯人の要求を飲むことを決定した。身代金の受け渡しはスキー場のパトロール
隊の一人である根津によってスムーズに行われたが、犯人は爆発物の場所のヒントを与えるだけで、
特定には至らず、更にヒントを要求するならば、再び三千万を支払えと主張してきた。犯人は
何故こんな大胆な方法でスキー場を乗っ取ろうとしたのか。怨恨か、復讐か。事件の裏には、意外
な真実が隠されていた――。月刊ジェイ・ノベル連載作、文庫の新刊で登場。


東野さんの最新作(出てから大分経っちゃったけど^^;)。東野さんの意向で、単行本化されずに、
いきなり文庫の形で新刊が出たという珍しい作品。出版社側からすると、単行本の方が単価が高い
ので、なかなか文庫で新作を出すというのは難しいそうですが。さすがに東野さんレベルになると
そういう我儘も聞いてもらえちゃうんでしょうね。売れるのは間違いないですしね。不況の煽りで
文庫の方が売れる時代だから、世間のニーズともぴたりと合っていたのでしょう。いきなり100
万部超えたそうで。この出版不況の時代に100万部って、桁外れの数字で売れるのも、東野
人気の表れなんでしょうね。すごいなー。

内容は、ウィンタースポーツ大好きの東野さんらしい作品。相変わらず読みやすいしテンポも良い
のでさくさくと読み進められちゃいます。でも、残念ながら、私自身がウィンタースポーツに全く
興味がない人間でして、その辺りの好みもあって、イマイチ楽しみ切れない作品だったかもしれま
せん。いや、普通に標準的に面白いのですけれどね。ゲレンデがハイジャックされて、関係者たち
があたふたするっていうのが大筋なのですが。爆発物が仕掛けられるという重大な事件な割に、
いまひとつ緊迫感に欠ける感じがしたのですが、事件の真相が明らかになって、なるほど、だからか、
と納得出来るところはありました。ただ、犯人に関してはさほどの驚きもなく、さらっと読み終えて
しまった。動機には面食らいましたが・・・このスキー場が狙われた理由も納得出来たんですけどね。
なんか、どうも一つ一つのパーツが食い足りないというか・・・薄いような・・・。入江親子の
部分とかも、とってつけたような印象があったし。もう一歩踏み込んで書いて欲しかったな。
ラストの大団円も安心して読めて良かったのですが、ちょっとご都合主義的すぎるような。特に
日吉老人の発言は、おいおい、上手く行き過ぎじゃないか?とツッコミたくなりました^^;
これも映像化狙ってるせいですかねぇ。終盤で一気に上手く収拾つけようとしすぎる余りにリアリティ
がなくなっちゃってるっていうか。
でも、一番驚いたのは、ラスト1ページで判明したある男女の恋愛関係。おいおい、一体どこに
そんな描写が出て来てたんだい!唐突すぎるだろーーー!と叫びたくなりました^^;だって、
本文中にほんの少しでもそれを仄めかすエピソードがあったならともかく・・・男女の仲って
そういうものな訳?っていうか、いつから?隠して付き合ってたってこと?だって、好意を寄せてる
っていう人に携帯番号教えちゃったりしてたのに?まだ、相手がもう一人の主要人物だったら納得
出来るところもあるんですけどね。そっちかよ、と本当に面食らわされました。何がビックリって、
そこが一番ビックリだったよ・・・。
そこまでハッピーエンドに徹底しなくても良かったんじゃないのかなぁ、と正直私には蛇足に思え
ました。まぁ、男性の方は、今回一人会社側に反発して、孤軍奮闘して頑張っていたから、その
分報われるようにしてあげたのかな。

スキーとかスノボーとかやる人には楽しい作品なんじゃないのかな、多分。東野さんのウィンター
スポーツへの愛はひしひしと感じられたもの。ただ、私は全くやらない人間なので・・・その
辺りの専門用語とかの部分ではちょっと退屈なところもありました。
最近の東野作品同様、軽く読めて普通に面白いんだけど、さらっと読んで心に引っかかるものが
ないって感じだったかな。面白かったかと聞かれれば普通に面白かったって答えられるけど、
ハイジャックものの傑作かと聞かれたら、肯定するにはパンチが足りないって感じでしょうかね
(えらそう?^^;)。