ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

若竹七海/「みんなのふこう」/ポプラ社刊

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若竹七海さんの「みんなのふこう」。

田舎町のラジオ局・葉崎FMで、毎週土曜夜に放送される読者参加型番組「みんなの不幸」は、
リスナーの赤裸々な不幸自慢が評判の人気コーナー。そこに届いた一通の投書。「聞いてください。
わたしの友だち、こんなにも不幸なんです…」。海辺の町・葉崎を舞台に、疫病神がついていると
噂されながら、いつでも前向きな17歳のココロちゃんと、彼女を見守る同い年の女子高生ペンペン草
ちゃんがくりひろげる、楽しくて、ほろ苦い、泣き笑い必至な青春物語(あらすじ抜粋)。


若竹さんの最新作。何の予備知識もないまま、新刊ってだけで飛びついて読み始めましたが、
葉崎シリーズでした。他シリーズともちょっぴりリンクしていて、多分私が気づいてない部分での
リンクもちょこちょこありそうな感じだったので、以前の作品も読み返したくなりました。
『猫島』『ヴィラ・マグノリア』『駒持警部補』辺りの単語ではピンと来たんですけど・・・。
二村(フタムラ)警部補もどっかに出て来たキャラでしたよねぇ・・・?そう考えると全部が
全部どこぞで出て来たキャラのように思えちゃうから困る^^;しかし、もちろん今回の
世界一不幸な疫病神ヒロイン・ココロちゃんのキャラはお初お目見え、だと思うのですけれど。
こんな強烈なキャラは一度読んだら絶対忘れないですからね^^;とにかく、このココロちゃん
の言動が面白くって面白くって。いやもう、今年読んだ本の中でも最高のヒロイン像じゃない
でしょうか。個人的にはべるこアワード主演女優賞を贈呈したいくらい。もう、彼女が歩けば
トラブルに当たる、てなくらい、次から次へとトンでもないことが起きる。親に捨てられ天涯孤独
な身の上ってだけで、普通の人は不幸のどん底に陥ると思うんですが、このココロちゃん、それ
位じゃ全くめげない。道端に咲いた雑草のごとくに踏まれても踏まれてもしぶとい生命力で生き
続けて行くのです。大金持ちの物置小屋に寝泊り出来ることを条件にハーブの世話を頼まれたと
思ったら、そのハーブは大麻だったとか、バイト先の人にアパートを紹介されて住み始めたら、
その部屋は以前に七輪自殺を遂げた人が住んでいた部屋で、残された七輪を使用して中毒になって
しまうとか、公園に生えてたニラを食べたら実は毒のある水仙を食べてたとか・・・とにかく、
やることなすことがすべてココロちゃんの身体に害をなす結果になってしまうのです。それでも、
ココロちゃん、全く痛手を受けません。懲りずにまた火に向かって行く蛾の如くに、トラブルの
方に向かって突進して行く。それもにこにこ笑いながら・・・。最初はどんなに不幸に見舞われても
めげずに健気なココロちゃんの言動に癒されていたのだけれど、彼女がトラブルに遭う度ごとに、
どういう訳だから必ず他の人物がもっと悲惨な目に遭って行くので、ほんとに、だんだん彼女が
疫病神のように思えて来て、ちょっと怖かったです^^;ココロちゃん自身が天然癒し系キャラ
なだけに、余計その周辺で起きているキナ臭い事件の黒さや重大さが際立っていたように思い
ます。
作品は、葉崎市のローカルラジオ放送局、葉崎FMの人気コーナー『みんなのふこう』宛に送られた、
ココロちゃんの友人からココロちゃんに起きた身の不幸についてのメールが読まれることから
始まります。このラジオ放送を軸にした作品構成も面白かった。パーソナリティの瞳子さんの
キャラも、親しみやすいお姉さんって感じで好感持てましたし。今年半ばに終了しちゃいましたが、
職場で良くかけていた文化放送の某番組でパーソナリティを担当されていた玉川美沙さんを思い出し
ながら読んでました。歯切れのいいしゃべり方で、姉御肌の玉ちゃんの声が大好きだったんです
よね~。終わっちゃって本当に残念でしたが、ご懐妊では仕方ない・・・。最近は職場でしか
聴かなくなってしまいましたが、高校生くらいまではラジオが大好きで、毎日のように聴いてました。
深夜番組とかも良く聴いてたなぁ。オールナイトニッポンとかもね。なんだか寝付けない時とか、
パーソナリティの人が元気に話しているのを聴くのが、起きているのは一人じゃないって思えて
嬉しかったんですよね。

ととと、またしても脱線。とにかく、そんな葉崎のローカル局に投書されたココロちゃん個人の
身の上話が、一作進むにつれて、どんどん大きな事件になっていく、という連作短編形式。
前の伏線が次に繋がって行くところも相変わらず巧いし、作風はほのぼのしているのに、オチが
突き落とされたような息を飲む黒さで終わるところも若竹さんらしくて良かった。
ココロちゃんの行く所事件あり、てな状況に陥って行くので、一体最後はどうなっちゃのだろう、
と、ちょっと読み進めるのが途中から怖くなりました(苦笑)。最後の最後まで、やっぱり
ココロちゃんはトラブルメーカーのままでした。彼女の今後が心配でなりません・・・でも、
きっと、彼女ならどんな恐ろしい目に遭おうとも、ゴ○ブリ並の生命力で世間を生き抜いて行く
のでしょうね。

若竹さんらしいピリリと毒の効いたコージーミステリ、テンポ良く楽しく読めました。
面白かった~。トンデモヒロイン・ココロちゃんには是非またどこかで再会したいものです。