ミステリ読書録

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牧薩次/「郷愁という名の密室」/小学館刊

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牧薩次さんの「郷愁という名の密室」。

矢住鼎(やずみかなえ)は漫画家志望の35歳。今は北関東の小都市でヘルパーをしている。誤って
介護先の老女を死なせ、絶望した鼎は雪山で自殺を図る。ところが‥‥。目覚めたのは無量温泉の
旅館の一室。そこで彼は〈少女のままの〉高校時代の後輩・雫に再開する。その旅館で事件が起きる。
まず、宿泊客の男女が刃物で殺害され、次いで隣の旅館の女将が密室状態の客室で刺殺される。
犯人は内部の人間か。鼎と雫(ホームズとワトソン)の前に殺人者の影が迫る。そして深夜0:54、
あらゆる知覚が暗転して――。多くの謎を孕んだまま、物語は〈郷愁〉の名のもとに収斂していく。
09年度『完全恋愛』で〈本格ミステリ大賞〉受賞後、待望の第一作!(あらすじ抜粋)


一作目の完全恋愛で、刊行年のミステリランキングを大変賑わせた著者の二作目。一作目は
確かに話題になるのも頷ける作品だったので、二作目も楽しみに読んだのですが・・・うーむ。
なんともかんとも、『微妙』としか言い様がないのですが・・・。一作目の水準を期待すると
大きく肩透かしを食らわされる可能性が高いかも・・・。確かに、昨年末のミステリランキング
では全く話題になっていないなぁと思っていたのですが^^;
内容に関しては、何書いてもネタバレになっちゃいそうなんですよね^^;主人公がタイムスリップ
して過去に行き、温泉宿で殺人事件に遭遇する、というのが大筋なんですが・・・途中いくつもの
不自然な要素があって、腑に落ちない気持ちを抱えながらずっと読んでいたのですが。確かに、
最後で明かされるタイムスリップやら同じ日が繰り返される理由やら、高校時代の後輩の少女が
17年後の世界にも関わらず同じ姿格好で現れる理由やらに関しては、一応の説明がついた形
にはなっているのですが、正直、一番使って欲しくなかったオチそのまんまで、ガッカリ。結局
ソレかよ~!と脱力してしまいました。その帰結にしちゃえば、そりゃ何でもアリに出来る
だろうけどさぁ。古今東西、この手の手法は使い果たされた感があって、目新しさというものは
一切なかったですね・・・。『完全恋愛』は、最後の最後でタイトルの意味がわかって、それ
までの不満が一挙に押し流されてしまった感があったのだけど、本書に関しては、エピローグが
あっても大してそこがプラスには働かなかったですね・・・。その部分があることによって、
読後感は悪くなかったですけどね。でも、ご都合主義と言えなくもないし。17年間○○○○
だったのに、突然状況が変わるってのもねぇ。愛の力?一作目を踏襲して恋愛要素を入れたの
かもしれないですが、なんだかそこも中途半端な印象しか受けなかったんですよね。高校時代の
二人のエピソードを入れて、彼女の気持ちが類推出来るような場面でも挿入されていたら、もっと
説得力もあったように思うのですけれどね。





以下、多少オチに関してネタバレ気味です。未読の方はご注意ください。















殺人事件の真相もちょっと意外性がなさすぎ。犯人の明かし方もあっさりしすぎてるので、
もう一捻りこの先にどんでん返しとかあるのかと思ってたら、そのままで拍子抜けだったし。
本格ミステリのタブーである、隠し部屋まで使われているし。オチが鼎の○ってことなんで、
その辺は何でもアリでもいいのかもしれないですが・・・。
個人的に、こういうオチは好きじゃないんですよねぇ・・・。
主人公のキャラ造形も、どうも場面場面でブレがあってイメージしにくかったです。雫のキャラ
もそう。彼女のキャラには結構好感持てたので、もうちょっと生かして欲しかったです。

一作目であれだけ話題になってしまうと、二作目で同じようにインパクトのある作品を書くのは
難しいと思うのですけどね・・・。
ヘタにタイムスリップやらSF要素やらを入れたりしないで、直球の本格ミステリで勝負した方が
良かったんじゃないのかなぁ。最後に全部に説明つける為に○オチにするくらいならね・・・。

ちと、厳しい感想になってしまいましたが。個人的にこの手のオチって好きじゃないんで・・・
スミマセン^^;

















面白くなかった訳じゃ、ないんですが。ミステリのタイプでいうと、自分の好みではなかった
かなって感じでした。
律儀にあとがきが牧さんと別名義と、二種類あるところにちょっとウケました(笑)。
三作目が書かれることはあるんですかね~。何にせよ、著者のご高齢で意欲的に作品が上梓
されること自体が素晴らしいことな訳で、今後も書き続けて欲しいと思いますね。