ミステリ読書録

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三雲岳斗/「幻獣坐 The Scarlet Sinner 」/講談社ノベルス刊

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三雲岳斗さんの「幻獣坐 The Scarlet Sinner 」。

財政破綻し、鷲王院と呼ばれる巨大企業に支配された日本。自殺した友人の死の原因を調べていた
高校生・久瀬冬弥は、同級生の藤宮優々希が、人の死を操る「幻獣」の力を持っていると知る。
鷲王院に逆らい己の信じる正義を実行するため、優々希を利用しようとするが、新たな「幻獣」
の持ち主が現れ…(あらすじ抜粋)。


講談社ノベルスのアンソロジーミステリ魂。校歌斉唱!メフィスト学園の中で短編バージョン
を読んで面白かったので買ったのですが、長らく積ん読状態で放置してまして。図書館本が一時
落ち着いたので、ここぞとばかりにようやく読みました。

話には聞いていましたが、短編バージョンの時より主人公の冬弥の性格が更にクール。というか、
腹黒い?^^;自分の復讐の為に、同級生の女の子を操って自分の意のままに動かそうとする
計算高いところなんかは、賛否両論分かれそうです^^;でも、腹黒いのは確かだけど、なんだ
かんだ言いながらもヒロインの優々希のピンチには駆けつけて、自らが危険な目に遭いながらも
救ってあげるのだから、しっかりヒーローの役割は果たしている訳で。まぁ、そこには自分の野心
の為も少なからず入ってはいるのですけれど。私はその腹黒い打算的なところも含めて、結構好き
なキャラでした。
冬弥のキャラがはっきりしているのとは逆に、ヒロインの優々希のキャラがちょっと弱い気が
しました。もちろん、過去のいじめのこともあり、性格的に気が弱いとうのもあるのですが、
外見が赤毛に碧眼と派手なだけに、ちょっとその外見と性格のギャップに違和感を覚えてしまい
ました。そこが彼女のいいところとも言えるかもしれませんが。こんな気の弱い性格で、冬弥
と今後付き合って(男女間という意味でも、利害関係が一致した『同志』という意味でも)いける
のか、ちょっと心配です^^;ラストシーンにはニヤリとしちゃったんですが、冬弥が彼女の
ことをどう思ってしたことなのかの真意が見えないだけに、簡単に喜ぶ展開って訳でもないような
気がなきにしもあらず。でも、完全に続編を想定しているような意味深な終わり方なので、是非
とも続きを書いて欲しいです。優香理さんがどうなっちゃうのかも気になるし・・・。冬弥と
鷲王院との戦いも長期戦になりそうですしね。
ラノベ出身の三雲さんらしいキャラと設定って感じ。ラノベなみに読みやすいので、すらすら
読めちゃいました。深神はこの先も冬弥とつかず離れずの距離で関わって行くのかと思っていた
ので、予想外の結末でした。一作限りの使い捨てキャラだったとは・・・^^;優香理さんが
可哀想でなりませんでした。一番の被害者は間違いなく彼女だよなぁ。

気が弱かった優々希も、鷲王院への憎しみで強い女性に変わって行くのでしょうか。冬弥と恋愛
関係になっていくのかが一番気になるかな。希璃依が言うように、いつか優々希の存在が冬弥に
とって命取りになる日が来るのかも。

とても面白かったのですが、一点残念だったのは、イラストがイマイチ私のイメージに合って
いなかったこと。特に、人物紹介の深神の外見は全く予想外・・・もっと無骨な感じをイメージ
していたのになぁ。
漫画化もされているようですが、このイラストの方が描かれているのかしら。そうじゃなければ
読んでみたいんだけどな(何気に酷?)。

やっぱり三雲さんは面白いなぁ。続編、是非とも期待したいですね。