ミステリ読書録

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東川篤哉×瀧井朝世 対談『ミステリーはこんなに楽しい』

新!読書生活『ミステリーはこんなに楽しい』
東川篤哉(作家)× 瀧井朝世(ライター)対談


読売新聞の広告に東川さんの対談を聴講出来るというので、ダメもとでネットから申し込みを
してみたら、すんなり通ってしまいまして。院長に頼み込んで、早引けを許してもらって、
行って来ました。

東川さんといえば、もちろんみなさんご存知の通り、先日本屋大賞を受賞されたばかりで、今や
『超』がつく程の売れっ子作家。だもんで、みなさんどうせ時代の波に乗っかって、ミーハー心で
聴きに行ったんだろうと思われていると思いますが、違います。一部の方はご存知かと思いますが、
ワタクシ、自慢じゃないですが、デビュー作から東川作品を追っかけている老舗(?^^;)の
ファンでございます。その証拠に、ワタクシのブログは2006年の5月に開設したのですけれど、
そのひと月後の6月にすでに東川さんの殺意は必ず三度あるの記事を書いております。嘘だと
思ったら、リンク先へ行ってみてください。デビュー作の記事がないのは、『殺意~』以前の
作品はブログ開設前にすでに読んでしまっているからなのです。
まぁ、別にデビュー作から好きになろうと、話題になった『謎解き~』から好きになろうと、
ファンはファンで違いはないと言われてしまえばそれまでなんですけども。でもでも、なんとなく、
地味に陰ながら追いかけて来たファンとしては、なんだか急に手の届かない(別に以前も届いて
ないのだが)存在になっちゃった気がして寂しいんだよぅ。多分、秋葉時代からAKB48を追いかけて
来たファンと同じような気持ちだね(え、違う?)。

と、どうでもいい(不毛なともいう)マイナー時代からのファン自慢はさておき。
行って来ましたのは、銀座にある時事通信ホール。モダンでオシャレな建物。が、しかし、
総ガラス張りのホールで、最初どこが入り口かわからず建物周りをウロウロ。完全に不審人物
状態。何度か行きつ戻りつした挙句、ようやく入り口発見。二階へ上がるとすぐに受け付けが
あって、会場へ。私が座ったのは向かって左側の前から三列目、通路から2番目の席(関係者席
以外は基本的には全席自由)。舞台からは割合近い席に座れました。

6時半からトークショー開始。東川さんとライターの瀧井さん(『王様のブランチ』ブックコーナー
のコメンテーターもしている方だそうです)揃って登場。
基本的には、瀧井さんが話を振って、東川さんがそれに答えて行く感じで進んで行きました。
しかし、東川さん、あんなユーモアミステリを書いているとは思えないくらい、トークベタ。
面白いことを話して盛り上げようというようなサービス精神はほぼ皆無。たまに(おそらく)
天然で話したことが爆笑を誘ってることはありましたが^^;
ほんとに、慣れてないんだな、こういうの、って思いました。『謎解き~』以降、格段に
インタビューされる機会が増えたそうですが、いつも生真面目に訥々としゃべっているんだろう
なぁっていうのが伝わって来ました。私は過去の作品の話とか、ミステリのルーツとか、ほとんどの
話題に食いつけたのでどのお話も面白く聴けたのですが、ファン歴の浅い人にはちょっと退屈
だったかもしれない。その証拠に、私の周りだけでも居眠りしてる人が三人くらいいた・・・(うち
ひとりは子供だったから仕方がないとはいえ、隣の中年女性なんか爆睡。何度頭カックンを目撃
したことか^^;思わず、ツッコミ入れて起こそうかと真剣に悩みましたが、ギリギリのところで
思いとどまりました・・・)。

トークで印象に残ったことはたくさんあるのですが、まずビックリしたのは、東川さんが
ありえない程のアナログ人間であること。まず、携帯を持っていない。インターネットもしない。
かといって、手書きで書いてる訳ではなく、一応パソコンで打っているようなのですが。
で、瀧井さんがビックリして、『では原稿はどうやって(出版社に)渡してるんですか?』と聞くと、
一言『フロッピー』
・・・会場爆笑。い、今時ふろっぴー!!!でも、東川さん的には、毎回フロッピーの言葉を
出した途端にこういう反応が返ってくることが不思議なんだそう。いやいや、そうなるでしょ。
今時フロッピー使ってる人なかなかいないと思うけども。
で、更に瀧井さんが『じゃ、調べ物とかする時は・・・』とふると、
『調べない。調べ物が必要な作品は書かない』。・・・うーん、さすがです(笑)。

あと、そういえば本屋大賞の副賞に、通信講座ユーキャンの講座を一つ選べるという、ヘンテコな
(まぁ、共催なんでしょうが)ものがあって、東川さんは『速読』を選んだのだそう。もう一つ、
中島みゆきのDVDも希望してもらったそうな。東川さんは本を読むのがかなり遅いので、速読に
興味があったからだそうです。でも、やらなそうだなぁ(苦笑)。

あと、『謎解き~』以降の作品はたくさんインタビューに応じたけれど、東川作品最高傑作
と言われる『館島』『交換殺人には向かない夜』なんかの作品ではインタビューを受けた
ことがない、『館島』について語りたい!と切実に訴えているところが笑えました。でも、
『館島』で語れることってそんなにあるかな・・・ていうか、あんまり語っちゃダメな
作品って気もするんですが(苦笑)。あのトリックはほんとに、一度読んだら忘れないですよね。


他にも東川さんの読書ルーツとか、ユーモアミステリについてとか、興味深い話はいろいろあったの
ですが、端折りまして、お互いの推薦本を5冊づつ挙げて説明するコーナー(?)がありまして。

それぞれの推薦本がこちら。

<東川さん>
島田荘司『斜め屋敷の犯罪』
赤川次郎『死者の学園祭』
横溝正史『本陣殺人事件』
鯨統一郎パラドックス学園』
エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』

<瀧井さん>
アイザック・アシモフ黒後家蜘蛛の会1』
バロネス・オルツィ『隅の老人の事件簿』
P.G.ウッドハウス『比類なきジーヴス』
道尾秀介カササギたちの四季』
奥泉光桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活(5月13日刊行)


東川さんが挙げた作品は赤川さんの以外は全部既読で嬉しかったです。ただ、赤川さんの
作品も、多分映像かなんかでは観ている筈なのですよね。東川さんがかなり褒めてらしたので、
読んでみたくなりました。
あと、『斜め屋敷~』に関して、読んだ当初は傑作だとは思わなかったけど、とにかく
トリックが印象に残った、ミステリで動機や犯人は忘れても、トリックを覚えていられる作品
はそんなにない、みたいな話をされているのが、すごく共感出来ました。そして、この『斜め~』
に触発されて書いたのが『館島』だったんだそう。自分の『館島』の記事で『斜め~』の
名前を出していたので、なんだか嬉しかったです。

瀧井さんの挙げた作品は、東川さんの『謎解き~』が好きな人には好きそうな作品を
選んだとのことで、執事もの、ユーモアミステリ、安楽椅子探偵ものと、なかなかいいチョイス
をしているな~と思いました。アシモフと道尾さんは既読だったのですが、他の三作はどれも
すごく面白そうだと思いました。ラストの奥泉さんのはこれから刊行の作品だから、図書館
入荷したら予約してみようかな。アンソロジーで読んだクワコーものらしいし。他の海外もの
二冊は、今後の月イチ海外作品の候補に入れておこう。特に『~ジーヴス』は執事もので
真っ先に名前が挙がる程有名な作品なのだそう(全く知らなかったですが^^;)。東川さん
も読んだことないっておっしゃってましたけど(苦笑)。

でも、今回一番のサプライズは、瀧井さんが道尾作品の紹介をしている時に、『会場に今日
道尾さんがいらしているそうなのですが・・・』と言ったこと。そしたら、真ん中辺りにほんとに
ミッチーが・・・!!関係者席とかじゃなくて、本当に一般の聴衆者に混じって聴いてらっしゃいました。
自分で申し込んだのかなぁ・・・。東川さんの反応めちゃくちゃ薄かったけど^^;
交流あるからなのか、それとも単純に好奇心からだったのか、その辺りは定かではありませんが
(もしかしたら、道尾さんのツイッターで真相が語られていたりするのかも?)。
そういえば、道尾さんって、作家仲間のサイン会に突然来たりするらしいですもんね。作家に
あるまじきフットワークの軽さだなぁ(苦笑)。



トークショーの後はサイン会がありまして、売っているのが『謎解き~』のみだったので
悩んだのですが(どうせなら未読の新作の方が良かった^^;)、せっかくだからと購入し、
サイン会に参加して来ました。


コチラがサイン本↓
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/belarbre820/20010101/20010101014330.jpg

なんだか、性格通りのサインって感じ(笑)。握手もしっかりしてもらっちゃいました♪


今回のトークショーの模様は5月22日の讀売新聞朝刊に記事が載るそうです。讀売を取っている方、
是非チェックしてみてください^^