ミステリ読書録

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近藤史恵/「モップの精と二匹のアルマジロ」/JOY NOVELS刊

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近藤史恵さんの「モップの精と二匹のアルマジロ」。

大人気本格ミステリー、「女性清掃人探偵キリコ」シリーズ第4弾!ポップなファッションで清掃
作業員として働くキリコが、今回も鮮やかに事件を解決、となるか――事の始まりは、キリコが
たまたま、夫・大介が通うオフィスビルの清掃を受け持ったことだった。ある日キリコは、見知らぬ
女性から「夫の浮気を調査してほしい」と頼まれる。ところが思いがけない事件が発生して――。
地味な妻と目が覚めるほど美形の夫、どこか不釣り合いな夫婦に秘められた謎に、キリコ&大介の
名コンビが迫る、心があたたまる本格ミステリー(紹介文抜粋)。


待望のキリコちゃんシリーズ第四弾です。個人的に、近藤さんのシリーズものの中でも特に
気に入っているこのシリーズ、続刊を楽しみにしていました。今回は、シリーズ初の長編。
大介とキリコちゃんが偶然同じビルで働くことになったことから物語は始まります。もちろん、
大介の働くオフィスビルでキリコちゃんが清掃員として働くことになるってことなんですが。
夫婦で同じ職場ってどうなのかなーと思うけど、やっぱりちょっと顔合わせたら気まずいです
よねぇ。これが好きな人だったら、毎日すれ違う可能性があるってだけでも嬉しいと思うんです
けど、夫婦の場合は、家に帰れば毎日会える訳ですし。という訳で、その辺りで大介もキリコ
ちゃんも最初は戸惑いがあったりするんですけど、勤務時間も職業内容も違うから、さほど顔を
合わせる訳でもなく、お互いあまり意識せずに働けていたのですが。そんな中で、キリコちゃん
に夫の浮気調査をして欲しいと頼む女性が現れ、二人は思わぬ事件に巻き込まれて行きます。
このシリーズは、一見ほのぼのして見えて、実は毎回かなり重いテーマを抱えているんですが、
今回長編ということもあり、いつも以上にテーマが重い。すれ違う夫婦と関わり合いになった
キリコちゃんは、今回も体当たりで事件と向き合い、重い事実を受け止めては、しばしばその
小さな身体と心に傷を負ってしまいます。そんなキリコちゃんを見て、大介も心を痛め・・・と、
かなり展開はシビア。根底にあるテーマは夫婦の絆とか愛ってことになるんでしょうけれど・・・。
キリコちゃんと大介夫婦の絆は、きっとどこまで行っても崩れることはない確かなものだと
わかるけれど、今回二人が知り合う一組の夫婦の絆は、脆く壊れやすく、危うげなものでした。
いろんな夫婦の形があるとは思うけれど、この夫婦に隠された事情は、とても苦く、やるせない
ものがありました。最後を読むまで、タイトルの『二匹のアルマジロの意味がさっぱり読め
なかったのですが、この夫婦が迎える結末を知ると、なるほど、と思えますね。近藤さんは、
いつもタイトルのつけ方が巧いなぁ、と感心しちゃいます。ヤマアラシのジレンマ』のことは
有名ですが、そこをアルマジロに例えたところが秀逸ですね。

今回は大介視点で物語が語られる為、大介がいかに今でもキリコちゃんを愛していて大事に
しているかが随所で伺えます。ほんとに、キリコちゃんのことが誰よりも可愛くて心配でしょうが
ないって感じで、当てられっぱなしでした(苦笑)。こんな風に愛してもらえたら、女冥利に
尽きるでしょうね。もちろん、キリコちゃんの大介への愛情もたっぷり感じられました。愛妻
弁当いいな~。キリコちゃんの料理がまためちゃくちゃ美味しそうで。私も作ってもらいたい(笑)。
ほんとに、こんな夫婦理想だよな~って思ってしまいます。好きだからこそ、不安になる大介の
気持ちも共感出来ますし。だから余計に、相手を大事に出来るんでしょうね。この二人には、
いつまでも仲良くいて欲しいです。

二人が出会った一組の夫婦は最終的に一つの結論を出します。それで二人が本当に幸せになれるか
どうか、それはわからない。多分、たくさん辛いことも出てくると思う。でも、支え合って生きて
行って欲しいなって思います。大介とキリコちゃんもついているのだしね。

今回残念だったのは、キリコちゃんのお掃除シーンが少なかったこと。いつも、本当に楽しそうに
効率良くお掃除するキリコちゃんの姿に、自分の部屋もちゃんとお掃除しなきゃな~と省みさせて
くれるシリーズなので(お掃除苦手なんだもん・・・^^;)。お掃除薀蓄が今回ほとんど入って
なくて、そこはちょっとこのシリーズとしては物足りなかったかな。でも、やっぱりこのシリーズ
は大好きです。まだまだ続いて欲しいな。