ミステリ読書録

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島田荘司/「Pの密室」/講談社ノベルス刊

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島田荘司さんの「Pの密室」。

「僕がおとななら、いくらでも犯人を捕まえられるのに」五歳の御子洗潔は叫んだ!不可解な
自動車事故死と店内に散乱するガラス片の謎(「鈴蘭事件」)。堅牢な密室で死んだ画家。赤く
塗りたくられ床一面に敷き詰められた子供たちの絵は何を語る?(表題作)これこそ天才の証明。
名探偵の幼年時代を発掘する(紹介文抜粋)。


ずっと止まっていた御手洗シリーズ。順番的には次は『水晶のピラミッド』を読む予定で、実家
から持って来て手元に置いてあるのですが、とにかく分厚いのでなかなか読む気になれずに今に
至ってます^^;
シリーズものは出来たら順番に読みたい方なので、御手洗さんに会いたいなぁと思ってもなかなか
再会出来ずにいました。一作飛ばすと知らない登場人物とかが出て来て戸惑いそうなので^^;
でも、先日図書館の島田荘司コーナーを眺めていて、ふと手に取った本書、カバー折り返し
のところに『御手洗の少年時代』と書いてあったので、これなら番外編っぽいし、いきなり手に
取っても差し支えないだろう、と判断して思い切って借りてみました。結果として、犬坊里美
という見知らぬ女子大生キャラには若干面食らったものの、それ以外は幼少時の御手洗さんが
活躍する事件なので、これだけ読んでも何ら問題なかったです。
本書には、御手洗さんが5歳の幼稚園児の時と、小学二年生の時に遭遇し、見事解決に貢献した
二つの事件が描かれます。
御手洗さんの天才的な探偵の才能は、わずか5歳の時から健在。いやー、ほんとに君は幼稚園児か!
と思わず誰もがツッコミを入れたくなること必死。自分の子供がこんな5歳児だったら、親は
自分の存在意義を見失うでしょうね・・・^^;といっても、キヨシ君の実の両親は、彼を
育てることを放棄して海外行っちゃうので、彼がどれだけ優秀な子どもなのかなんて知らなかった
かもしれないですが。どっちもどっちの両親ですが、特に母親、酷い。子供生んだこと自体を忘れ
ちゃうって・・・そんなことあるのかー!?可哀想過ぎるよ、キヨシ君・・・と思いました・・・。
でも、さすが御手洗潔。そんな酷い境遇でも全く痛手を受けておりません。普通、もっと歪んだ
性格になりそうなのに、頭が良すぎると、そういうことにもならないんですねぇ。幼年時代
キヨシ君は、可愛げがあるような、ないような、でも、ああ、あの御手洗潔の面影あるなぁって
納得しちゃうところがありました。推理に関しては、もう、何ら変わらない慧眼っぷり。子ども
ってことを、ついつい何度も忘れそうになりました・・・(苦笑)。



以下、各作品の感想。ネタバレもありますので、未読の方はご注意下さい(特に表題作)。











『鈴蘭事件』
ガラスのコップをこなごなに割った理由には成程、と思いました。まぁ、王道っちゃ王道では
あるんですが。この時代ならではの理由ですねぇ。スズランの小道具の使い方も巧いですね。
キヨシ君が、割れたガラス片を求めて必死になってゴミ収集車を追っかけるくだりが好きでした。
小さな身体で一生懸命事件を解決させようと頑張るキヨシ少年に萌え~。そして、キヨシ君の
伯母さん、なんて怖い人なんでしょう・・・^^;;こんな人に育てられたら、そりゃ、女嫌い
にもなるよなぁ・・・。

『Pの密室』
これは、かなりツッコミ所満載の作品でした^^;そもそも、小中学生から募集した大事な絵を
踏みながら審査するって・・・いくら有名な画家だってそれはやっちゃまずいでしょう^^;
それに、別に全部の絵を一面に並べなくたって、一枚づつ手に取って眺めれば済む話では?
誰もがそうやって審査するものだと思うんですが・・・。48枚もの絵を血で塗りたくるってのも
無理があると思うし。何時間もかけて塗ってる間に血がすぐ凝固しちゃうと思うんですけど。
いくら水で溶いたって言っても・・・実現可能とは思えなかったです・・・^^;
あと、A型とB型の血を混ぜると、AB型の判定になるものなんでしょうか??Pの密室のPの意味
がわかる部分は面白かったんですけど。全体のトリックはかなり強引かなぁと思いました。
ただ、謎解き部分は腑に落ちない所だらけではあったのですが、ラストの終わり方は好きですね。
御手洗シリーズらしい、切なさとやるせなさに満ちたラストで、この後の犯人の運命を思うと、
哀れでならなかったです。犯人のしたことは許せない犯罪ではありますが、動機を考えると、
被害者には全く同情出来なかったですね。自業自得だと思ってしまいました。








まぁ、ツッコミ所は多々あったんですが(^^;)、子供時代の御手洗少年に出会えて、
二作とも、とても楽しめました。御手洗さんの生い立ちなんかも知ることが出来ましたしね^^

ところで、石岡さんが妙に犬坊さんの結婚に敏感で、もしかして彼女に恋愛感情があるの?とか
思っちゃったんですが、年齢差がありすぎですよねぇ。この作品での『現代』だと、石岡さんは
多分50歳よりも上、って感じ?自分のことを老人とか言ってるけど、そこまでの年じゃない
ですよね、きっと。二人が知り合うきっかけになった『龍臥亭事件』を読むべきなんでしょうね^^;
シリーズ読破するのはまだまだ遠い未来のようです・・・。