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大森望・豊崎由美/「文学賞メッタ斬り!2008年度版 たいへんよくできました編」/パルコ刊

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大森望豊崎由美さんの「文学賞メッタ斬り!2008年度版 たいへんよくできました編」。

まさかのメッタ褒め?やっと的中した受賞予想、芥川賞直木賞授賞式レポート、新たに誕生
「メッタ斬り!」新人賞などなど今回も斬り込みます。
<目次>1 メッタ斬り!トークショー 受賞作家の逆襲上―長嶋有×大森望×豊崎由美
2 メッタ斬り!トークショー 受賞作家の逆襲下―石田衣良×大森望×豊崎由美
3 定点観測、芥川賞直木賞;4 もはや定番、選評、選考委員メッタ斬り!;
5 誕生!「文学賞メッタ斬り!」新人賞;6 決定!第三回「文学賞メッタ斬り!」大賞
(紹介文抜粋)


大森望豊崎由美、毒舌書評家お二人による、芥川賞直木賞の賞レースを予想して、あーだ
こーだとメッタ斬りにするこのシリーズ。読み逃していた一冊をこの間書架で発見したので
ほくほくと借りました。歯に衣着せぬ二人の物言いが楽しくて、爆笑しながら一気読み。
ほんと、こんなに明け透けに言っちゃって大丈夫かな、と心配になる位、二人ともぶっちゃけ
ちゃってくれるところが大好きです。
今回は、2008年(第137回138回)の芥川賞直木賞予想を中心にした構成。冒頭には
過去の受賞作家・石田衣良氏と長嶋有氏との対談も収められています。この対談もなかなかに
爆笑ものだったんですが。石田さんは芸能活動しているせいか、妙にインタビュー慣れしている
のがわかったり、長嶋さんはとっても面白くていい人だと言うことがわかったり、読みどころの
多い対談風景でした。しかし、衣良にはちっとも好感持てなかったな^^;作品一冊も読んで
ないんだけど、なんかこの人の作品を読む気になれない自分がいるんだよなぁ。ドラマのIWGP
(注:池袋ウェストゲートパーク)は大好きな作品だったんだけどね。どうも、作品に手が
出せないまま今に至るって感じです・・・完全に読まず嫌い作家ですね^^;長嶋さんの方は
開架でエロマンガ島の三人』というタイトルを見かける度に気になって気になって仕方ない
のだけど、借りる勇気が持てずにいまだに未読のままです・・・^^;この方の作品自体は評判も
良いし、知人からお薦めもされているので、読んでみたいとはずっと思っているのですけれどね。

さて、本書には二回分の賞レース予想風景が収められているのですが、副題の『たいへんよく
できました編』が指し示している通り、今回、珍しくお二人の芥川賞直木賞の予想が見事に
的中した回がありました(第138回の方)。だいたい、毎回二人がイチオシの作品にはズレがあるの
ですが、今回ばかりは一番本命と言った作品が二人とも揃い、しかもそれがどちらの賞でも
当たったものだから、二人とも大はしゃぎ。まさに青天の霹靂。
ちなみに、第137回138回芥川賞直木賞の候補作は以下。
第137回
芥川賞
前田司郎『グレート生活アドベンチャー
川上未映子『わたしく率イン歯ー、または世界』
柴崎友香『主題歌』
松井雪子アウラ アウラ
円城塔オブ・ザ・ベースボール
諏訪哲史『アサッテの人』

直木賞
北村薫『玻璃の天』
森見登美彦夜は短し歩けよ乙女
万城目学鹿男あをによし
桜庭一樹赤朽葉家の伝説
松井今朝子『吉原手引草』
畠中恵『まんまこと』
三田完『排風三麗花』


<受賞作>
芥川賞 諏訪哲史『アサッテの人』
直木賞 松井今朝子『吉原手引草』


芥川賞系の作家とは相性が悪いので、ほとんどいつもスルーなんですが(^^;)、この回の
直木賞は候補作に読んでる作品が多くて、すごく注目していた覚えがあります。でも、
実際受賞したのは、唯一未読の松井さんだったという・・・^^;
大森さんと豊崎さんのどちらも、北村さんにあげないのは何故かと嘆いていたのが印象に
残りました。まぁ、その後シリーズ完結編でもらいましたから・・・ね^^;



138回
芥川賞
西村賢太『小銭をかぞえる』
田中慎弥『切れた鎖』
山崎ナオコーラ『カツラ美容室別室』
津村記久子『カソウスキの行方』
楊逸『ワンちゃん』
中山智幸『空で歌う』
川上未映子『乳と卵』

直木賞
佐々木譲『警官の血』
黒川博行『悪果』
馳星周『約束の地で』
井上荒野『ベーコン』
古処誠二『敵影』
桜庭一樹『私の男』



この回は逆に、直木賞の方もほとんど読んでいなかったのですが、読んだ作品がバッチリ
受賞してくれて嬉しかったです。ちなみに、川上さんの『乳と卵』文藝春秋本誌で
全文が掲載されていたので読んでみようとトライしたのですが、冒頭の3ページで敢え無く挫折
・・・この人の文章の良さが私にはさっぱり理解出来ませんでした・・・。
それにしても、大森・豊崎両者の『私の男』に対する評価が異常に高くてビックリ。
私個人の意見としては、こんなインモラルな問題作で直木賞あげちゃっていいのかなぁって
感じだったのでちょっと意外でした。
ただ、読んだ時も「これは賛否両論だろうなぁ」と思った作品だったので、評価高い人がいても
不思議ではないんですけどね。


お二人が、相変わらずシンちゃん(注:石原慎太郎)やジュンちゃん(注:渡辺淳一)に辛辣
なのが可笑しかったです。シンちゃんの『てにをは』用法の矛盾に、私自身もちょっと
身につまされるところもありましたが・・・(多分、かなり間違って使ってると思うんで^^;)。

第四弾以降出てないみたいで、とても残念。ラジオだか何だかで予想自体は相変わらずやって
らっしゃるみたいなのに。また出して欲しいよなぁ。
今回も大いに笑わせて頂きました。はー、面白かった。