ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

畠中恵/「ちょちょら」/新潮社刊

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畠中恵さんの「ちょちょら」。

兄上、なぜ死んでしまったのですか?千穂殿、いま何処に?胸に思いを秘め、困窮する多々良木藩
留守居役を拝命した新之介。だが―、金子に伝手に口八丁、新参者には、すべてが足りない!
そして訪れた運命の日。新之介に、多々良木藩に、明日はくるか(あらすじ抜粋)。



えーと、すみません。若干(かなり?)黒べるより記事となっております。
畠中ファンの方、未読の方はご注意下さいませ。







畠中さんの新作。やー・・・辛かった、読み通すの。畠中さんの今までの作品の中で一番
苦戦したかも。そもそも、もともと時代もの苦手なんで、設定だけでも腰が引けました。今まで
の畠中作品は、時代ものは時代ものでも、ある程度題材が好みだったからそれなりに面白く
すんなりと読むことが出来たんですよね。でも、今回は題材自体に全く惹かれるものがなかった。
馴染みのない(江戸時代なんだから当たり前なんだけど)江戸留守居役に任命されたヘタレの
新之介が慣れない役職に就いて四苦八苦しながら成長していく・・・物語、なんだろうけど
留守居役ってのは、今で言う会社の営業さんみたいな、外との渉外(外交)を担う役職って
云えばわかりやすいかな?要人との接待なんかも仕事のうち)。
ストーリーがまずもって平板で、起伏がない。兄の死の真相を探るミステリー、なんて要素が
挟まっていたら、もっと緊迫感があって面白く読めたかもしれないんですが。死の真相には
何の意外性もなく、あっさりと明かされちゃって拍子抜けだし。そこを通り過ぎたら、ひたすら
印旛沼普請(普請は、今でいう工事のことですね)に、自分の藩が駆りだされないようにする
にはどうしたらいいのか画策する話が延々と最後まで続くだけ。時代物好きな人には面白い
のかなぁ、このストーリーでも。私にはさっぱり面白さがわかんなかったですけど。主人公の
新之介がまた、ちょっとでも仕事で躓くと、いちいちその度に『兄上が生き残っていれば・・・』
みたいに感傷に浸ってうじうじするのが鬱陶しい。優しい性格なんですけどね。もうちょっと
しっかりしなさい!と後ろから背中を叩きたくなるんですよ。まぁ、最後は新米留守居役としては
十分立派な活躍をして面目躍如ではあったのですけれどね。そこは良かったと思うけど、その
過程の地味なストーリー運びには参りました。読んでも読んでも先に進まない・・・。その上
畠中作品には珍しくページ数が多い。正直、このストーリーでこのページ数は多すぎだと思う。
新之介が、印旛沼普請を避ける為に全部の藩を総抜けさせる、とアイデアを出したのはいいけど、
その方法を各藩に丸投げってのにも脱力したし。自分の藩を抜けさせる為にしたことが8種類
のお菓子を集めることってのも・・・。
各藩ごとの関係性もちょっとわかりにくくて、やっぱり時代もの苦手だなぁ、私・・・と思い
ながら読んでました・・・。

せめて恋愛パートでもうちょっと盛り上がりがあったら違ったと思うんですが・・・新之介ってば、
千穂さんにあっさりフラれただけでなく、彼女の縁談をまとめる為に尽力しちゃうし。歳の差が
大きい中年オヤジとの縁談をまとめられて、千穂さんは本当に幸せだったんですかねぇ・・・
この当時なら、これで良かったのかな。少なくとも、青戸屋は心から千穂さんに惚れてる訳
ですしね。でも、なんとなく納得が行きかねるものがあったのでした。

岩崎のキャラは、アイスクリン強し』『若様組まいる』に出て来た園山っぽいなぁと思い
ました。園山よりもずっと大人だし好感持てましたけど。新之介がヘマをやる度に、いちいち
鉄拳を浴びせる所はどうかと思いましたが^^;まぁ、愛のムチだったんでしょうね。


ちなみに、『ちょちょら』とは、『弁舌の立つお調子者。いい加減なお世辞。調子の良い言葉』
だそうな。新之介のキャラとはちょっとズレがあるような気もしますが・・・。



うーん。実は第一章の時点で、すでに『挫折』の二文字がチラついていたのですが・・・頑張って
読み通した割に、得るものがなかったような・・・。ちと、残念な読書でございました。
スミマセン・・・。
時代物がお好きな方なら楽しめるのかもしれませんけどね。世間の評判が気になるな。