ミステリ読書録

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万城目学/「ザ・万遊記」/集英社刊

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万城目学さんの「ザ・万遊記」。

奇才・万城目学の第2エッセイ集!
ベストセラー作家・万城目学が北京、ロンドン、バルセロナ、大阪、札幌、国会議事堂…、世界も
日本もあちこち巡って、驚きや感動を綴ったエッセイ集。全編に摩訶不思議なマキメ・ワールドが
全開!(紹介文抜粋)


新作の『~しゅららぼん(それにしてもスゴイタイトル)』はまだまだ借りられそうにないの
ですが、隣町図書館の開架で読みたかった二冊目のエッセイ集を発見。もうすぐ映画公開の
プリンセス・トヨトミの話題なんかもあって、なかなかタイムリーに読めたな~って
思いました。
相変わらずちょっぴりとぼけた文体で、所々でくすりと笑えて面白かったです。ただ、今回
スポーツネタがやたらに多いので、興味がない人にはちょっと退屈な部分も多いかも。私も、
野球ネタにはあんまり食いつけなかった^^;北京オリンピックのレポートは興味深かった
ですが。レスリングの試合を観て、会場を彩る北京屈指の美女たちよりも、吉田沙保里さんや
伊調姉妹を始めとする、試合を戦った選手たちの方がずっと美しかった、という万城目さんの
実感のこもった感想が印象に残りました。生であのスポーツの祭典を観に行けたなんて羨ましい
な~。
個人的には、桜庭さんや森見さんとのやり取りの回が一番好きだったかな。桜庭さんとの
初対面では、お互いに密かに会話のきっかけとなる話題を用意していた所が微笑ましかった
です。桜庭さんが気にしていた万城目さんの仕事場のイスって、渡辺篤史氏の番組から影響
受けたコルビジェのですかねぇ。全く関係ないやつかな。

第一章の『湯治と観戦』の章では、やっぱりバルセロナの回が面白かったです。クラシコの話
メインかと思いきや、温泉のことしか書いてなくてちょっと拍子抜けしたけど(苦笑)。でも、
クラシコ観戦の方も終盤でちゃんと出て来たので溜飲が下がりました。万太郎氏が嘆くように、
ヨーロッパの温泉って、温水プールよりも温度が低かったりするんですよね。日本の温泉を思い
描いて行くと、大きく裏切られた気分になる。私も、以前、ハンガリーに行った時、温泉施設に
行ってガッカリした覚えが・・・(ハンガリーは温泉で有名な国なのですが^^;)。水着で
入るのは仕方ないとしても、あの低温度は有り得ない!あんなんで温泉なんて言うなーーー!と
叫びたくなりました・・・^^;効能なんて絶対何もなさそうでしたねぇ。温泉じゃなくて、
完全にプールでしたからね^^;日本の温泉って素晴らしいな、としみじみ思わされたのでした。

第二章では、『小公女』の話が面白かった。私はアニメ版の方しか知らなかったので、原作では
セーラが最後にミンチン先生に逆襲するという、痛快な展開になるとは知りませんでした。でも、
アニメの小公女セーラのあの心優しいセーラが、最後に人が変わったみたいにミンチン先生
に一泡吹かせたりしたら、幼心に(おそらく小学生だった)トラウマになっていたかも・・・。
万城目さんはそこがいたく気に入らなかったみたいですが(苦笑)。原作読んでみたくなりました。
あと、カレンダーに記入された本のタイトルのくだりも面白かった。京極さんの作品が何気に
二作も入っているのが嬉しかった。でも、作家になりたいと思っている人にしては、驚くほど
読書量が少なくてちょっとビックリでした。読めない事情もおありだったのでしょうが。桜庭
さんの読書エッセイ読んだらマキメさん、腰抜かすんじゃないだろうか・・・。

第三章では、しずお蚊の話と、ひょうたんの話が印象に残りました。静岡って、そんなに蚊が
多いところなんでしょうか・・・蚊の標的になりやすい私には、恐ろしい県ですね・・・。
ひょうたんの話は、情景を思い浮かべたら・・・ひぃぃ。例え善意でくれたものだとしても、
私だったらこんな物くれた人を呪いますよ・・・。前回のエッセイのGの話しかり、この手
の虫話には背筋が凍ります・・・(><)。

第四章は先述したように、北京オリンピック観戦記がメイン。そちらも面白かったのですが、
サッカー好きの私には、その後のアーセナルクラシコ観戦記も面白かった。私、バルセロナ
に行った時、ほんとに時間があったらカンプ・ノウに行きたかったんですよ。バルサのファン
ではないけど、いちサッカーファンとして、是非ともあそこの空気を感じてみたかった。でも、
自由な時間が全くないツアーだったので、敢え無く断念せざるを得ず・・・クラシコを生で観戦
出来たなんて、万太郎氏が本当に羨ましいと思いました。


それぞれの章で印象に残る話は多々あったのだけれど・・・一冊読んで、このエッセイで一番
記憶に残るのって、何といっても、各章の合間に挟まれる『今月の渡辺篤史のコーナーじゃ
ないだろうか・・・。問題の番組を観たことがないので、マキメさんの文章から番組の雰囲気を
推し量るしかないのだけれど・・・これがめっぽう面白そうで。ってゆーか、『篤史って、スゴイ!』
と私でもつい思わされてしまいました(ついマキメさんの影響で呼び捨てに・・・スミマセン)。
このエッセイ読んだら、みんな渡辺篤史の建もの探訪なる番組を観たいと思わずにはいられ
ないのではないだろうか・・・え、私だけ?^^;ってゆーか、いつやってるんだろう・・・
み、観たいぞ。


全体的には、全作よりはマニアックな話題が多かったかな、という印象ですかね。雑誌の連載
の為、同じような主題の回が何度か続く構成なので、ちょっとマンネリっぽいところもあったかも。
まぁ、でも、やっぱりマキメさんって基本的には真面目だけど、どっかとぼけてて、やっぱり
面白いひとだなぁ、と思いました。肩の力を抜いて楽しく読めるエッセイ集でした。