ミステリ読書録

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加藤実秋/「ホテルパラダイス銀河」/講談社刊

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加藤実秋さんの「ホテルパラダイス銀河」。

大学入学と同時に上京した西島京志は、東京上野にある「ホテルパラダイス銀河」に住み込みで
働きながら学校へ通う。ホテルには、なぜかトラブルを抱えた人達が次から次へとおしよせる。
そんなある日、ひとりの女性がホテルへ駆け込んできた。自称モデルの彼女は所属する事務所に
騙されて詐欺の片棒を担いでいたという。手を引こうとすると逆に脅され、ここへ来ればトラブル
を解決してくれるという噂を聞きつけ助けを求めやって来た。ホテルの支配人・小津は事態の収拾
と解決を京志に命ずる!(「東京甲子園」)。他全4篇収録(あらすじ抜粋)。


なんとなく、新刊が出るとつい読んでしまう加藤さん。今回も、何の予備知識もなく、図書館の
新刊情報を見て「あ、新作だー♪」と思って予約したんですが。
・・・うーん。何というか・・・微妙。まぁ、この方の大抵の作品はそういう感想になっちゃう
気がしないでもないんですが(^^;)、今回は、キャラ造形といい、ストーリー展開といい、
全体的にあと一歩面白さが欠けるといいますか。キャラもストーリーも、今までの加藤作品に
通じるものはあるのですが、それだけに、マンネリ感を覚えてしまったのかも。夜の世界が
出て来るところも、80年代の懐かし要素が出て来るところも一緒だし。その上、一作ごとの
ページ数が今までの連作集に比べて多めなので、どこかストーリーに間延びした印象も
受けてしまったし。内容的に、もっとコンパクトにまとめても良かったと思う。しかも、
一番悪いところは、舞台となる『ホテルパラダイス銀河のオーナーが誰か、という最大の
謎とも言える部分が、意外性ゼロ、誰もが予想し得るあの人であったこと。その人が初めに
出て来た瞬間、嫌な予感はよぎったのだけれど、まさか、そこまであからさまな結末には
ならんだろう、と多少の希望的観測を持ちながら読んでいたのに・・・そのまんまかよ!と
ツッコミを入れたくなりました・・・^^;支配人の小津さんとオーナーとの関係も、もう少し
ひねりがあって欲しかったなぁ・・・。なんだか、最終話の前までの三作ですでにちょっと
この作品に飽きて来たところがあったのですが、最終話読んでそれまで延々読んで来た自分に
脱力・・・こんな、予想通りのオチか・・・とがっかり。まぁ、読者を驚かせるようなミステリ
書く作家じゃないことはわかっていたつもりですが、ここまでひねりがないと、ちょっとねぇ。
文句の一つも言いたくなっちゃいますね。各ストーリーはそれなりに人情味もあり、ドタバタな
ところやハラハラさせる展開なんかもあるにはあるんですが。なんか、イマイチ楽しみ切れ
なかったんですよねぇ。メインで活躍する京志と道也のキャラがあんまり好きになれなかった
せいかも。設定自体も結構ツッコミ所満載でしたしね・・・(そもそも、主人公を有名大学に
入れるよう手配するって時点でかなり無理があるかと思うのですが・・・裏口?^^;)。
あと、やっぱり、どうもこの作家の基本的なセンスが全体的に古臭いんですよ。80年代大好き
なのはもうわかってるんだけど、いい加減、そこから離れて欲しいなぁと思ったり。今回は
昔に流行ったアニメやマンガネタが満載でした。

まぁ、上野の街の雰囲気は良くわかる作品でしたけどね。上野は大きな美術館がたくさんあって、
結構良く行く街なので、馴染みの場所が所々で出て来たりするところは楽しめました。でも、
ストーリーは一月後には全部忘れてそうだなぁ・・・^^;;
最後は半分惰性で読んでいたような^^;

ちなみに、タイトルはもちろん、光ゲンジの同タイトル曲からでしょうね・・・。一応、舞台
となるホテルの名前で、作中ではホテル名の由来について『光ゲンジの曲とは関係ない』
みたいに言わせてはいるんですけどね(苦笑)。