ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三津田信三/「七人の鬼ごっこ」/光文社刊

イメージ 1

三津田信三さんの「七人の鬼ごっこ」。

秘密の場所が結びつけた子供たち。彼らは成長し、それぞれの生活に追われていた。そんな中、
懐かしい人物からの電話が、彼らが封印したはずの記憶を蘇えらせた。ひとり、またひとりいなく
なる…。電話のベルは死の鬼ごっこの始まりの合図なのか?メンバーの一人であるホラーミステリ
作家が、この不可解な事件に巻き込まれていく―(紹介文抜粋)。


三津田さんのノンシリーズ新刊。タイトルと装幀から、かなり面白そう、と楽しみにしていたの
ですが・・・うーん。三津田さんが書いたにしては、ちょっと地味な着地点に落ち着いてしまった
かな、という感じ。確かに、終盤の推理は刀城言耶に倣ってるだけあって、回りくどく二転三転
するんですけど・・・それだけに、最終的な真相はもっとカタストロフがあって欲しかった。まぁ、
ミステリとしては普通に水準以上の面白さはあると思うんですけど・・・三津田さんって目で
見ちゃうと、アレレ?これで終わり?みたいな物足りなさが・・・。刀城シリーズの水準を期待
しちゃうと、多分ほとんどの人が肩透かしな気持ちになるんじゃないかなぁ。解決されないままの
謎も残ってるし・・・。謎解きを読んで、もう一度気になる部分を読み返してみたりしたんだけど、
なんとなく、やっぱり、すっきりしないものが残りました。
それに、基本設定が三津田シリーズと似すぎているところもちょっと気になりました。主人公が
元編集者上がりのホラーミステリ作家ってところはまんまだし、刀城言耶を尊敬しているところも
一緒。頭の切れる友人と事件を考察し合う下りなんかも、少し前に読んだ『作者不詳』と重なる
所がありました。別に、敢えて同じような設定持ってこなくても・・・と思ってしまいました。
他シリーズとちょこちょこリンクしてるところは、ファンならニヤリと出来ると思うんですけどね。
あと、ミステリー作家の晃一と、恩師(?)の仕手河原教授のやり取りは面白かった。全体的には
暗いトーンで、ホラー調の作品なのですが、この二人のシーンだけは妙にコミカルで、ちょっと
お笑いの要素があるところに救われました。仕手河原教授のとぼけたキャラがいい味出してるん
ですよね。晃一が来たとわかった途端に忙しそうなフリしたりとか。晃一のデビューまでのくだり
も、普通にやられたら、それこそ殺意を抱きそうなことばかりなのですが、悪気なくあっけらかん
としてるせいか、なんだか憎めず笑ってしまいました。晃一も仕方ないなぁって容認しちゃってる
ところがあるしね。まぁ、仕手河原教授のおかげでデビュー出来たのは間違いない訳ですもんね。
刀城シリーズに比べて、読みやすいのは間違いないところですし、『誰が連続殺人の犯人なのか』
というフーダニットの部分では楽しめたのも確かなのですが。でも、やっぱり三津田さんには、
もっと意外性のある結末を期待しちゃうんだよなぁ。












以下、真相に関するネタバレあります。未読の方はご注意下さい。

















やっぱり、幼児連れ去り事件の真相が有耶無耶なままだったのは消化不良。いくら垂麻家が地元の
名士だからって、三件もの幼児失踪事件をもみ消せるってのは何だか解せないものがあります。
あと、吉彦連れ去りの現場を目撃した全員が都合良くその時の記憶を失くしていたってのは、
いくら何でもご都合主義的すぎるのでは・・・。連れ去った『誰まさん』が催眠術でも使えた
って訳でもないでしょうし。それに、『中学生が幼児を連れ去った』ことが、子供にとって
そこまでのトラウマになり得るのかなぁ。当時の円覚はそれほどに恐ろしい容姿をしていた
んでしょうか・・・。

それに、連続殺人の動機も、良く考えると単なる逆恨みに近い気がして、ちょっと納得が
行きかねる所がありました。吉彦を連れ去って殺した『誰まさん』に対して殺意が芽生えるのは
わかるんですが、その現場に居合わせたってだけで、全員を皆殺しにしようと思うのはどうかと。
確かに、その後に誰か証言する子がいたら、警察が動いたのかもしれないですが、どっちみち
垂麻家の力でもみ消されていたでしょうし、吉彦の命は失われていたのではないかなぁ・・・。
まぁ、狂気に取り憑かれて、そういう理性なんか働かなかったんでしょうけどね。一番殺すべき
相手を殺し損ねたってところも何だか皮肉で哀れです。最初から、犯人だけをターゲットに
絞っていた方が、本懐を遂げられていたんじゃないのかな・・・。













やっぱり、三津田さんに求める水準が高くなってしまってるせいか、ありきたりなミステリだと
満足出来ないのかもしれないなぁ。腑に落ちないところは多々ありましたが、ミステリとしては
それなりにいい出来だとも思うんですけどね。でも、なんか、もう一捻り、欲しかったかな、と
思いました。しかし、装幀めちゃくちゃ怖いですね。なんか、この表紙でかなりネタバレしてる
気がしないでもないんですが・・・いいのかな^^;