ミステリ読書録

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仁木英之/「先生の隠しごと 僕僕先生」/新潮社刊

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仁木英之さんの「先生の隠しごと 僕僕先生」。

「我が名はラクス、光の王」――唐の都・長安から遠く離れた辺境に、蛮人たちの理想国家が誕生
した。眩いカリスマ性で人々を魅了する、謎の素顔の若き王。彼がプロポーズした相手は、なんと
僕僕なのだった。いつもクールな美少女仙人の心が、悲しすぎる愛の記憶でグラグラ揺れる。
先生、本気なんですか……シリーズ第五弾(紹介文抜粋)。


仙人と人間の恋と旅を描いた僕僕先生シリーズ最新作。なんだか、一作ごとに初期の頃ののんびり
した雰囲気が薄れていって、展開が重くなっているような・・・。正直、私はこのシリーズで
一番期待しているのが、主役の王弁とヒロイン(?)の僕僕先生の身分を超えた恋愛部分なので、
今回は多いに不満。っていうか、僕僕先生の今回の行動には、王弁同様ショックでした。何か
理由があるんだろうとは思ったけれど、それでも王弁放ったらかしで、まさかの○○。いくら
理由があっても、そりゃないだろう、と思いましたよ。正直、若干の怒りさえ覚えたくらいです。
王弁可哀想過ぎる・・・。まぁ、仙人先生も昔の感傷に引きずられることがあるんだなぁ、と
違う意味で新鮮でもありましたが。あの僕僕先生がそれほどに惚れ込んでいた人物、拠比。
一体どんな人なんでしょうか。二人の過去にどんな悲しい出来事があったのか、その辺りは
非常に気になります。先生が思い出す限りだけでも、素敵な人だったんだろうなぁ、というのは
推し量ることが出来ましたが。いつか書かれる時が来るんですかね。

ただ、その拠比の面影があるというラクスに関しては、王弁側の立場になって読んでしまった
せいか、私も全く好感が持てませんでした。何か胡散臭いという先入観を持って読んでたせいも
あるんでしょうけどね。まぁ、実際胡散臭い人物だったんですけど(苦笑)。
僕僕先生があんな立場になってしまい、簡単に会うことが出来なくなった王弁でしたが、彼は
彼で僕僕先生を信じて、自分の出来ることを頑張ろうとする姿に好感が持てました。特に、銀の
街の鉱山で、病に冒された人々を助けるくだりには彼の成長が伺えて嬉しかったです。僕僕先生
との距離はあまり縮まっていないし、相変わらずヘタレなところもありますが、一作ごとに
確実に人間の器は大きくなって行っているのではないでしょうか。始めは情けないニート
穀潰しって感じだったのにねぇ。やっぱり、僕僕先生への恋が彼を成長させてるんでしょうか。

今回初登場の蒼芽香(そうがこう)のキャラは気に入りましたね。これから、旅の一行に加わる
みたいなので、次回以降の活躍も楽しみ。薄妃とはいいコンビになりそうです。王弁は二人に
いじられまくりそうですけど(苦笑)。
今回は、劉欣がいい味出してたなー。劉欣って、そんなに王弁のこと気に入ってたんですね(笑)。
薄妃の『ほんと、王弁さんが好きなのね』のツッコミにウケました。否定しないし(笑)。その
直球のツッコミを入れる薄妃も大好きだー(笑)。それに、薄妃は終盤でも王弁相手に素晴らしい
助言を口にしています。

『大切な人が迷って揺れている時は、一緒に揺れてはだめ。大樹のように動かず、その人が
もたれかかるように。雨風が吹きつけている時には、その枝で覆ってあげられるように』

辛い恋を経験したからこその、重みある言葉ですね。薄妃を捨てた男は、ほんとに勿体ないことを
したと思いますね。素晴らしい女性なのにね。

恋愛といえば、冒頭の蚕嬢改め碧水晶と茶風森のプロポーズ話も良かったですね。ニヤニヤしちゃい
ました。蚕嬢は芋虫姿から元の姿に戻って、キャラがちょっと変わってしまったのが若干残念では
ありましたけれど。あの毒舌な感じ、好きだったんだけどな。まぁ、姿はグロかったけど・・・。


ラクスの数十年後の姿には驚きました。中国史をよく知らないのであまりピンとは来なかったの
ですが、あの楊貴妃とも繋がるということは、かなり有名な人物なんでしょうねぇ。やっぱり、
トンデモない人物だったということで。僕僕先生が正気に戻ってくれて良かったよ、ほんとに・・・。


新たな旅の道連れも加わって、まだまだ一行の旅は続きそうです。できれば、初期の呑気な中国
ロードノベルな作風に戻って欲しいなぁ。そして、主役二人のいちゃいちゃシーンをもうちょっと
増やして欲しい・・・それ目当てに読んでるんだもん(ヨコシマ人間)。
あと、第狸奴の出番をもう少し増やして欲しい!・・・今回少なくて残念だったので^^;