ミステリ読書録

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桂望実/「ハタラクオトメ」/幻冬舎刊

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桂望実さんの「ハタラクオトメ」。

北島真也子、OL。157cm、100kgの愛くるしい体形ゆえ、人呼んで「ごっつぁん」―。
中堅時計メーカーに就職して5年が過ぎた彼女は、ひょんなことから「女性だけのプロジェクト
チーム」のリーダーに。任務は、新製品の開発。部署を超えて集められた5人と必死に企画を
立てるも、その良し悪しを判断される前に、よくわからない男社会のルールに邪魔される。
見栄、自慢、メンツ、根回し、派閥争い…。働く女性にエールを送る、痛快長編小説(あらすじ
抜粋)。


痛快、痛快。タイトル通り、働く乙女たちのお仕事小説。私は企業で働いた経験がないので、
メーカーの企画から商品開発、発売に至るまでの過程ってこんななのかな~と興味津々で読み
ました。実際働いている方からしてみると、こんなにすんなり行く筈がないと思うのかもしれ
ませんが、同じ働く女性の一人として、女性が仕事に頑張っている姿を描いたこういうお話は
読んでいて元気がもらえるし気持ちがいい。
特に、ヒロインのごっつぁんのキャラ造形がとっても良かった。自分が太っているというコンプ
レックスを逆手に取って、人間関係を円滑にするネタにしちゃう強かさには頭が下がりました。
太っているというだけでコンプレックスに思ってネガティブになってしまう女性が多い中、
敢えてこういう『明るいデブキャラ』を主人公に据えたところが良かったですね。働く女性に
エールを送ると同時に、全国の太っちょさんにもエールを送る小説にもなっていると思います。
だからって、157センチ100キロっていうと、健康の方も心配になっちゃうスタイルでは
ありますが・・・^^;
でも、ごっつぁんが楽しそうにお料理を作る姿とか、美味しそうにお料理を食べる姿を想像
すると、健康がどうとか考える気も失せてしまうところがありました(苦笑)。彼女はこの
まんまでいて欲しいというかね。細い人を見るとちゃんと食べているのか心配になっちゃう
お人好し(?)でもあるし。基本的に、本当に人がいいというか、憎めないキャラクターで、
彼女がいるだけでその場が和むとうのも頷けるものがありました。ただ、ことある事にポケット
から就業中にお菓子を取り出しては人に勧めるのはどうかと思いましたが^^;彼女と友達に
なったら、絶対に短期間でデブ仲間へとまっしぐらのような・・・^^;現に友達の佳那子は
『ごっつぁんちに来ると、絶対太るんだよね。いつも、翌日からダイエットしてるって、
知ってた?』と言ってますし。ごっつぁんの誘惑に負けたら最後ってやつですね(苦笑)。
彼女の毎日の行動を追っていると、彼女がこういう体型になったのが如実にわかります。そりゃ、
こんな生活してたら太るよなぁ、みたいな(苦笑)。私も、仕事中に小腹が空くので、ついつい
お菓子をつまんだりはしちゃうんですけどね・・・ちょっと自粛しよう、と思いました・・・^^;;

もちろん、寄せ集めの女子六人のチームで、たまに反発したりぶつかり合いながらも、一致団結して、
一つの企画を通そうと頑張るところが一番の読みどころだと思います。それぞれのキャラも個性的
で良かったですね。ジミーとかラッパーとか、いちいちあだ名がついてる職場ってのもちょっと
違和感あったんですけどね・・・^^;
千香が企画したデコ時計は、実際売ってたら若い子にウケそうです。まぁ、私はつけたいと
思いませんでしたけど・・・(苦笑)。
時計ホルダーはあったら便利かも。私、腕時計の扱いはかなりいい加減で、外したらその辺の
テーブルの上にそのまんま置きっぱなしだったりするのでね^^;

ごっつぁんとおばあちゃんの往復はがきのやり取りも良かったですね。おばあちゃんに懐いて
育てられたからこそ、ごっつぁんがああいうポジティブで温かい性格になったのでしょうね。

大家さんの娘の明希との関係も良かったですね。これも、やっぱりごっつぁんのキャラありき、の
関係でしょうね。普通だったら、こういう難しい子にこういう風には接することは出来ないんじゃ
ないかなぁ。まぁ、基本的には、明希がぶっきらぼうだけど、根はいい子だからっていうのも
あるでしょうけどね。

かなり予定調和な展開とも云えるけれど、女性たちが逞しく頑張るお仕事小説でした。仕事に
前向きに取り組む姿勢の大切さや、一つの仕事をみんなでやり遂げる爽快感など、いろんなことを
感じさせてくれる作品でした。ごっつぁんのポジティブシンキングに引きずられて、たくさん
元気をもらえました。面白かったです。