ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三浦しをん/「妄想炸裂」/新書館刊

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三浦しをんさんの「妄想炸裂」。

てらいなく「オタク」であることを語りながら、「オタク」のイメージを打破する溢れるユーモア
と才気。毒があっても、なぜか新鮮なさわやかさ!本とマンガを何より愛し、そして三味線と盆栽
(サイボン!?)をシュミとする、新鋭作家の爆笑エッセイ。
<目次>「着替え前だからおおらかだえ」まえがき;1章 刺激は何もない;2章 妄想旅行;
3章 愛なき世界;4章 妄想の道;「飢餓と愛には弱いわよハニー」あとがき(紹介文抜粋)。


しをんさんの初期エッセイ。彼女のエッセイは本当にいつも面白いので、定期的に読みたく
なるんですよね。ちょこちょこと読んで来たけれど、まだいくつか読み逃しがあるので、開架で
見かけたら借りるようにしてます。これも隣町図書館にて発見。『しをんのしおり』とどちらに
しようか迷ったのですが、とりあえずこっちから。
今回も思いっきり本音ぶっちゃけ全開で、楽しく読めました。今のような人気作家になる前の
エッセイなので、この頃はまだ、作家だけでは食べていけなかったせいか、古書店でのアルバイト
で主に生計を立てていたのですね。早稲田大学を卒業してアルバイト生活とは・・・^^;
でも、バイトをしているしをんさん、とっても楽しそうです。そりゃ、本に携わる仕事なんだから
楽しいでしょうけど。でも、単なるバイトってだけじゃなく、きちんと古本屋の仕事に対してプロ
意識があるのがさすがです。万引き女子高生との対決の結末は返す返すも残念。しをんさんには
是非とも勝って欲しかったなぁ。
それにしても、この頃からしをんさんの妄想っぷりはただたたあっぱれというしかないですね。
ささいな出来事からとんでもないところまで思考がトリップしていく様は、まさしく妄想の
小旅行。おいおい、そんなところまで行っちゃうんかい、しをんさんーー!とツッコミたくなる
こと必死。まだこのころは二十代のうら若き(?)乙女・・・な筈なのに、腐女子であるが故か、
思考が完全にオッサン化されてるような・・・^^;でも、盆栽に情熱を傾けるところはすごく
共感出来るんですよねぇ。以前のエッセイでも盆栽に関する記述があったから、この頃から
盆栽に対する愛は健在だったのですね。私もNBK(日本盆栽協会)に入会して盆栽を愛でる会に
参加してみたい・・・(変?)。しをんさんが持っていた盆栽カレンダーが気になって仕方
ありません(笑)。

もちろん、漫画とBL小説に対する愛も相変わらず。あの羽海野チカさんの大人気漫画ハチクロ
を一巻から目をつけていたとは、さすがです。といっても、私は読んでないですけど^^;
しかし、羽海野チカさんが同人誌出身だったとは意外です。そのころから目をつけていたしをんさん
の先見の明には脱帽です。
しをんさんの『恋愛下手』な人間の法則にはドキリとしました。しをんさんによると、恋愛下手
な人間は、

①『めぞん一刻』が好き
②『青春群像』が好き

のどちらかに当てはまるそうな。しをんさんは①は当てはまらないが、②はバッチリ当てはまるとか。
・・・私、①も②も当てはまってますけど!だって、『めぞん一刻』、漫画も全部読んでたし
アニメも大好きだったもん!斉藤由貴の主題歌だって歌えるもん!(なぜキレる?)
青春群像ものは大好物のジャンルだし。
うぐぐ。これで私が恋愛下手ってことが見事に証明されてしまったじゃないか!!
なんか、ものすごーく偏った統計によって導きだされた法則に思えて仕方がなかったけど、
当てはまってるから文句も言えない。うーむ。恐るべし、しをんさん。


しかし、このエッセイの中で何が一番驚いたかって、あの大傑作青春小説『風が強く吹いている』
の原型が、大BL小説だったことですよ・・・っ!!しをんさんの初期の構想のままの作品が世に出され
ていたかと思うと・・・ぶるる。作者が思い止まったのか、編集側から思いとどまらせられたのかは
わかりませんが、素晴らしき英断だったと言わざるを得ないでしょう。
でも、初期構想のBLバージョンの、裏『風が強く吹いている』、ちょっと・・・いやかなり、読んでみたい
かも(笑)。カケルとハイジ(当初の構想では正志ですが)がーーーきゃーー(><)。
いかん、いかん。私にもしをんさんの妄想体質が伝染ってしまったようだ・・・。

この後で出されるエッセイでも度々登場する「あんちゃん」は、古書店でのアルバイト仲間だった
のですね(もしかしてどこかで説明があったのかもしれないけれど、忘れていた)。お互いに
負けず劣らず素晴らしい妄想コンビ(笑)なので、この頃からの友情がその後も続いていると
わかったのは嬉しかったです(同じ人物ですよね?)。

今回も、しをんさんの飽くなき妄想と、漫画とBL小説に対する愛満載の、タイトルそのまんまの
爆笑エッセイでした。
しをんさんのエッセイは絶対人がいる前で読めないんだよなぁ。電車とか絶対無理。ニヤニヤ
しちゃって、間違いなく変人扱いされるのが目に見えてるもん。みなさんも、読む時は場所を
選んだ方がいいですよ。