ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貴志祐介/「鍵のかかった部屋」/角川書店刊

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防犯コンサルタント(本職は泥棒?)・榎本と弁護士・純子のコンビが、4つの超絶密室トリックに
挑む。表題作ほか「佇む男」「歪んだ箱」「密室劇場」を収録。防犯探偵・榎本シリーズ、待望の
最新刊登場!(紹介文抜粋)


『硝子のハンマー』『狐火の家』に続く、防犯コンサルタントの榎本と弁護士の純子が活躍する
シリーズ三作目。今回も、密室トリックばかりを扱った四編が収録されています。トリックの
トンデモなさは前回よりはおとなしめかなぁ。前回はすごいのがありましたからねぇ・・・(
思いだしたくないようなキモチ悪いのが)。最後の『密室劇場』以外は、ほぼ倒叙ものと言って
差し支えない体裁。予め犯人は提示しておいて、あとはいかにして密室が作られたのか、を二人が
突き詰めて行く、というもの。最後の一篇は、前作『狐火の家』に収録されていた『犬のみぞ知る』
に出て来た劇団員たちが再び登場。前作でも、その一遍だけが毛色が違って、ギャグテイストの
強い作品だったのでちょっと面喰ったところがあったのだけど、今回もやっぱり一番色モノ系と
いうか、ギャグ要素の強い作品でした。この劇団自体がギャグの塊みたいだもんなぁ・・・^^;
まぁ、一作ごとにおかしな性格になって行く淳子さんとは波長が合ってるのかもしれません(苦笑)。
前作より更に天然色をパワーアップさせた淳子さんの間違った推理のくだりに毎回笑わせられ
ました(笑)。



以下、各作品の感想。

『佇む男』
少年が見た時は立っていた死体が、発見時に座っていた理由には唖然。法医学的に見るとあり得る
のかもしれませんが・・・^^;こんな手の込んだ殺人方法、考えつくことも、実行に移そうと
思うこともすごいと思うな^^白幕と死体との位置関係とかがいまいちよくわからなかったです。
トリックだけなら面白かったですけどね。

鍵のかかった部屋
これもトリックだけ見ると唖然。犯人が理科の知識があるからこそ、の方法でしょうけれど。でも、
いくら目張りをしても、ここまで○○性の高い密室に出来るものなのかなぁ。×××を使った
目張り自体にも驚きましたが^^;東京●●●に行った時の体験を思い出しました。
一人残された美樹ちゃんは、叔父さんと生きて行くことになるのかな。

『歪んだ箱』
欠陥住宅問題。新築の家を買って、こういう欠陥住宅建てられちゃったらたまらないですよね。
特に、震災の影響で地震に対して敏感になっている近頃では、耐震性って絶対条件だと思います。
でも、だからといって、殺人の動機にするにはちょっと弱い気もしたんですが。まぁ、一生の
買い物でこんな失敗は絶対やらかしたくはないですね。

『密室劇場』
先述したように、いちいち設定がギャグっぽい。この劇団の演劇、もし観てたらイライラするだろう
なぁ。笑えなくて・・・。劇団員たちの芸名もアホ過ぎです^^;ほんとに、劇団員じゃなくて、
吉本かたけし軍団の芸人さんかと思いますよ。ギャグがいちいちすべってる所がちょっと読んでいて
痛かったんですが、密室トリックの真相は面白かったです。かなり盲点をつかれた感じ。ビデオ
早回しすると犯人のしたことがよくわかりそうです。純子がいちいち間違った推理を開帳しては
場をしらけさせるのもちょっとお気の毒でした。彼女、ほんとに一作ごとにお間抜けな性格が
エスカレートしてきているような・・・榎本との会話が漫才コンビみたいにボケとツッコミに
分かれていて、笑えました(苦笑)。



今回も、あくまでも『密室』に拘った四編、どれも大いに楽しませて頂きました。やっぱりこの
シリーズ好きだなー。貴志作品だと、SFやらホラーテイストの作品の方が好きって人が圧倒的に
多いみたいですが、私はやっぱりミステリに拘ったこういう作品が大好きです。