ミステリ読書録

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大門剛明/「ボーダー 負け弁・深町代言」/中公文庫刊

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大門剛明さんの「ボーダー 負け弁・深町代言」。

テレビでも人気の若手弁護士・深町代言は、ある事件をきっかけに東京を去る。流れ着いた伊勢で
所属したのは、志は高いが裁判で勝てない“負け弁”が集まる貧乏法律事務所。刑事事件への情熱
を失った深町だが、ニート強殺事件の被告人の無罪を信じる同僚・実花の窮地に再び立ち上がる
(あらすじ抜粋)。


大門さんの文庫新刊。まぁ~、この方も横溝大賞受賞でデビュー以来、乾ルカさん同様、次々と
精力的に新作を発表されてますね。単行本の方でもすでに新作が出てるんですよね(予約中)。
司法を題材にした手堅い書き手として、なかなか確固たるポストを確立しつつあるのでは
ないでしょうか。ただ、量産しすぎて、一作ごとの完成度が若干低くなっているような気が
しないでもないんですが・・・。ついつい、乱歩賞作家の薬丸岳さんと比較してしまうのですが、
作品の深みとしては、常に薬丸さんの方が一歩上かなぁ、と思ってしまいます。まぁ、純粋に
好みの問題もあるとは思うのですけどね。でも、こういう司法の問題を扱った正統派な社会派
を書かれる方はそれほど多くないので、今後も精力的に書き続けて欲しいと思います。

特に、今回は文庫ということもあってか、今までの作品よりも全体的に軽め。裁判ものでは
あるのですが、小難しい司法用語なんかもほとんど出て来ないので、さらっと読めました。
それだけに、今までの作品よりちょっと読み応えはないかも。でも、シリーズの一作目
としてなら、キャラ紹介的な作品の位置づけとして、これくらいの軽さでちょうど良いのかも。
テレビにも出ていた人気のエリート弁護士が、ある裁判をきっかけに東京を離れ、伊勢の
小さな法律事務所のエース弁護士として再出発するところから始まります。主人公のエリート
弁護士深町のトラウマになった過去の事件に関しては、今回は詳しく書かれていないので、
シリーズ化を想定して、敢えて書かれなかったのかな、と思ったのですが。深町と実花の
関係も、これから一緒に仕事をしていく中で縮まって行ったりするのかなーと思わなくも
なかったり。ただ、深町は作中で『二度と女性を愛することはない』と断言しているから、
実花に対する気持ちが恋愛感情に変わるかどうかは微妙なところではありますが。

実花の担当したニートの大野が犯した事件の真相には、やるせない気持ちになりました。
おそらく、ある人物が関わっているのではないかなーとの予想は当たったのですが、その
内容までは推理出来なかったです。ニートが○○以上を指す言葉だというのは、実は
最近知ったばかりだったので、ピンと来ても良かったのになぁ・・・^^;でも、動機
を知って、犯罪とはいえ、優しい気持ちから出ていることなので、その優しさが仇になって
しまったことが皮肉に思えて仕方なかったです。結局、不況の世の中が一番悪いのかも
しれません・・・。

負け弁なんて言葉は今回始めて知りました。でも、大概の弁護士は一度は負け弁になる気
がしますが・・・。

文庫で230ページちょいしかないので、全体的にちょっと物足りなさはありましたが、
司法を題材にしている割に読みやすく、そこそこ楽しめました(微妙な評価だな^^;)。
連続ドラマの一話完結ものの第一話目って感じかな(苦笑)。
検索してたら、どうやら二作目も出るようですね。図書館入荷するようなら、地味に
追いかけていこうかな、と思います。