ミステリ読書録

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桂望実/「恋愛検定」/祥伝社刊

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桂望実さんの「恋愛検定」。

恋のかけひきには自信満々の恵理子のもとに「恋愛の神様」が現れ、「恋愛検定」に挑戦するよう
命じられるが…。四級からマイスターまで、検定受験者6人の物語。『FeelLove』掲載に
書き下ろしを加えて書籍化(紹介文抜粋)。


桂さん初の恋愛小説。といっても、ちょっぴりファンタジックな面白い設定になっています。
世間的に認められている『恋愛検定』という資格。持っていると、コミュニケーション力や
セルフプレゼンテーション力があると見做され、就職や昇進に有利になると言われており、
取得したいと思っている人は多い。級は四級から一番上のマイスターまでに分かれていて、
マイスター合格者になるとテレビで映され破格の扱いになる。とはいえ、恋愛検定は誰もが
受験できる資格ではありません。『恋愛の神様』に選ばれた人物だけが受験資格を持てるの
です。ある日突然、目星をつけられた受験者の前に『恋愛の神様』なる人物が現れ、与え
られたテスト問題を提示され、その答え如何で受験する級が決定されます。そして、検定期間
が告げられ、恋愛検定がスタートします。検定期間中に神様が合格と見做されれば合格証書が
もらえ、検定期間終了までに合格出来なければ不合格。合格・不合格の基準はすべて神様が
握っている、という訳。ちなみに、受験者の前に神様が現れている時は、周りの時間が止まり、
他の人間は静止したままストップ。恋愛検定のことを他人に話そうとしても、時間はストップ。
検定期間中は、誰にも恋愛検定について相談出来ないようになっているという仕組み。

本書には、四級からマイスターまで、各級を受験する6人の男女の恋愛模様が描かれます。
あまり共感できるタイプはいなかったのですが(^^;)、それぞれの恋愛事情は面白く読み
ました。いるいる、こういう人~!みたいな感じでしょうか(笑)。四級受験者は、自分は
恋愛上手だと思い込んでいる三十代のOL、三級受験者は、お見合いでも自分の理想ばかり
追い求めて妥協せず、いつまでも独身のままの三十六歳実家暮らしの男、二級受験者は、
片想いのショップ店員との進展を望むが友達としか見てもらえないバスグッズショップの店長、
準一級受験者は、理系でプライドの高いメーカー勤めの男、一級受験者は、面倒くさがりで、
自分から何かの行動を起こすのが苦手な二十六歳のぽっちゃり型OL、そしてマイスター受験者が、
過去の恋愛を引きずって恋に臆病になっている三十四歳事務員。それぞれの試験結果は合格あり、
不合格あり。一話目の四級のOLの結果はちょっと意外だったんですが。

基本的に、恋愛小説は苦手な方なのですが、ちょっと変化球の設定なので、どのお話も楽しく読め
ました。それぞれの恋愛模様も面白かったのですが、それと同時に、恋愛の神様と受験者との
やり取りも面白かったです。恋愛の神様と言っても、全く神様らしからぬ性格で、愚痴っぽいし
お酒大好きだし、妙に人間臭いところが可笑しかったです。恋愛の神様というポスト自体にも
不満たらたらですし(苦笑)。変に人間臭い神様というところは、読んでいて『夢をかなえるゾウ』
ガネーシャを思い出したのですけれど。ネット検索してたら、伊坂さんの『死神の精度』の千葉
を思い出したという方の感想も見かけました。千葉よりはもっとずっと人間くさい感じですけどね。

恋愛検定合格で一番大事なことは、両想いになることではなく、自分から行動すること、のよう
です。受身で相手からのアプローチを待っていても、相手からアプローチされた時に消極的で
いてもいけない。成功しようがしまいが、積極的に動いて頑張ることが合格の秘訣のようです。
これは、簡単なようでいて、一番難しいですよねぇ・・・。最近、テレビとかで良く、世間では
恋愛出来ない若者が増えている、みたいな話題を目にすることがあるけど、草食系男子なんていう
恋愛に消極的な男性がうけているのだから、推して知るべしって感じですね。

まぁ、私が受験するとしたら、多分四級合格も難しいでしょうね・・・^^;本書の主人公たちの
中で、一番自分に近いかな、と思ったのは、一級受験をした瑠衣かな。面倒くさがりな性格が
災いしてか、全部が受身で、相手からアプローチされても、なんとなくタイミングを逃して
上手くいかないっていう。うう、耳に痛い。
一番苦手なタイプが四級受験の恵理子。男性主人公の二人も、どっちも苦手なタイプで、こういう
男は絶対付き合いたくないなぁと思いました(苦笑)。準一級受験の大野のデートは有り得な
かったですね・・・そりゃ、相手の女性も帰りたくなるよ、と思いました(神様にいちいち指摘
されてましたが)。最後に送ったメールで好感度は大分上がりましたけど。でも、こういう理系の
男と付き合うのって疲れそうな気も・・・。
お話として一番好きだったのは、二級受験の紗代の話。明るくて人から頼りにされる性格が
仇になって、好きな男性に友達としてしか見られない紗代が、勇気を出して告白するところが
健気で可愛かったです。まぁ、恋愛ものの王道な展開ではありますが、女の子が好きな人の
為に頑張る姿はやっぱり可愛らしく思えますね。


恋愛ってほんと単純なようでいて難しいし、奥が深いですね。恋愛下手な主人公が多いので、
恋愛ものが苦手なタイプの人(私もそう)でも十分面白く読めるんじゃないかな。
面白かったです。


追記:昨日検索していたら、本書の刊行に当たって実際に恋愛検定が受けられるサイトの存在を
知りました→コチラ
・・・やってみたら、準一級検定にチャレンジで、結果40点で不合格・・・。
なんだかよくわかりませんが、ねぎとろ巻きタイプだそうです(苦笑)。
興味のある方、是非やってみて下さい(笑)。