ミステリ読書録

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二階堂黎人/「東尋坊マジック」/実業之日本社刊

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二階堂黎人さんの「東尋坊マジック」。

1996年、旅行代理店勤務の名探偵・水乃サトルは、部下の由加理と東尋坊で銃殺事件に遭遇。
被害者は海に転落、犯人は姿をくらます。饒舌な犯罪知識が地元警察に怪しまれ、サトルは連行
されてしまう。サトルが照会を求めたのは警視庁の馬田刑事。馬田は釈放されたサトルに猟奇事件
への助力を求める。それは76年から日本海各地で発生、鬘や化粧を施した上で女性を惨殺する
という手口だった。東尋坊事件の数日前に、第四の犠牲者が発見されたばかりだったのだ。サトル
たちは第一の事件現場から検証を開始、過去と現在にまたがる事件解決に乗り出すが、猟奇的な
犯行にはさらなる意図が隠されていた―。本格推理とトラベル・ミステリーの融合(紹介文抜粋)。


社会人サトルシリーズ最新刊。今回は、福井県北部にある有名な景勝地東尋坊で起きた殺人
現場にサトルと由加理が偶然居合わせてしまったことから物語は始まります。殺人事件の重要
参考人となったサトルと由加理でしたが、例のごとくにサトルが警察官の前で奇矯な振る舞いを
するものだから、要らぬ疑いをかけられ、警察にしょっぴかれる羽目になってしまいます。
毎度ながら、こんな傍迷惑な男に付き合わされて災難に遭う由加理さんがちょっと気の毒に
なりつつ、そんな男に惚れてるものだから、結局最後まで付き合ってしまう彼女って、ほんと
もの好きだなぁ、と思ってしまうのですが。
警察に勾留されたサトルは、自分の身分を証明してもらう為、警視庁の馬田刑事に連絡を取り、
身柄を引き取りに来てもらうことにしたのですが、馬田刑事は、交換条件として彼が現在手がけて
いる連続猟奇殺人事件の犯人逮捕に協力することを求めます。一も二もなく承知したサトルは、
両方の殺人事件解明に向けて日本列島を縦断する羽目になる、というのが大筋。全く無関係に
起きたと思われる二つの殺人事件の結びつきは、正直、さすがにご都合主義的というか、強引
過ぎるな、と思ったし、シリアルキラー『冥妖星』の犯人の正体や真相はちょっとあっさり
明かされすぎて拍子抜けなところもありました。ただ、東尋坊の殺人事件のアリバイトリック
に関しては、なかなか新鮮味があって面白かったです。とはいえ、いくら二重のアリバイトリックを
施していたからといって、犯人の杜撰すぎる犯行の物的証拠処理には首を傾げるところもあったの
ですが・・・。『冥妖星』事件の方も、真犯人に関して、いくつか腑に落ちない部分がありましたし。
まぁ、あまり細かいところを突っ込んでも仕方ないのかなって気もしますが。それにしても、
『冥妖星』の残虐非道な犯行方法にはほんとに読んでて胸がムカムカしました。

ところで、『冥妖星』の犯行には閏年閏日(二月二十九日)が重要なポイントとして出て来る
のですが、実は、私の姉が閏年の二月二十九日生まれなんですよね。だから、小さい頃はよく、
周りの人に『うちのお姉ちゃん、四年に一度しか誕生日が来ないから私より年下なんだよ』って
話をしてました(笑)。確か、姉の同級生にも一人いたんじゃなかったかな。でも、親が四年に
一度しか誕生日が来ないのは可哀想だって思ったらしく、届けは三月一日で出したんですけどね(笑)。


しかし、『軽井沢マジック』からこの社会人サトルシリーズは大好きで、ずっとリアルタイムで
追いかけて来たのですが、今回のラスト一ページが全作品の中で一番衝撃を受けました。いやはや、
ほんとーにビックリした。まさか、まさか、こういう展開が待ち受けているとは・・・(絶句)。
やっぱり、今回の事件でサトルもある点に関して責任を感じたんでしょうかね。一歩間違えば
自分もろとも死んでた訳ですから。きっと、それがきっかけになったことは間違いないでしょうね。
思わぬ急展開に目が点になりましたが、長年追いかけて来たこともあり、ちょっと感無量って
感じではあります。サトルがそういう決断を下すとは思わなかったですけど。っていうか、そういう
風に見てたんですね。それすらも描写として出て来なかったところに、あのラストだったので、
青天の霹靂とはまさにこのことだな、と思いました^^;はー、驚いた。


シリーズファンには、ラストで衝撃のサプライズもありますので、ミステリとしても、シリーズ
としても、楽しめる一作になっているのではないでしょうか。