ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森見登美彦「郵便少年」/有川浩「ゆず、香る」/バンダイ ほっと文庫刊

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森見登美彦さんの「郵便少年」。

ぼくは、日本で一番ノートを書く小学生である。そんなぼくは、小学校三年生のの七月、日曜日の
朝の探検で「郵便」を発見した。道路脇の赤いポストから、郵便局のトラックが郵便物を回収する
ところを目撃したのだ。郵便局の人のお仕事はとてもおもしろかった。そこで、ぼくはすてきな
「郵便」というものを研究することにしたのだ――。

有川浩さんの「ゆず、香る」
彼と彼女は大学時代の友人同士だ。彼女は彼に密かな恋心を抱いていたが、あることがきっかけで、
想いを打ち明けられなくなってしまった。そんな訳で、二人は大学を卒業して就職した後もずっと、
仲のいい飲み友達だ。ある日、いつものように二人が飲んでいる席で、彼女は彼女の父の田舎は
ゆずの産地であることを話した。一方、玩具メーカーに勤める彼は、新しいプロジェクトに
関わっていると話す。それは些細な日常の出来事だった。けれども――。


どこを探してもあらすじが載っているHPが探せなかった為、久々に自分であらすじを考えました^^;
バンダイから出た、入浴剤と小説のコラボレーション企画で発売されたシリーズ。薬局なんかで
売りだされたようなのですが、私は売ってるのを見かけたことがなく、噂ではネットでも売り切れ
状態だと聞いていて入手を諦めていたのですが、ブログのお友達のKORさんから貸して頂けるとの
有り難いお申し出を受けまして、送って頂き、両方同時に読むことが出来ました。ただ、現在は
ネットで普通に入手出来るようですね^^;お手数をおかけしてしまい、申し訳なかったです^^;
でも、読めて良かった~。どちらも30ページ程の掌編ではありますが、いずれ劣らぬ良作。
読んだ後、心がほっと温まりました。

ただ、入浴剤と小説のセット販売ということで、私はてっきり、本自体がお風呂で読めるような
ビニール仕様にでもなってるのかと思っていたのですが、普通の紙でちょっと拍子抜けしたところは
ありました。これは、自分で買ってたとしても、入浴剤入れてお風呂で読むってのは勿体なくて
出来なかっただろうなぁ^^;紙がへろへろになってしまうじゃないか^^;
でも、企画としては面白いですね。有川さん、森見さん以外にも、赤川次郎さんやあさのあつこ
さんの作品もあるみたいです。今後、第二弾とかもあるのかな。バンダイも面白いこと考えるなぁ
と思ってしまいました(笑)。


以下それぞれの感想。

森見登美彦『郵便少年』
『ペンギンハイウェイ』のアオヤマ少年が再び登場。といっても、時系列ではこちらが先で、
彼が小学三年生の時のお話(つまり、『ペンギン~』よりも一年前ですね)。郵便を配達する
仕事に興味を持ったアオヤマ少年、歯医者で仲良くなった小粋なおばあさん『ヒサコさん』から
郵便カバンを譲り受け、郵便のお仕事を始めます。けれども、同級生のハセガワ君から預かった
宇宙への手紙の配達方法がわからず、途方に暮れてしまいます。悩めるアオヤマ少年が取った
方法とは・・・という、とっても可愛らしいお話。郵便少年として頑張るアオヤマ少年の姿に
とっても微笑ましい気持ちになりました。ヒサコさんとの関係も好きでした。歯医者というのは、
アオヤマ少年にとって、出会いと別れの場なのでしょうね。お姉さんとの出会いの前に、こんな風
に素敵な出会いがあって、そして、こんな風に辛く悲しいお別れを経験していたなんて。切なくて、
胸がきゅっと締め付けられるような気持ちになりました。でも、ハセガワ君との友情秘話には
嬉しい気持ちになりましたけれど。ちょっぴり切なくて、でも読み終えた後ほっと心が温まる
素敵な作品でした。

有川浩『ゆず、香る』
これはもう、有川さんらしいムフフ~な一編でしたね。多分、こういう男女関係って多いと思う
んですよね。タイミングを逃して、お互いに憎からず想っているのに、その関係を崩したくなくて
言い出せなくて、友達のままっていう。少女漫画でも王道の設定ではあるんですが、そこに
ゆずとか玩具メーカーのプロジェクトなんかの小道具を絶妙に絡ませるところが有川さんの巧いところ。
しっかり、販売元であるバンダイの宣伝もしているし、企画の趣旨を弁えて入浴剤も小道具として
登場させるところがニクイですねぇ。
そして、馬路村の名前が登場したところにちょっと感動。『県庁おもてなし課』を読まれた方なら
わかって頂ける筈。
ラストの展開にはニヤニヤしちゃいました。これがあるから、有川さんなんだよね。うふふ。


送って頂いた実物。見た瞬間、薄くてビックリしました^^;
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どちらも短いですが、とても素敵な作品でした。読めて良かった~。
KORさん、この度は本当にありがとうございました!(記事が遅くなってすみません^^;)。