ミステリ読書録

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大門剛明/「共同正犯」/角川書店刊

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大門剛明さんの「共同正犯」。

播磨灘近く、製鎖業者の多い一帯で見つかった一つの死体。死体は不動産屋の長岡。連帯保証債務
三億二千万を背負った社長・翔子の犯行と直観した鳴川は、死体を移動させてしまうが--
(あらすじ抜粋)。


一作ごとになかなか読み応えのある社会派ミステリーを書かれて来た大門さんですが、今回のは
ちょーっと、頂けなかったですね。コンスタントに作品を発表される執筆意欲は素晴らしいの
ですが、量産する余り、一作ごとの完成度が落ちるのは本末転倒だと思うんですが。確かに、
本文中に感じた違和感の正体が最後の最後で明らかになるところはあっと言わされたところも
あったのですが、そこまでに行きつくまでの過程の部分が良くなかったせいで、全体の印象も
払拭されないまま終わってしまった感じでした。特に、みんなが必死になって守ろうとする
ヒロインの翔子のキャラが弱いせいで、彼女がそれほどに周りから愛される説得力が感じられ
なかったのが痛かったですね。もっと、彼女の魅力が感じられるようなシーンがあったら
良かったと思うのですが・・・。本人そっちのけで、周りが勝手に彼女の為に動こうとする
ものだから、何か、どの人物に対しても自分勝手でひとりよがりな印象しか受けなかったです。
あと、『人情』『絆』という言葉を強調しすぎて、かえって逆効果な印象になってしまって
いる感じがしました。

それと、文章自体も、一人称と三人称が一緒に出て来たりして、読んでいると引っかかるところが
結構多かったです。今までの作品ではあまり感じたことがなかったので、今回は推敲する時間が
なかったのかなぁ、とか、穿った見方をしてしまったのですが。全体的に書き急いだ感じというか。
説明がおかしな部分なんかもあって、何度か同じシーンを読みなおしたりすることもありました。

確かに、最後で全部のからくりがわかるところには、唸らされたところもありました。自分が
ずっと違和感を覚えていたところが、ちゃんと伏線になっていたりもしますし。ただ、その
違和感の書き方が、どうも上手くないというか。もっと、さりげなく書けばいいのになぁ、と
思ったり。この部分をこの人物が無視しているのは、明らかに不自然だろう、みたいなところも
あって。どうも、トリックの為の伏線っていうのが見え見えなところが、勿体なかったです
(まぁ、推理は出来なかったんですけども^^;)。
なんか、自分の感想も漠然としてて、何が言いたいのかよくわからない記事になってますが^^;
とにかく、全体的に何かしっくり来ないというか、いろんな点で自分とは『合わない』作品でした。
残念。
主人公の鳴川のキャラもいまいち最後まで好きになれなかったなぁ。翔子の為に、なんて言って
やってることが、ほとんど自分勝手でひとりよがりな行動にしか思えず、イライラしました。
だから、最後の展開には目が点。えっ、翔子って、そうだったの?とビックリしました。
そういう素振りなんか全くなかったと思うんですが・・・作者は温かい読後感を演出しようと
したのかもしれませんが、私にはとってつけたような印象にしか思えなかったです。

鳴川が作るどろ焼きは、ちょっと食べてみたくなりましたけど。お好み焼きみたいなものを
想像してたけど、多分実際は全然違うんでしょうねぇ。初めて聞きました。


このタイトルもちょっと地味過ぎて、もうちょっと何とかならなかったのかなぁって気も
するんですよね・・・。司法関係に詳しいひとはいいかもしれないけど、普通の人はこの
タイトル見て『読みたい!』とは思わないんじゃないかなぁ・・・。


いやー、久しぶりに思いっきり黒べる全開の記事になってしまいました^^;すみません・・・。
でも、次の作品は思いっきり桃べる記事になる予定ですので!