ミステリ読書録

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辻村深月/「水底フェスタ」/文藝春秋刊

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辻村深月さんの「水底フェスタ」。

村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、
村長選挙を巡る不正を暴き“村を売る”ため協力する。だが、由貴美が本当に欲しいものは別に
あった―。辻村深月が描く一生に一度の恋(あらすじ抜粋)。


期待していた辻村さんの最新作、だったんですが・・・むむむ。今まで読んだ辻村作品の中で
ワーストかも。中盤辺りまで、なんだか全くノレなかったんです。いつものリーダビリティが
感じられず、出て来る登場人物にもことごとく嫌悪しか感じなかったりして、なかなか読み
進まなかった。そもそも、閉塞的な村で行われる大規模なロックフェス、という舞台設定自体、
いまいち面白味を感じなかったんですよね。いつも、辻村作品といえば、痛い主人公たちの独白に
むず痒い気持ちになりつつも、ぐいぐい読まされてしまうところがあったので、読むのが苦痛とか
そういうのは感じたことがなかったのですが、今回はそういうリーダビリティが感じられず、
ちょっとキツかったです。中盤以降はやっと少し読むスピードが増して一気に読めたのですが。





以下、内容が結末に触れています。未読の方はご注意下さい。



















恋愛小説と聞いていたので、辻村さんならきっと最後で大団円、素敵な気持ちで読み終えられる
のだろう、と期待が大きかったのもいけなかった。いつも、途中イライラムカムカさせられても、
最後であっと言わせる展開が待ち受けていて、最後は気持ち良く読み終えさせてくれていたから、
きっと今回もそうだろう、と半ば希望的観測とはいえ、信じて読み進めていました。それなのに、
あのラスト・・・かなりガッカリ、でした。結局二人の恋愛って何だったんだろうって、読み
終えて、虚しさが込み上げてきました。せめて、由貴美が助かってくれていたら、もう少し
作品の印象も変わったかもしれないのに・・・。こんな、ありきたりな結末にしなくても。
なんだか、安っぽい恋愛劇を描いた昼ドラを延々と見させられた感じで、ゲンナリしました。
結末はともかく、せめてもうちょっとミステリー的な面白さがあったらまだましだったのになぁ。
由貴美の母親の自殺が本当は他殺で・・・とかね。広海の母親が本当に関わっていたのかも
曖昧なままだし。
由貴美の復讐だって、大して行動に移せずに村人たちによって封じ込められちゃったし。
なんか、どうも、一つ一つの要素がバラバラな印象なんですよね。村で開催されるロックフェス
の扱いも中途半端だったし。タイトルに入れるくらいなんだから、もう少し効果的な使い方
しても良かったのでは・・・。

それぞれのキャラ造形にも違和感ばかり覚えました。広海に関しては、17歳の男子高校生が
あんなに父親に肩入れするっていうのも引っかかったし、あんな事件を起こした達哉を友人
として扱う心情も理解できないし。同級生たちを上から目線で見ているところなんかは、
辻村作品のキャラらしいな、とは思いましたが。母親に対する辛辣さにもイラっとしましたね。
母親の広海への溺愛っぷりにも引きましたが。まぁ、広海にしても母親にしても、好感は一切持て
なかったですね。
結局、本当のところ、由貴美と広海の関係って何なんですかね。父親が嘘ついてたってこと
なのかな。









うーん、なんだか、終始鬱屈した重苦しい空気が漂っているので、読んでいて暗い気持ちに
なってしまいました。
いつもの辻村さんらしさが全く感じられず、ガッカリしました。なんとなくですが、直木賞
狙いの作品なのかなって感じがして仕方ない。道尾さんがミステリー要素を排除した直木賞
向きの『月と蟹』で受賞したから、その流れでって思ってたりするのかなって思ってしまいました。
穿ちすぎだとは思うけれど、道尾さんと辻村さん、同年代で友達だしねぇ。ミッチーのアドバイス
があったりして。
書きたいものを、書いたのかなって疑問を感じてしまいました(完全に余計なお世話だけど)。
文藝春秋から出てるっていうのも、なんかね。いかにも、文春が好きそうなストーリーって感じ
するしね。
良く言えば新境地開拓ってことなんでしょうけど。ファンとしては、こういう作風に流れて
行くようなら、ちょっとこの先、読むのを躊躇してしまいますね。

辛口ですみません^^;残念ながら、私には合わない作品でした。次に期待しよう。